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経済産業省資源エネルギー庁資源エネルギー政策統括調整官 吉野恭司氏

経済産業省資源エネルギー庁資源エネルギー政策統括調整官 吉野恭司氏

エネルギー白書2016のポイント

経済産業省資源エネルギー庁資源エネルギー政策統括調整官
吉野 恭司氏に聞く

福島原発事故から5年、ようやく日本のエネルギー事情は原油安も手伝って「なぎ」の状態が続いている。しかし、国際的に見ればエネルギー需要は右肩上がりであり、いずれまた「需給逼迫」が予測されている。その中で、読み易くまとめられた白書のポイントを聞いた。

今回のメインは、第1部第1章の「原油安局面における、将来を見据えたエネルギー安全保障のあり方」にある。ちょうど、5月にエネルギー大臣会合、26日からは伊勢志摩サミットでもテーマに取り上げられた。
第2に、第2章で福島原発事故への対応とその反省を踏まえた原子力政策のあり方、第3にはパリ協定を踏まえたエネルギー政策の変革、となっている。
実際には、資源、原子力、再エネ・省エネ分野を踏まえたエネルギーミックスの具体的取り組みの実情、背景、内容、考え方などを示すことが今回の白書の主旨となっている。
今回、原油安局面にあり、過去も同じ局面があった。今回の原油安を分析すると、各国が増産をし、供給が伸びているのが基本的要因ではないか。細かく見ると、需要が極端に減っているわけではない。
足下は、約200万バレル/日の供給過剰だが、中期的には新興国の需要増、投資減退による供給不足が発生し、長期的にも需要は伸び続け、2018年に原油需要が供給を上回るとIEAは予測している。EIAも長期的には原油価格は上昇すると予測し、2040年には130ドル/バレルにまで上昇するとしている。
現状では、原油価格が100ドル台から一気に40ドルにまで下がったため、世界のエネルギー開発と投資は2割減(15兆円)となり、将来の需給逼迫要因が顕在化している。日本は資源の大半を海外に依存しているので、資源確保が必要なのでこの際、上流開発への投資促進を促す必要がある。
2つめは、価格変動リスクへの対応が重要である。特に世界最大のLNG消費国であるわが国は、油価変動リスクへの対応が必要である。
3つめは、新興国・産油国には原油依存の低減を促すため、わが国の世界最高水準の省エネ技術や制度の輸出が必要となってきている。
ポイントとなるのは、上流開発投資を促進していくには、INPEX(国際石油開発帝石)の投資規模では国際メジャーに比べかんり小さく、技術・人材面でも見劣りしており、さらなる強化が必要であるとしている。
LNGに関しては、福島原発以降、代替エネルギーとして急速に伸び、大幅に輸入量を増やしてきた。しかし価格的には、原油連動価格のため高値買いを誣いられてきたので、是正が必要である。
具体的には、LNG需要は2020年までにアジアが45%増加する見通しなので、仕向け地条項の緩和や、LNG需給が反映された価格指標の確立などのLNG戦略がG7エネルギー大臣会合で示された。
国内に関してはLNG取引が円滑化することが価格指標の確立につながるため、昨年改正したガス事業法では、LNG基地の第3者利用や国内パイプラインの整備が進むように課題を示した。国際価格指標を作る時に、国内が取引をしていないのでは整合性が取れないので、今後の取組みを促しているところだ。
第2章は福島原発への対応とその教訓を踏まえた原子力政策のあり方をまとめている。安全確保を最優先に廃炉・汚染水対策における中長期のロードマップを改訂、原子力災害からの福島復興加速に向けた取り組みを紹介している。
新たな産業集積を作る「イノベーション・コースト構想」の場所や建設計画も決まってきた。また福島を再生エネルギーの先駆けとすべく「福島新エネ社会モデル構想」という仕掛けを今夏までにまとめる予定だ。
事故の教訓を踏まえ、原子力政策への社会的信頼をさらに高めていくため、①依存度の低減、②安全・災害対策、③使用済燃料などへの総合的対応を進めていく。具体的には、規制が強化された安全対策、格納容器が破損しても100テラ未満の放射性物質の放出を求めるシビルアクシデント対策、自治体任せから大幅に改定した防災基本計画に基づく原子力防災対策などの取り組みを解説している。
第3章は気候変動問題とエネルギー政策の変革の必要性に言及した。全ての主要国が参加したCO2排出量削減に対するパリ協定が合意、わが国は中でも2013年比26%減とするや野心的目標を掲げた。
そのためには、経済成長との両立が不可欠であり、今後もエネルギー原単位を35%改善する省エネ、再エネ比率を今の2倍に、さらに新しいエネルギーシステムを導入していく「エネルギー革新戦略」を策定した。
しかしながら、福島以降、日本は火力発電への依存度を高め、CO2排出係数が上昇してしまった。これを2030年度目標0・37kg-CO2\kwhにしていくため、電力業界の自主的取り組みと省エネ法などによる制度整備を行っている。
まず、発電段階では新設の火力発電所はエネルギーミックスを行い発電効率を44・3%に、また小売段階では非化石電源比率を44%とするなど、国と一体となって取り組むことによりGDP600兆円実現とCO2削減の両立に取り組んでいく。
あと、白書ではFIT法の改正の主旨、電力小売自由化についてのコラムも設け、非常に読み易い白書となったと言われている。
最後に、熊本地震での災害対応ではこれまでの経験を踏まえ、「災害時石油供給連携計画」や「中核SS」、ガスの「復旧応援隊」などかなりの取り組みがスムーズに活動できた実例を紹介できた。

今後の原油価格見通し

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過去の原油価格下落曲面と足下の状況

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2.原油価格変動リスクへの対応~震災後、LNG輸入が急増し貿易収支は悪化~

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環境制約と成長の両立を実現する「エネルギー革新戦略」

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原油価格変動リスクへの対応

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CO2削減に向けた電力分野の新たな仕組み

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原油安局面におけるエネルギー安全保障

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東京電力福島第一原子力発電所事故への対応

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