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2020/11/15

日本におけるムスリムの教育事情

株式会社東京メディカルコンサルティング 代表取締役 尊田 京子

ムスリムの子供たちに配慮した学校現場

ハラル認証を受けた給食の提供が、東京都北区の保育園でこの10月より始まった。イスラム教徒の園児は年々増加傾向にあり、保護者や子どもたちに安心して給食を食べてもらうための試みである。
この新型コロナウイスルの流行下にあっても、現在も多くのムスリムが日本に居住しており、首都圏ではヒジャブを巻き頭髪を隠した女性たちを街中で見かけることも珍しくない。子育て世代の日本在住ムスリム世帯も多い。子どもたちは、どのような環境下で教育を受けているのかを見てみよう。イスラム教のインターナショナルスクールは、東京を中心に各地でも徐々に増加している。東京都渋谷区の友愛インターナショナルイスラミックスクールは、子供たちがムスリムとして、イスラームの生活を可能な限り実施できるようにするイスラム環境を重視し、授業にアラビア語を取り入れている学校で、幼稚部、初等部、中・高等部があり、土曜日にはアフタースクールも行っている。

学校のカリキュラムには日本語や英語、算数、社会といった一般的な科目の他、イスラム教の経典であるコーランを学ぶ授業やアラビア語といった様々な授業があり、朝はコーランを暗唱する時間も設けられる。
この学校の他にも、英語での授業を行い日本語は第二外国語とするイスラムインターナショナルスクールもある。日本で育ちながらも、イスラム教について深く学び、宗教を重んじた学校生活を送れることは、ムスリムの保護者や子供たちにとって日本で暮らす上での大きな支えとなっている。
インターナショナルスクールに限らず、日本国内の公立学校でもイスラム教徒に対応する試みがみられる。NHKによると、群馬県伊勢崎市の小学校では、ムスリム児童の急増を受け、保護者との対話を重ねている。
偶像崇拝を禁じられているため、図工の時間には自画像の代わりに自分の手を描いたり、集団登下校を行い安全に配慮することで金曜日の集団礼拝に通うことができる等の配慮を行っている。このような様々な理解・工夫により、近隣にインターナショナルスクールがない中でも、宗教配慮を得た学校生活を送ることが可能となる例だろう。
日本に居住するムスリム児童には、先述の学校給食などのほか、水泳などの体育を男女混合で行われることなど様々な課題が挙がる。このような点に学校側が配慮しきれない場合、保護者や家族にとっては大きな苦痛となってしまう。
多文化共生があらゆる分野で叫ばれ、仏教やキリスト教等の宗教を掲げる学校が数多くある中、学校教育や子供たちが育つ場でのハラル対応は今後ニーズが高まると予想される。ムスリムの保護者や子供たちが安心して宗教に則った生活を送ることができるよう、教育現場でのムスリム対応にも注目してみてはどうか。

 

<そんだ・きょうこ>外資系企業の医薬品・医療機器会社を経て現職。企業等の海外展開支援を医療・介護・障害者福祉・防災(リスクマネジメント)分野で行う。イスラム諸国約8割での業務経験を持つ。最新セミナーの確認はこちらから。