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徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃 (文春新書)

徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃 (文春新書)

『徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす』

-社会的損失40兆円の衝撃
日本財団 子どもの貧困対策チーム 著/文藝春秋(文春新書)/780円(税別)

子どもの貧困問題を放置することは国民全員の「生活の質」低下に結びつく

経済大国であるはずの日本で「6人に1人の子どもが貧困状態にある」という。

ここでいう「貧困状態」とは、日々食うや食わずの「絶対的貧困」に限らない。毎日の生活に最低限必要な衣食住は満たされているが、他の家庭のように将来に備えた貯蓄や教育費に回す余裕がない「相対的貧困」も含まれる。

貧困に直面した当事者や関係者ではない大人にとって、子どもの貧困問題を「ジブンゴト」として身近に考えるのは難しいかもしれない。だが、子どもの貧困問題を放置することは、税収減少や社会保障費の増大による国の財政負担につながり、増税や公共サービスの低下といったかたちで、国民全体に影響を及ぼす。本書では、そういった事実を各種データを分析しながら鋭く指摘している。

さらに問題なのは、親から子どもへの「貧困の連鎖」だという。たとえば、ある児童福祉施設では、大学進学を希望する子どもに対して返済不要の独自の奨学金を設けている。しかし、それでも退所後に、大学進学を希望する者は少数にとどまる。それは施設に入所する子どもたちの親の多くが、アルバイトなど非正規雇用のもと生計をたてているからだ。そうした姿が子どもたちの職業観のベースとなり、大学を出て正規労働に就く将来像を描きづらいのだ。

少子化で人口が減少している現代では、貴重な人材を生かすために「すくい上げる」という発想が重要なのではないだろうか。政府、自治体、NPOらの取り組みに期待するとともに、まずは国民一人ひとりがこの問題を「ジブンゴト」と捉える空気をつくりだすことが必要といえる。(情報工場 編集部)