政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


経済産業省 商務情報政策局情報処理振興課 課長 滝澤 豪

経済産業省商務情報政策局 情報処理振興課長 滝澤 豪

経済産業省商務情報政策局 情報処理振興課長 滝澤 豪

経産省は、あらゆるシステムがネットワークを介して相互に接続されるIoT技術が、第4次産業革命といわれる大変革時代の中核技術であるとの認識から、その担い手である組込みソフトウェア産業の競争力強化に乗り出した。そこで、滝澤課長に政策の要点をまとめてもらった。

世界は再び大きく変わろうとしています。最初の変革は18世紀イギリスの、機械化と蒸気機関の発明、そして石炭エネルギーの利用による第1次産業革命でした。工場機械の出現による手工業からの脱却と大量生産時代の始まりは、社会に大きな富をもたらすと同時に、資本家と労働者からなる資本主義の成立と新たな価値観を生み出しました。続く変革、すなわち第2次・第3次産業革命は19世紀の石油と電力のエネルギー転換、20世紀のコンピューターの発明による情報革命によって始まりました。

そしていま、世界の産業は、IoT、人工知能、ビッグデータといった先端情報技術によって、再び大きく変えられようとしています。あらゆるシステムがネットワークを介して相互に接続されるIoT技術は、生産ラインをリアルタイムにデジタル化し、さらに高度な人工知能が、製品開発から製造・販売までの工程の最適化と自動管理を行うと同時に、マーケット動向をビッグデータ解析することで、最適なタイミングで高付加価値な製品を市場に投入する、まさに第4次産業革命とも呼ぶべき大変革が始まろうとしています。

経済産業省は本年4月に「新産業構造ビジョン中間整理」を取りまとめ、第4次産業革命のインパクトと、それを踏まえた我が国の具体的戦略を公表しました。本中間整理には、企業や組織が垣根を超えてデータを収集し、それらを人工知能で分析し得られた知見を活かして、新たなビジネスを創出するためのデータプラットフォーム、セキュリティ対策などの環境整備、それらに伴う人材育成、技術開発等の推進が盛り込まれております。また、産学官連携による先進的なIoTプロジェクトを創出すべく、短期的な資金支援、規制緩和、企業連携支援などを行う「IoT推進ラボ」を設立しています。テーマ別に既存ルールの見直しや新たなルール・仕様作り等を目的として、複数の企業間連携による中長期的なテストベッド実証事業を開始するほか、地方自治体と連携しながら地方でIoTプロジェクトを創出する、「地方版IoT推進ラボ」を国内29地域で選定し、地方創生に向けた取組も開始したところです。

組込みソフトウェアは、工場内での各種産業機械、日常生活で利用しているデジタル家電、携帯電話、スマートホン、タブレット端末、医療・ヘルスケア機器、カーナビゲーション、自動車など、日常生活に密着した数多くの製品に搭載されています。組込みソフトウェアの主要関連産業である製造業は我が国GDPの18%を占めており、組込みソフトウェア産業は名実ともに我が国のあらゆる産業を支える基盤産業と言えるでしょう。

第4次産業革命によって、組込みソフトウェアが果たす役割はますます大きくなっていきます。人工知能を織り込んだソフトウェアの開発、最新のセキュリティの実装による信頼性の向上は必要不可欠です。また、従来のように一つ一つオーダーメイドで作るのではなく、モジュール化したプログラムを組み合わせ、色々なメーカーに対して汎用的なソフトウェアを提案する。社会の動向の先を行くこうしたアクションを起こすことにより、この業界には大きなビジネスチャンスが広がっていると思います。

IT人材の不足が懸念されているなかで、こうした新たな課題に取り組んで行くことは簡単ではありません。このため、経済産業省は、内閣府、総務省、文部科学省、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、情報処理推進機構(IPA)、さらには業界団体の参加を得て、組込みソフトウェア産業の競争力強化と持続的発展にむけた政策を立案・推進する「組込みシステム司令塔会議」を立ち上げました。組込みソフトウェア産業の動向を把握するための調査を再開するとともに、標準化事業や実証事業などの予算面での支援も引き続き用意すると共に、人材育成や組込みソフトウェア産業の競争力強化へ向けた戦略の取りまとめに着手しています。

組込みソフトウェア産業に携わる皆様の活躍なくして日本経済の成長はありません。IoTや人工知能など新しい技術が進展し、世界が変わろうとしているこの機会を捉え、皆様が今後より一層の飛躍と御活躍を成し遂げられますことを心より祈念しています。

機密性○