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2025/08/11

財貿易を上回るデジタル関連サービス ~77回目の通商白書

コンテンツ産業にグローバル戦略を

 第77回目の通商白書がまとまった。2024年の世界経済は3・3%の底堅い成長であったが、①米国が世界経済の経常収支(対GDP比)赤字の大半を占めている、②中国のデフレ輸出拡大による、世界経済の不安定化、③デジタル化によるサービス越境取引―の3点にスポットを当て、わが国の貿易投資構造の変容を促し、今後の通商戦略は、「信頼される経済パートナー」としての役割を目指すべき、としている。

 

世界シェアを落とし続ける日本の財輸出

 今回の白書は3部に分かれ、第1章では米国の経常収支と財政収支の「双子の赤字」問題、中国のデフレ輸出と輸入の停滞が世界経済に与えている不安定要因の2つがある、としている。

 また、デジタル化の進展は、ものづくりとサービスの融合、デジタル関連サービスの越境取引を促進し、貿易投資のパターンを変えている。過去20年のサービス貿易の増加率は財貿易を上回り、牽引しているのがデジタル関連サービスである。

 わが国の対外貿易投資構造が変容していきている。貿易収支は原燃料価格や為替の影響を受けやすく、財輸出は中長期に世界シェアを漸減させている。近年は輸出数量やドル建輸出額も減少している。

 また、主要品目に大きな変化がなく、ほぼ全てで世界シェアが減少して続けている。イノベーションを通じた高付加価値化や、新たな輸出産品・輸出先を開拓し、公益条件の改善が必要、と指摘している。

 

拡大するものとサービスの越境取引

 一方、モノとサービスの越境取引は拡大している。財・サービスの輸出全体(付加価値ベース)で見ると、卸小売、専門業務サービス、情報通信との国内サービス業由来(46・4%)の付加価値が国内製造業由来(38・2%)よりも大きくなっている(2020年)。

 ものづくりとサービスの融合が進む中、財に投入されるソフトウエア等のサービス付加価値を強化することは、財・サービス両方の輸出に資する。製造業の本邦親会社が海外に設立した非製造業現地法人が海外の売上の約3割を占めて来ており、製造業の海外展開においてもサービス付加価値が重要になってきている。

 なお、デジタル赤字は米国だけでなく、大手デジタル関連企業が立地するシンガポールでも増加傾向にある。

 

拡大するコンテンツ産業の海外展開

 最近の特徴は、コンテンツ産業の海外展開の機会がコロナ禍後に一層拡大しており、グローバル戦略の必要性が高まっている点だ。コンテンツビジネスは財・サービス・ライセンス・直接投資の複合であり、海外プラットフォーマーとの取引など多様な越境取引が行われている。

 わが国にはコンテンツ制作の強みがある一方、現地での受けるコンテンツの見極めや価値を管理した上で、価値を最大化する海外展開が重要であると指摘されている。

 現地市場へのローカライズ、カルチャライズ、最新の海外情報の提供、現地規制当局への働きかけ、模倣品・海賊版対策、小規模事業者への支援等、戦略的な対応が求められている。

 

グローバルサウス諸国に信頼されるパートナーに

 最後に今後のわが国の通商戦略の方向性として、ASEAN諸国と築いてきたように、これからグローバルサウス諸国との共創に向け、「信頼できる経済パートナー」としての役割を強調していくべき、としている。

 そして、海外市場の開拓と付加価値の最大化をめざし、サプライチェーンの強靭化に向けた政策協調が重要である、と結んでいる。

 

(詳細は「経済産業新報」本紙デジタル版をご覧ください。)