政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


経産省製造産業局 前ものづくり政策審議室長 正田聡 氏に聞く

経産省製造産業局 前ものづくり政策審議室長 正田聡 氏に聞く

第16回目となるものづくり白書がまとまった。今年はIoT社会の社会における製造業の方向性がポイントとなっている。そのあたりを正田氏に解説してもらった。

今回のものつくり白書には3つの柱がある。1つめは製造業の現状、2つめが国内拠点の強靭化に向けた投資の拡大について、3つめがIoT社会の進展の中で、どう経営革新を進めるのか、この3点で白書を構成している。
1つめは、平成15年で見ると経済情勢全般は中国の減速はあるものの、引き続き回復軌道にあり、従業員への利益還元は進んできている。原油安のため、経常収支も改善してきている。
今回のポイントは、日本の企業がIoTをどのように活用しているか?設計開発から製造販売し、運用・保守という製造プロセスの中で、IoTをどこで活用しているかを調べた。その結果、日本企業は、運用・保守の分野でIoTを活用していないことがわかった。
販売した製品にセンサーを付けて、予知保全やユーザー向けのソリューションなどの提供が遅れていた。米国のGEはそれら予知保全で収益を上げているのとは対照的だ。
次に、IoTへの対応度を調べた。積極的にIoTを活用している企業ほど、企業規模に関わらず、経営の意思決定のスピードが速く、製品開発のリードタイムが短いことがわかった。
2つめの柱の投資の拡大について、国内の生産拠点としての「6重苦」の解消に向けた取り組みは着実に進展してきている。海外投資比率は横ばいで推移しており、海外投資だけでなく、国内投資も進んでいる。直近1年では12%の企業が生産の国内回帰を実施していると答えている。
中小企業の国内設備投資は伸びてきており、例えば金型業界は立地や省エネ補助金の恩恵を受け、増産投資をしてきている。国内では多品種少量への対応、短納期などのメリットを上げている。
国内の投資分野について、再生医療と航空機の2つを例示した。規制緩和により再生医療への投資が進み、幅広い周辺産業から新規参入企業が増えている。世界的に需要が広がっている航空機産業では全国のクラスター活動が広がり、産業活性化につながってきている。
しかし、国内は課題も抱えており、これを克服する投資も必要であり2つポイントを載せた。1つは、労働力供給の制約がある。人手不足DIを見てみると、2016年ではあらゆる雇用形態、職種で人手不足が広がっている。とくに専門職、技能工では人手不足が深刻だ。そこで、例えば南部鉄器のホーロー加工にロボットを導入し、省人化した例を掲載しているが、サプライチェーンに向けた投資が必要となっている。
3つめの柱、今回のメインである経営革新をどう進めていくか?はっきり書かせて頂いた。良いものを単体で作り、売れた時代は終わり、アフターサービスやソリューションなど付加価値がつかないと稼げない時代になった。
今回は「ものづくりプラス企業」というロゴマークを作り、付加価値の重要性を訴えていく予定だ。そして、今後3年間でどんな投資を行うかという調査では、やはり日本企業が重視しているのは技術投資分野である。
一方、グローバル企業は日本企業が余り重視していない、広告・マーケティングやビジネスモデル変革といった分野に重点投資を行っている。日本企業の今後強化を図る経営変革分野を調べると①新規事業分野の開拓、②異業種との業務連携、③グローバル化への対応、③オープンイノベーションの推進、④ベンチャー企業との連携―をテーマとしているのがわかる。
次に、個別の傾向を見てみる。1つは短縮傾向にある製品ライフサイクルがある。顧客や市場ニーズが急激に変化しており、技術革新スピードも上がっている。この中で、ブランド戦略や差異戦略、知財権利の保護強化に取り組んでいる企業は営業利益率が高い。
2つめは、自らの強みを把握し、活かしているGNT(グローバルニッチトップ)企業は、事業のライフサイクルも長く、業績向上を見通す企業が多い。
3つめは強み領域に特化したビジネスモデル。これまで製造業は設計、生産設計、生産までを一気通貫で行ってきたが、強み領域に特化した製造業のビジネスモデルが現れてきた。例えば、生産設計に特化して工場をプロデュースする「ラインビルダー」や、質の高い多品種少量のものづくりをサービスする「製造受託事業者(EMS)などが出現、業務のアウトソーシング化が進みつつある。
4つめは、ものづくり(ハード)ベンチャー。イノベーションの牽引役として期待されるが「量産化の壁」という大きな課題がある。これには中小・中堅企業とのマッチングによる相互補完的取組みが生まれつつある。山形のベンチャーと中堅自動車部品メーカーとの連携や燕三条の産業振興センターのベンチャー企業との交流会などの萌芽が出始めている。
5つめは外部リソースの活用と異業種との取組みだ。開発リードタイムの短縮化に対応するため、標準化・モジュール化、オープンイノベーションを積極的に活用しており、協業に成功している企業は収益率も高い。
IoTに関しては、4月末に経産省とドイツ経済エネルギー省が「日独IoT/インダストリー4.0協力に係る共同声明」に署名、今度毎年局長級が産業サイバーセキュリティや国際標準化、研究開発など6項目をテーマに、対話を実施していくことになった。さらに民間間、研究機関間でも協力を推進し、両国で緊密の連携し、第4次産業革命を実現していく方針だ。
このIoTで課題となってくるのが中小企業だ。今年4月、ロボット革命イニシアティブ協議会が中間とりまとめを行い、中小企業へのIoT活用促進における課題をとりまとめた。中堅・中小企業の実態・課題は千差万別なので、それぞれで活用していくしかない。
1つはそのため、ユースケースを作る目的で今年度5億円の予算を掛けて「スマート工場実証事業」を行っていく。2つめはIoTコンサルタントの育成。スマートものづくり応援隊を組織し、チームで中小企業のIoT化をサポートしていく。3つめは中小企業が利用可能な簡易ツールの開発・提供に取り組んでいく予定だ。

(正田氏は6月17日付けの人事異動で、商務情報政策局商取引・消費経済政策課消費経済企画室長兼物流室長に異動した)

IoTのインパクト

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第4次産業革命に対応する日本企業の状況

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第3節 市場の変化に応じて経営革新を進め始めた製造企業

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