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「これからのエネルギー政策の課題と展望」

一般財団法人日本エネルギー研究所(IEEJ) 豊田正和理事長に聞く

IEEJは6月に創立50周年を迎えた。米国の大学から国際エネルギー・シンクタンクとして第1位に選ばれたIEEJの豊田理事長に、今後のエネルギーの展望を聞いた。

――今は原油安で安定しているが、IEAは2018年からエネルギー需要が供給を上回ると見ている。理事長の見方は?

基本的に同感だ。来年の後半には需要過多となり、石油価格が継続的に上昇する可能性もあると思う。近いうちに原油価格が上昇するとの議論は、資源エネルギー部会においても指摘している。 政府・経産省は、昨年7月、エネルギー・ミックスをまとめたが、一般社会はエネルギー問題について、「原発が止まっていてもエネルギーは足りている」といった感じで、少々「油断」があり目覚めてもらう必要があるのではないか。
日本はエネルギーに関しては最貧国であり、脱原発を決めたドイツのエネルギー自給率が30%あるのに日本は7%しかない。ドイツでは周辺国との電力網やガスのパイプラインでエネルギーを融通し合えるが、日本は島国で、融通は困難だ。 だから常に、安定的かつ低廉なエネルギーの供給確保を忘れてはいけない。エネ庁には緊張感を持った政策を行って頂きたいと思っている。

――世界的な原油安のため、資源開発が15%減となっているが、日本企業は開発投資を50%以上減らしている。今こそ国がバックアップして資源確保に投資すべきでは?

今、JOGMECの機能拡充など必要な法改正を検討している。エネルギー問題は市場メカニズムだけでは解決できない。一定の政府の役割も必要だ。現在、民間企業は資源開発で大きなリスクを抱え、新たな投資が出来ない状況にあるからだ。
海外のエネルギーの鉱区や権益は、目下低価格であり、M&Aや投資を待っている「ゴールデン・タイム」にある。ここはJOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の機能を強化し、民間企業の開発を出資等を通じて強力に支援していくことが、喫緊の課題であろう。既述のように、「ゴールデン・タイム」は、長くは続かなからだ。

――現在、わが国はLNG火力発電に大きく依存してきているが、世界一LNGを輸入しているわが国がなぜ一番高い価格で購入しているのか?

2030年のエネルギー・ミックスでも示されている通り、セキュリティ、コスト、環境などの視点から、完璧なエネルギーは存在しない。それらを上手くバランスさせて利用していく以外ない。
LNGの課題について言えば、1つは石油連動価格指標に代わる指標がないこと。2つめは供給先と仕向け地との契約が拘束的で、日本国内でのLNGが余っていても他に融通できないからだ。
現在、G7でも契約条項の緩和や撤廃を提言してきており、需要の多いアジアでLNGのハブを作り、石油に代わる価格指標を作る方向になってきている。そのため、経産省が開催しているLNG産消会議も4年目を迎えている。
その中で、今や、産消の協力気運が高まる面白い時期にある。過度の価格上昇や過度の価格下落はどちらにも悪影響が出ることが、過去の2度の石油危機と逆石油危機の経験からわかってきたためだ。過度の価格高騰は、高コストの新供給者を招き、価格下落につながり、過度の下落は、開発投資を遅らせ価格上昇を招く。そのため、産消協力による価格安定化が重要ということが理解され始めてきている。

――ベース電源としての原子力発電だが、技術的にはかなり古くなってきており、より安全なパッシブセーフティーな原子炉の導入を検討する時期では?

現在、第2世代の原発が38基、第3世代が4基ある。厳格な安全基準に基づく追加の安全投資で40年経過した原発も60年使えることがわかってきた。米国は、8割以上が耐用年数を60年まで引き伸ばしている。
2030年までは大丈夫と思うが、その後は新増設が不可欠で、その是非を早期に検討すべきだ。より安全と言われている第4世代のパッシブセーフティーの原発は重要で、実用化研究を急ぐべきだ。
米国は、スリーマイル島の事故後、原子力工学の学生が減らないように奨学金を出して、技術者を維持した。日本も、新増設、新技術や、廃炉のためにもの原子力技術者を維持確保しておかないと将来が心配だ。税額控除した寄付税制も強化し、教育予算を充実させ、原子力工学の学生を確保していくべきだと思う。

――エネ研の今後の役割について

わずか17名でスタートしたエネ研も今年で50周年を迎え、200名近くの職員を抱えるエネルギーの総合研究所に発展した。当所には、エネルギー、環境、中東などの地政学、将来見通し等のための計量分析という4分野がある。国際的、多角的、客観的な視点から政府への政策提言や企業への戦略提言を拡充し、日本のみならずアジア、世界のエネルギー問題に係る提言活動を充実したい。
先日、光栄なことに、ペンシルベニア大からエネルギー資源分野のシンクタンクとして世界第1位に選ばれた。日本は、いわばエネルギー問題の宝庫であり各国から今注目されている。
最近、電力自由化の先進国のEUから「日本が電力自由化を進めているが大丈夫か」という多くの問い合わせがある。EUは自由化をしてから投資不足やエネルギー・ミックスの適正化に苦労しており、「市場改革の改革」と言うキー・ワードの下、自由化の見直し機運が強い。
日本でも自由化は必要であるが、一定の政府の役割は不可欠だと思っている。
とよだまさかず 東京都出身、東大法卒、1973年(昭和48年)通産省(現経産省)入省。商務情報政策局長、通商政策局長を経て、2007年経済産業審議官。08年内閣官房宇宙開発戦略本部事務局長。10年より現職。各国際機関のアドバイザリー・ボードメンバーを兼務。

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