政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


45回目となる10月の情報化月間がやってきた。IoT・ビッグデータ・AI(人工知能)などの進展により「第4次産業革命」に向けた先端IT人材の育成が急務となってきている。

2030年に 79 万人のIT人材不足を予想。(経産省「I T人材の最新動向と将来推計調査」より)

2030年に
79
万人のIT人材不足を予想。(経産省「I
T人材の最新動向と将来推計調査」より)

経産省では、先頃「IT人材の最新動向調査」をまとめたが、将来に向けたIT人材が79万人不足するという予測を打ち出している。特に先端IT人材の不足を懸念している。今、ITの世界では何が起きているのか?

1つは「ITが創造する未来」。まず、技術のブレークスルーが出現してきている。実社会のあらゆる事業・情報が、データ化・ネットワークを通じて自由にやりとりするIoT(モノのインターネット)が可能になってきた。

そして、集まった大量のデータ(ビッグデータ)を分析し、新たな価値を生む形での利用が可能になってきた。また、機械が自ら学習し、人間を超える高度な判断(AI=人工知能)、多様かつ複雑な自動化(ロボット)も可能だ。

この背景には、2年後ごとに倍増してきている世界のデータ量、指数関数的に進化するハードウェアの処理性能の向上、ディープラーニングなど非連続的に進化するAI技術がある。

これら技術のブレークスルーから大量の情報をもとにAIが自ら考えて最適な行動を取る、自律的な最適化が可能な「第4次産業革命」に突入したと考えられている。

例えば、大量生産・画一的サービスから、個々のニーズに合わせた個別化医療、即時オーダーメイド服などカスタマイズ生産・サービスが可能になる。

UberやAirbnbなどのように社会で眠っている資産と、個々のニーズをコストゼロでマッチングができる。また、ドローン施工管理・配送や自動走行など人間の役割、認識・学習機能のサポートや代替が可能になってきた。

そして、設備の切り売りから、センサーデータを活用した稼動・保全・保険サービス、データ共有によるサプライチェーン全体での効率性の飛躍的向上など新しいサービスの創出が見込まれる。

この第4次産業革命の技術は全ての産業における革新のための共通基盤技術であり、今後様々な各分野における技術革新・ビジネスモデルと結びつき、新規創薬や新種作物、バイオエネルギーなど全く新しい製品やサービスが出現してくると予想されている。日本は人口減少・少子高齢化、医療・介護費の増大、地域経済の活性化、エネルギー制約など「社会課題の先進国」である。この日本が直面する課題をIoT・ビッグデータ・AIが解決する可能性が出てきた。

日本はIoTポテンシャルが非常に高く、ブロードバンド普及率世界第2位のネットワークを持ち、成長可能性の高い、製造業やヘルスケア、農業などの分野がある。

2024年までにはスマートメーターが全世帯に普及し、レセプト(診療報酬明細書)の電子化率が98%以上になってきている。 (4Pへつづく)

特に先端IT人材の大幅不足が懸念されている

特に先端IT人材の大幅不足が懸念されている

(1Pよりつづき)
2つめはサイバーセキュリティの脅威がある。IT利活用の拡大とともに、サイバー攻撃の脅威も増大してきている。事案は増加し、攻撃の手口は巧妙化、政府関係機関や企業への標的型サイバー攻撃により個人情報や重要技術の情報漏えい等が多発している。

IoTではこれまで接続されていなかった自動車やカメラなどの機器が、WiFiや携帯電話網などを介してインターネットに接続されることにより、新たなセキュリティ上の脅威が発生、それに対する対策が必要になってきた。

近年は社会インフラを狙ったサイバー攻撃リスクが増大、テロリストや他国からの国民の生命、財産を脅かす明確な意図をもった攻撃が増えてきている。例えば、2003年の米国の原発制御システム停止やトルコの石油パイプラインの爆発、ロンドン五輪での毎秒約1万回の不正通信など、国と企業が連携して取り組む必要が出てきた。

しかしながら、これらの担い手となるIT・データ人材が不足している現状がある。2015年現在で約17万人、2030年には約79万人と深刻な人材不足が推定されている。その間、AI・IoT・ビッグデータなどの先端IT技術に関する市場も拡大するが、この先端IT人材も約4・8万人不足するといわれている。このため、多様な人材活用、スキルアップ支援による生産性の向上が急務といわれている。

3つめはIT人材育成である。これまで経産省ではIT人材育成施策を次々展開してきている。若手IT人材育成では、未踏IT人材発掘・育成事業やセキュリティキャンプ、SECCONと呼ばれるセキュリティ・コンテスト、22歳以下の若者を対象としたU|22プログラミングコンテストを支援している。

また、IT人材のスキル把握のため、ITスキル標準の普及や情報処理技術者試験の整備を進めていた。 そして、新たな取組みとして、平成28年度から情報セキュリティマネジメント試験を創設、29年度春からは情報セキュリティ技術の専門家として、情報システムのセキュリティ管理を支援する「情報処理安全確保支援士」試験を実施することになっている。今後3年間で3万人の支援士育成を目標にしている。

また、現在のITスキル標準にはAI・IoT・ビッグデータのスキルが入っていないため、これからどうスキル標準に取り込むかを検討し、対応を図っていく予定と言われている。

さらに、セキュリティ人材育成の中核として来年度から「産業系サイバーセキュリティ推進センター」(仮称)を設立し、サイバー攻撃に対し、実戦的に、効果的な防御戦略を構築できる人材を育成していく。

IT人材育成は30年以上前から言われ続けてきているが、「日本語の壁」もあり中々一筋縄では行かない側面がある。今後の取組みが注目される。