政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


☆連載1回目
「日本のものづくりにソフトウェアの視点を」

わが国のものづくりの今後を論ずる時に、組込みソフトウェアの重要性があまり理解されていない。高精度な部品の機能をソフトウェアで代替してきている時代の視点が欠けている。この様な問題意識から、業界の専門家に集まってもらい議論した内容を連載で紹介する。

覆面座談会「日本のものづくりと組込みソフトウェアの将来は?」
(出席者)*司会本紙主幹
     A:大学で競争戦略とものづくりを研究する研究者
     B:元大手電機メーカー組込み開発リーダー
     C:ソフトウェア商社システム研究部長

中国で組み立て欧米のソフトを使うのがベスト

C ETSS(組込みソフトウェアスキル標準)をやっているとき、大手電機メーカーの人が「プロダクトマネージャーやプロジェクトマネージャーを育てられない」と言っていた。それは、ソフトウェアを作る部分をすべてアウトソーシングしてきてしまったからだ。制御設計にしても、メーカーの人がわからないのに、下請けの派遣の組込みソフトウェアの技術者にわかるわけがない。
 O先生のいう、ソフトウェアの意味、ビジネスとして成立する要件を満たしたとしても、今の構造の中では結局、海外にシフトしていってしまうのではないか?
 最近、大手通信メーカーのS社や家電液晶のS社の業績が上がってきたのは、多層型CCDや酸化物半導体(IGSO)といった要素技術が円安も加わり、よくなってきたからだそうだ。頭のよい人がそれら要素技術をまとめて、新しいイノベーションを起こしてくれたらと思うのですが・・・。
B その要素技術も、製造装置を作るメーカが分かれば、海外企業が同じ装置を人と一緒に日本から調達してすぐに作れるようになる。
C 日本の製造装置でハードウェアを作り、中国の労働力で製品を組み立て、欧米のソフトウェアでグローバルに販売するのがベストコンビネーションのようです(笑)。
B 最近の中国の労働者の質が日本より良くなってきていて、まじめにコツコツ働いてくれるようです。素材とか部品とか他国が作れない『要素技術』があって始め日本が勝てるというのが実態であり、特に電機産業ではこれを使う完成品のレベルでならもはや勝てない。
C 要素技術が伸びると、これを使って新しい『Jフォン』なるものを作り、市場を制覇されるのでは、とてもやりきれない。
B その要素技術もどんな製造装置があればできるのかがわかると、どんなところでも生産できてしまう。

A 日米欧それぞれソフトウェアはオフショアで作るのは共通なのに日本だけうまく行かないのはなぜ?
C 90年代の米国の銀行はアプリケーションを内製化して作っていた。これを日本の銀行系に売りにそのアプリを持って行ったら全く売れませんでした。すべて外注していたためでした。
A ソフトウェア・エンジニアはいなかったのでしょうか?
C 非常に数が少なかった。銀行のシステムの中には、ソフトハウスの派遣の人たちが張り付いていました。
B そのビジネスモデルと作ったO社長と話したら、『私はT社には創立時に大変お世話になった。5人で始めた企業に50名を募集して採用し、すべてT社の大型計算機研修センターに送り込んだ。T社は無料で研修をしてくれた。そして、その50名をT社が売った大型コンピュータのお客様に派遣した。それからビジネスがスタートし、オペレーションだけでなくソフト開発も頼まれるようになり、ソフトウェアの受託開発も行うようになったそうだ。これが日本的ビジネスモデルとなったようだ。
 雇用形態も影響している。日本は終身雇用性であったため、ソフト開発に大量に人が必要になっても欧米のように採用できないので、自然と外のソフトハウスを使うようになった。発注する側は、外のリソースをコントロールしたり発注伝票を切る機能に特化していってしまった。しかし欧米の企業は肝心要のところは、皆、自分でソフト開発をしている。
――日本でも宅配トップなど強い企業ほど、外注をやめて、ソフト開発を内製化してきている。そうでないと、サービスとITの進歩にシステムが追いつかないからだそうだ。外注しているとどれだけコストをかけているのかが見えなくなるという。内製化した方がIT投資は減っているようだ。
B 最近は検証・テスト作業だけはアウトソーシングしようという動きはある。
組込み業界も派遣と丸投げで来ていた。
C 1昨年から組込みのアンドロイドの開発技術講座がブームでした。派遣会社はどんな技術者でも、その講座に人を送り込み、いまのアンドロイド・ビジネスにつなげていた。
B 今そのアンドロイドの開発人材も中国に移ってきている。

要素技術だけではもはや勝てない。
日本は技術が発展している段階の時だけが強い。
アウトソーシングが最大の弱点だ。

テレビはなぜ?
――液晶テレビは日本の要素技術が入っており、とても強かったのになぜ、OSを握れなかったのか?
B 基本的にOSは何でも良かった。テレビの一番の技術は、良く映る画像処理技術である。ハイビジョンTVで重要だったのはSDの画像をいかにハイビジョンにアップコンバートするかであった。
テレビは画像がきれい映ると一目瞭然。そのように技術を高めている時は日本は強い。しかし、ある程度まで収斂してくると、ソフトで処理していた部分をハード化してコストを下げようとする。すると、ハードを買ってくればどこでもテレビが出来てきてしまう。
 画像の境界がきれいに出たり、画像のギザギザをならす技術が必要で、テレビごとに違いがある。液晶ハイビジョンはサチッてしまったので、4Kやハイパーハイビジョンなど、画素数を上げればまた技術が必要というノリになってしまっている。
C 日本のデジタルテレビが発売されてりる時に、なぜよその国が同じデジタルテレビを安く作れるたのか?
B チップセットを買ってくればデジタルテレビは作れるようになってしまった。OSや通信のチップも売っているので、それをそろえればどこの国でも組み立てれば作れるようになった。
A このようなチップのビジネスで大躍進した企業に台湾のMスターがある
C かつてT社とかは、デジタルテレビを相当な組込みソフトの人手をかけて作っていかが、あの人たちはどうしたのか?
B あれは放送に間に合わせてテレビを作るというプレッシャーのもと、出来合わせのCPUを何個も使ってパフォーマンスを合わせて無理やり作ったから人手が必要だった。地デジ放送に間に合わないと大変なことになる。そのため、FPGAを仕方なく使っていた。
C チップセット化していたものが出てきたら最初の努力は水の泡になった?
B その通り。放送開始に間に合わせるため、いくらお金をかけても良いから映るものを作れ、最初はどうせそんなに売れないし、あまり作らない。間に合わせて、チップセットが出来て儲かる仕組みで作れるようになってから大々的に宣伝し、売りまくったのが真相だ。
 技術的に発展の余地があるときは日本は強い。海外メーカーも技術が発展段階では中途半端な製品は出さないし、ビジネスに入ってこないが、サチルと途端に参入してくる。無駄な投資はしないし、日本メーカーが多数で技術競争しているのを待つ戦法だ。逆に、日本が競争しなくなると彼らは困るかもしれない。・・・>申し訳ありませんが、この続きは本誌でご覧ください。

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