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「成長戦略」の重点課題に挙がる産業競争力強化法案の目玉に

わが国のベンチャー支援策はすでに欧米と比べ、そん色ない水準にあるが、リーマン・ショック以降、ベンチャー投資は米国の約20分の1に冷え込んでしまっている。アベノミクスの成長戦略では、「若者に元気がなければ経済は活性化しない」として、積極的にベンチャー支援を打ち出している。成長戦略の中でのベンチャー支援策を佐々木課長に聞いてみた。

「今回の成長戦略のポイントは、日本産業の再興にある。まず、産業基盤を強化し、足腰を強くしてから、国際市場に打っていくストーリーになっている。その中核の1丁目1番地の政策が、産業の新陳代謝を進めることだ。『過小投資』『過剰規制』『過当競争』の3つを解消していくことが重要である」。
 今後5年間(2017年度まで)を「緊急構造改革期間」と定め、そのために「産業競争力強化法案(仮称)」を今夏までに方針を固め、速やかに国会に提出する準備を進めている。
 「新陳代謝策としては、税制を含めたベンチャー支援策が議論されている。特に内外のベンチャー投資・再チャレンジ投資の促進に力を入れている。ここでの目標が、産業の新陳代謝の促進。開業率が廃業率を上回る状態にする。かつ、米英と比べると、開業率も廃業率も半分(4・5%)しかない。これを何とか10%台に持っていきたい」。
 その目玉としては税制が大きい。「1つはエンジェル税制の運用改善だ。個人によるベンチャーへの300万円の投資に対し、約110万円の税額を控除する制度は出来ている。しかし、利用件数はわずか40-50件程度しか利用されていない」。
 その理由は、あまり知られていないというPR不足の問題と、エンジェルはビルゲイツのような大金持ちがやることと受け取られている点だ。「商店街の旦那が娘夫婦の空き店舗を活用したスープ屋の開業に300万円出すのも立派なエンジェルなのに・・・」。
 またエンジェル税制をいざ活用しようとすると、40Pの申請書が必要であったり、運用面でも課題があった。今回これを2Pに軽減し、全国キャラバンでPRしながら運用手続き改善に取り組むそうだ。
 もう1つは、企業向けのベンチャー投資をした際の優遇処置である。「諸外国には、一定の条件の下で企業によるベンチャー投資を促進する施策はあるのだが、日本ではいまだ不十分。今年の8月末までに、民間企業の資金を活用したベンチャー企業への投資を促す方策を検討する。ニュービジネス協議会や日本製薬工業会からの要望も来ている」。
 再チャレンジのための個人保障制度の見直しも重要だ。「一度失敗すると、不動産はじめ身ぐるみがはがされてしまうので再チャレンジが非常に難しい。個人保障がなくてもお金が貸せる仕組みやガイドラインが検討されているところ」。
 もう1つの柱は新事業創出事業である。「ベンチャーキャピタルなどのプロ30名にPM(プロジェクトマネージャー)になってもらい、実際にベンチャーの創業を立ち上げるために現場に入り、ビジネスプランや経営計画を作る。そして成功モデルを世の中に出し、併せて目利きのプロの養成も行ってもらう仕組みだ」。
 このような目利きが増えれば、ベンチャーの開業率も上昇していくと考えている。この事業に現在、27件の採択案件があり、カーボンナノチューブ蓄電技術を応用したスーパーキャパシタの開発や次世代パーソナルモビリティ(電動車いす)のビジネス開発などが注目されている。
 「その他、まだルールが明確になっていないクラウド・ファウンディングや、ベンチャーの目利きが審査員となって、若者の提案による『ベンチャー・ビジネス・コンテスト』などを開き、もう一度、ベンチャー・ビジネスが上昇気流に乗れるように、世の中を盛り上げていきたい。若者がどんどんベンチャーにチャレンジしていくことで、日本経済が元気に変わっていくお手伝いをしていきたい」と語った。
 <ささき けいすけ> 千葉出身、東大法学部卒、平成5年経産省入省。クールジャパン室企画官、デザイン政策室長を経て、平成23年内閣官房企画官、今年1月より現職。

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