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SERENDIP選書
第53回

『 サイボーグ化する動物たち』

『 サイボーグ化する動物たち』

『サイボーグ化する動物たち』
エミリー・アンテス 著/西田 美緒子 訳/白揚社/2,500円(税別)

SFの世界が現実のものに
動物の改造は倫理的に許されるのか

バイオテクノロジーや電子工学、コンピュータ技術近年の進歩は驚くべきものがある。動植物のDNAを操作することにより、品種改良がわずかな期間でできるようになっている。さらには、機械やコンピュータを動物の体内に埋め込む「サイボーグ化」の研究も進んでおり、SFの世界が現実のものになりつつある。

本書では、このような人間が意図するように動物をつくり変える技術について、その最前線の成果と進捗をリポート。また、それに伴う倫理的な問題について考察を進めている。

サイボーグ化の一例として、昆虫を使った超小型飛行体の開発が紹介されている。米国の諜報機関が、全米の科学者たちに「サイボーグ昆虫を作る技術を開発する革新的な提案」を募ったのだ。呼びかけに応じた研究チームは試行錯誤の結果、テスト飛行でハナムグリの脳に刺激を与えることにより、飛翔を開始したり停止させたりすることに成功している。

動物のサイボーグ化については、彼らの同意が得られない状況で手を加えてよいのか、倫理面における懸念がかねてから議論されている。だが、バイオテクノロジーは人間のためだけでなく、動物のためにもなるはずである。イヌの遺伝病を軽くしたり、絶滅寸前の野生動物の生息数を復活させるなど、人間がほかの種に与えてきた打撃の一部を元に戻すことも可能だ。

人が自然をつくりかえることでどのような影響が出るか。正確には誰にもわからないのだろう。リスクとメリットを可能な限り予測した上で、両者の間で、ケースバイケースで歯止めをつくっていくしかない。(情報工場 編集部)