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「世界で勝てる技術力持て」グローバル・ニッチ・トップ企業めざせ
先月末、わが国のものづくり産業を支えてきた、サポーティング・インダストリーとしての「新素形材産業ビジョン」がまとまった。グローバル化が進み、わが国のものづくりあり方に大きな変革が迫られており、7年ぶりに今後の方向性が策定された。

新素形材産業ビジョン策定委員会(委員長・吉川昌範東工大名誉教授)は昨年11月から半年間議論を重ね、精緻で実用的なビジョン(自画像)を描きだした。 現状認識としては7年前と比べ、1つは、国内が少子高齢化による内需の成熟化、アジア新興国の生産拠点化・需要地(市場)としての存在感を高めている外部環境の変化がある。2つめは、自動車産業の海外現地生産の進展により、70%をクルマに依存してきた素形材産業は、下請け体質が強く、脆弱な中小企業が多く、新興国からも追い上げられ、低収益構造になりつつある。 そのため、わが国のものづくり競争力の源泉である、素形材産業の優れた技術力と高い信頼性、いわゆる「縁の下の力持ち」としてのサポーティング・インダストリーの目指すべき方向性を、ビジョンでは6つ示した。 1つは、競争力の源泉である技術力、ITを活用した「世界で勝てる技術力を持つ」。2つめは、航空・宇宙や医療機器分野など「仕事の幅を広げて、付加価値を高める」。3つめは、工程を徹底的に自動化・省力化することによる「魅力的なものづくりの現場で魅力的な人材を育てる」。 4つめは、「健全な取引慣行で強靭なサプライチェーンを作る」。5つめは、産業の重要性を理解してもらうため「自らの仕事をより世の中に発信する」。6つめは、国内の現場を維持しつつ、「海外市場を取り込み『グローバル企業』を目指せ」。グローバル・ニッチトップ企業(グローバルに活躍できる素形材産業)を目指せと結んでいる。 今回のビジョンでは、グローバルニッチで活躍する素形材産業のベストプラクティスや世界が注目するAM技術(3Dプリンタに代表されるアダプティブマニュファクチャリング)やドイツのマイスター制度、産官学の人材育成の取り組みなど約40近いコラムで紹介、図表もふんだんに使われ、素形材産業を立体的に理解できる工夫がなされている。 同委員会では「このビジョンを産官学のバイブルとして共有し、産業界が自ら行動し、競争力を高め、わが国のものづくりの発展に貢献して欲しい」と期待している。
ビジョンのポイントを聞く
経済産業省製造産業局素形材室長 ものづくり政策審議室長 田中哲也氏
形材産業は中小企業が多いが、大企業が一目おくのは技術力である。やはり、優れた技術力を持っていないと、中長期的には生き残れない。強調したい点は、まず、第1に技術的優位性に基いて、企業の差別化を図って欲しい。それは国内だけでなく、グローバルとの競争である。海外から部品は入ってくるから、世界で勝てる技術力を持ってもらいたい。2つめは、わが国の素形材産業はIT技術を取り入れるのが遅れている。長年の技能、経験・勘、知恵で勝負している面が強い。
もう少し、ITを駆使していろいろなデータをきちっと取り、統計的に処理し、再現性や効率性を高めていくことが重要である。 ある鍛造メーカーは熟練工のやっていた予備成形の部分をコンピュータで解析し、それをロボットに覚えさせ、より効率的に鍛造品を作っている。つまり、技能を技術に転換することで、技術の伝承ができるようにITを活用しているわけだ。 3つめは仕事の幅が狭い。素形材企業は鍛造、鋳造、金型、熱処理など1つの要素で企業がある。メーカー側は発注したら、部品で納めてくれるようなオールマイティな付加価値のある企業を求めている。4つめは、70%を自動車産業に依存している体質からの脱却だ。あとの残り20%が産業機械だ。もう少し、環境機器やMRIなどの医療機器、航空・宇宙などの部品などに用途を広げていかないと厳しい。 5つめは海外展開。伸びている海外の需要を取りにいく必要がある。日本の足場をしっかりと固めた上での仕事をどう取るか? そのためには、企業の幅や体質を強くするためのM&Aもこれから増えてくるのではないか?今回のビジョンでは、素形材産業はサプライヤーまたはパートナー企業というようにした。「下請け」という言葉は使わないように強調している。    (談)

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