政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


1600キロ、総事業費は3500億円程度
LNG需要の10%確保、安全保障などメリット多い

ロシア・サハリンからの国際ガスパイプライン構想が浮上してきた。わが国の大手メガバンクが調査したところによると、サハリンから1600キロの天然ガスパイプラインを国際プロジェクトとして敷設すると、欧州ガスパイプライ並みの現状より2割安い価格の天然ガスの導入が可能となり、千葉県房総まで敷設しても総事業費は3500億円程度で済むことが明らかになった。

わが国は東日本大震災後、原子力発電所の稼動がままならず、天然ガスによる火力発電をフル稼働させ、電力の安定供給を図ってきていた。しかし、LNG(液化天然ガス)の輸入に頼るのみで、折からの円安と原油価格と連動したガス輸入の急増により、年4-5兆円の貿易赤字の大きな要因となってきている。
 エネルギー安全保障の観点から、国内にガスパイプラインの導入が叫ばれていたが、エネルギー業界のしがらみから中々進展せず、パイプライン・ネッワークがところどころで寸断されている状態だ。
 このほど入手した大手メガバンクの調査によると、サハリン1をソースとする天然ガスを安価かつ安定的に調達するパイプラインプロジェクトのインフラ投資額は3500億円で済むことが判明した。託送料は1立方㍍当たり7・1円、16年で償却できる試算であり、「十分採算が取れる水準だ」(同銀行筋)としている。
 欧州での中長期的なガス消費量の減少傾向に悩むロシアにとっても、①東アジアでの販売先確保、②中国との価格交渉の打開、③再圧入中のサハリン1の有効活用などメリットが多い。また日本にとっても、①安価な欧州並みの天然ガスへのアクセス、②シェールガスや他のLNG輸入価格交渉における交渉材料の獲得、③東日本の復興事業(沿線に使用料などの益出し)、④ガスのナショナルグリッドとしての活用、⑤ロシアとの価格交渉チャネルの増加などメリットがたくさんある。
 この構想によると、サハリン1から宗谷岬までの900㌔はロシア側が敷設し、宗谷岬から石狩―苫小牧を抜けて、千葉沖までの1600㌔をパイプラインコンソーシアムが建設する国際プロジェクトとなる。また青森沖から二股に分けて、日本海・新潟までつなぐ第2ルート(1300㌔㍍)も可能だという。サハリンからの輸出規模は年600万トン。日本のガス輸入量の10%をまかなえる規模である。
 「これだけの資金でエネルギー安全保障が確保されるのなら絶対に進めるべきプロジェクトだ。首都圏のエネルギーは東京直下型地震がひとたび起きれば脆弱性が露呈するのは明らかだ。」(国際エネルギー事情専門家)。東日本大震災の時、仙台LNG基地が被害を受けた際、新潟からのガスパイプラインにより、影響が最小限に収まった先例がある。
 このガスパイプラインのほとんどは口径26-28インチ(65~70㌢㍍のパイプラインを海底に敷設する計画で、輸送能力は年間85億7千立方㍍(LNG換算600万トン)。「日本がこれから国際社会で生き抜くためには、できるだけエネルギーの多様化を図り、したたかに資源・エネルギー戦略を組み立て、価格交渉力を持つことが需要だ。そのため、エネルギー安全保障を最優先してインフラを整えることがポイントだ」(同)。
 メガバンク側の見方は、他国に比べ少ない国内輸送パイプライン網は延長できる余地が大きく、「この拡大が呼び水となり、需要地での新規発電所建設や地域冷暖房など数兆円規模のプロジェクトファイナンスが想定できる」として、成長性の高いビジネス領域と結論付けている。この国際パイプラインプロジェクトは、わが国の産業構造を変革するチャンスとして、大きくクローズアップされてくるだろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">