政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


経済産業省資源エネルギー庁次長(前電力・ガス事業部長) 多田 明弘 氏 経済産業省資源エネルギー庁次長(前電力・ガス事業部長) 多田 明弘 氏

電力小売全面自由化が始まって4ヶ月が経った。その中で、電力小売事業に登録した数は318にも達し、そちらに乗り換えた顧客も数のうえでは2%となっている。当然、既存の電力会社も顧客を繋ぎとめようと、あらゆる努力をしており、今までには考えられなかった競争が生まれてきている。

このペースで進むのかどうかはわからないが、単純に計算すれば、2~3年あれば、乗り換えた顧客の数が、全体の10%を越すことになる。大口の自由化の場合、販売シェアは、10年かけて約10%となっている。これをもって、「期待以上に自由化が進んでいる」と強調するつもりはないが、他方で、現在の数字だけを見て「自由化が進んでいない」と決めつけるのは正しくないと思う。一般家庭では主婦の方が財布の鍵を握っていることが多い。今は様子見でも、周囲の評判を聞いて「こちらのサービスが良い」となれば動いてくれるのではないか。
長い目で見れば、猛暑、酷寒といった異常気象やエネルギー価格の乱高下といったような時もあるだろうが、これまでは独占企業体である電力会社が示すメニューに従うほか無かったが、そういった時に、消費者自らが電力会社自体も、そして料金メニューも選べるということ。この電力会社を「選べる」ということ、つまりは、実際に切り替えるかどうかは別としても、切り替えようと思えば切り替えができる、という仕組みに変わった、ということは、消費者にとって良いことのように思う。

電力小売の全面自由化がスタートし、料金ばかりに関心が集まりがちだが、電力システム改革の狙いの一つは、空気のように流れている電気、この供給元を選べなかった消費者に、供給元を選ぶという行為を通じて、その声をサービスの向上につなげ、より良い電力サービスを広めていく、ということ。料金面だけではなく、創意工夫に満ちた、電力供給のサービス向上ということも、自由化の恩恵の大きなもの。これを広く、多くの国民の方々に享受してもらいたい。

もう一つ、見落としがちの電力システム改革の狙いとして、日本経済の成長の起爆剤としたい、という考えがある。今回自由化された国内の8兆円市場の単なる奪い合いではなく、リアルタイムでの電気代の見える化と省エネとの融合など新しいITサービスやアプリケーションが次々に生まれ、そのイノベーションを通じて経済の成長に繋げていってもらいたい、ということ。

こうした動きを引っ張るのは、実は消費者。消費者の方々には、サービスをただ待つという受け身では無く、付加価値の高いサービスを積極的に選んでいく「賢い消費者」になって行って欲しいと思っている。それが、電力会社を鍛え、創意工夫を促し、付加価値の更に高いサービスを生んでいくことにつながっていくだろう。電力小売全面自由化の恩恵を享受するのは消費者だが、その恩恵を拡大することにも消費者は大きな役割を持っているということだ。(談)

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