政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


学業生活を済ませて社会に出ると、いずれ何らかの職業に就くことになる。民間企業にしろ、行政機関にしろ、多くの人は組織の一員として働くことになる。社会活動では知識とともにスキルが求められ、スキルは体験から学ぶものだから経験を積み重ねながら成長していく。

学生時代の知識は組織活動や社会活動の基盤として役に立ってはいるが、組織活動の中でどんどん専門性が求められるようになると高度な専門知識の習得も必要になってくる。日々研鑽、自己学習には努めるものの学生時代のような密度で学習ができるわけではない。学生時代に学んだ専門知識も時間の経過とともに劣化してくる。

学習意欲の高い人は組織が用意する制度を生かして海外留学をしたり、就業しながら一念発起して国内の大学院に通ったり、ビジネススクールでMBAの取得を目指したりする。こういった社会人の学び直しに日本の教育環境は優しくない。

もともと産学の連携が弱く、求める人材像の差異も見られる。現実には企業側の理解不足、重い授業料負担、ニーズにあったカリキュラム不足、実務を教えられる教員の不足など社会人にとって学び直しの環境は必ずしも整っていない。そんな背景もあって、OECDの調査(OECD Stat Extracts)によると国際的にも日本の社会人就学率は最低レベルになっている。

米国経営者のキャリアを見ると複数の大学で複数の分野を学んでいる人をよく見かける。学士課程の半数に迫るほどのコミュニティ・カレッジで学び直しする社会人も多い。転職や異動などで新しい仕事に就くときに、必要な知識やスキルを短期のテクニカルプログラムで身につけたりする。

韓国経営者のプロフィールにもよく複数の大学の卒業履歴が見られ、社会に出て経営者の立場になってから別の大学で学び直す慣習があると聞いたことがある。

そんな環境の中でも変化の兆しは出ている。文部科学省は2014年、「高度人材養成のための社会人学び直し大学院プログラム」の公募を行い、人文科学、自然科学、医学・歯学分野での14大学が選定され、社会人の受け入れと教育実践が始まっている。

まだ一部の教育機関とテーマではあるが、問題意識と課題が形になっている。学び直しや生涯学習は時代とのずれを修正する重要な学習活動である。受験戦争で疲弊し、ちょっと緩んだ大学時代を過ごし、社会に出て実務社会で揉まれているうちに学び直しの必要性を痛感する人もいるだろう。

学習意欲が高く、新しい分野に挑戦しようと学び直しをする人もいるだろう。学び直したいと思っている社会人は、もっともっと身近な機会を求めているはずだ。

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