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新産業構造ビジョンが狙う 日本経済のあるべき姿(2)

経済産業省経済産業政策局 産業再生課長 井上博雄 氏

経済産業省経済産業政策局 産業再生課長 井上博雄 氏

—現状を放置すると、2030年までに735万人の雇用がなくなるとしているが・・。
2015年現在、約6300万人の雇用があるが、正確には、現状を放置するとご指摘のとおり約735万人の雇用が失われる一方で、第4次産業革命(IoT・ビッグデータ・AI(人工知能)・ロボット)に適切に対応していけば、約580万人の雇用を新たに生み出し、元々人口減少トレンドにある中でも雇用の減少幅を約160万人に留めることができると試算している。
英国のオズボーン教授は、今後、約700種類の仕事の約半分がAI・ロボット化によりなくなっていくと分析している。しかし、増えてくる仕事もあると考えている。確かに、定型的な製造ラインや販売、バックオフィスなどは大幅に雇用が減少すると予想される。他方、AIやロボットを開発したり新たなビジネスを創り出す人材、AIやロボットを使って共に働く人材、AIやロボットと棲み分けた人と直接触れる仕事をする人材の3つは確実に増えてくるので、それにあわせて雇用をシフトさせていくことが大事だ。
そのためには今後の教育・人材政策が大事であり、文部科学省と議論を行っているところだ。革命的な技術革新の世界に対応できる人材が育つような教育に変えていくことが必要。世界が急速にシフトしている実態に対応すべく、初中等教育でのプログラミング教育の必修化も決まったところである。

—ビジョンでは、イノベーション・技術開発の加速化を上げているが、オープン・イノベーションのエコシステムがこの10年間ほとんど進んでいない。この対策は?
ビジョンでは、本格的な産学連携、グローバル水準のオープンイノベーションシステムの構築を進めていくべきことを明記した。安部総理からの具体的な指示も各分野にいただいている。
具体的には、1つ目は、企業から大学・研究開発法人への投資を、今後10年間で3倍に増やす目標が打ち出された。大学などではこれまで研究のための研究が多く、また外部の企業と連携するための組織体制も不十分であり、企業側としては投資を行いにくいとの指摘があった。今後は、より実ビジネスに近い分野を企業と話し合い、出口戦略と時間軸を具体的に明らかにして産学連携を強化していけるよう、大学等の組織・機能が拡充されていくことになる。
2つ目は、世界のグローバルトップレベルの教授陣や企業の研究施設を備えた、産学の戦略研究拠点を29年度中に5ヶ所作る目標が打ち出されている。
これには、グローバルな最先端のネットワークに十分入り込めていないという日本の現状を早急に改善するねらいがある。
また、イノベーションを加速するためには、グローバルに人材を惹き付けるための環境整備も必要だ。例えば、再生医療の分野は日本が一番研究をやり易い環境に整えたため、世界中から研究者や企業が集まってきており、こうした環境を日本に増やしていくことが必要だ。また、永住取得までの在留期間を世界最短レベルとする「日本版高度人材グリーンカード」を導入することも、安倍総理の指示の一つである。
さらに、第4次産業革命の核となるAI(人工知能)について、関係省庁の司令塔となる「人工知能技術戦略会議」が設置された。従来、AI技術の研究開発は、経済産業省、総務省、文部科学省の3省それぞれのもとで行われていたが、今後は、この会議の元、3省連携が図られることとなった。今年度中に研究開発目標と産業化のロードマップを策定する予定だ。この会議の議長には、元慶應義塾大学塾長で、現在、日本学術振興会の理事長をされている安西理事長に就いて頂いている。

—第4次産業革命に向けた経済社会システムの高度化については、どのように進めていくのか?
ビジョンの大きな軸の1つに「規制改革」がある。最近、規制改革が小粒化し、企業からの要望も少なくなってきたとの指摘もある。しかし、行政手続・許認可等の複雑さは、ビジネス阻害要因のトップにも挙げられている。そのため、今回、グローバルな動きを踏まえ、目指すべき産業・社会の将来像をまず定め、そこから逆算して規制改革等を実現する「目標逆算ロードマップ方式」の必要性をビジョンで問題提起した。例えば、自動車の自動走行については、安倍総理の指示もあり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで無人自動走行による移動サービスや高速道路での自動運転ができるよう、2017年度までに必要な実証を可能とするなど、制度やインフラを整備することになっている。こうした規制改革等の取り組みを、自動走行以外の分野、特に日本の将来にとって重要な分野にも展開し、具体的に「目標逆算ロードマップ」を確立・実現していくことが重要と考えている。
今回の「新産業構造ビジョン(中間整理)」をもとに、さらに議論を深め、日本が第4次産業革命をグローバルにリードできるよう、経済社会システム全般にわたる改革をスピーディーに実現していかねばならないと考えている。ここで改革に乗り遅れると日本にはもうチャンスはないという覚悟で臨む必要があり、ご理解頂く方をさらに増やしていきたいと考えている。

データの利活用のための日本の強み・弱み

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多面的アプローチによる人材の育成・確保

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