政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


イノベーション(2)

ポイント:
① 新しい時代(ナチュラルタイムズ)の要請に合わせたイノベーションが必要だ。
② 世界を驚かす技術革新だけがイノベーションではない。プロセスイノベーション、ビジネスモデルイノベーション、日本的経営イノベーションが再度見直され、これからは、アテンションイノベーションとイシイノベーションが日本復活の鍵を握る。
③ 大企業や開発型企業だけでなく420万社の日本企業が、イノベーションの対象である。
④ イノベーション能力は、教育によって向上できる。

1.時代が変わった!(第1回)
2.真実は価値基準の変化!(第1回)
 
3.企業行動基準がイノベーションを決める!
 前回に解説したように、従来からの「1.衣食住」や「2.異飾充」というモノ中心の価値基準から、コトやイシ(人の心や意思)に焦点を合わせた価値基準「3.意触柔」や「4.畏蝕重」が重視されるようになってきている。そのため、従来のモノの改善では追いつかない事象が多く出現し、新たな視点によるイノベーションへの要求が高まっている。その対象も環境変化に合わせて多様化し、イノベーションの範囲が広がっている。
 元々、イノベーションは、オーストリアの経済学者シュンペーター(Schumpeter)によって、初めて定義された。彼の著書『経済発展の理論』(1912年)で、経済発展は、人口増加や気候変動などの外的な要因よりも、イノベーションのような内的な要因が主要な役割を果たすと述べられている。このイノベーションは、新しいものを生産する、あるいは既存のものを新しい方法で生産することであり、生産とはものや力を結合することと述べており、イノベーションのことを「新結合」と呼んでいた。従来、日本においては、イノベーションは「技術革新」と訳されることが多い。
 シュンペーターは、イノベーションを5つの類型(本稿では、法政大学総長清成忠男先生の翻訳を引用)に分けているので、その意味・本質を考察する。
① 「新しい生産物または生産物の新しい品質の創出と実現」
 ・・・本質:顧客価値創造の手段としての新しい製商品・サービス(シュンペーターは、
         消費者に知られていない又は新しい品質と述べている)を提供すること。
② 「新しい生産方法の導入」
 ・・・本質:新しい製商品・サービスを生産する新しい方法(シュンペーターは、当該
        産業部門において実際上未知な生産方法と述べている)・プロセス
         を開発・導入すること。
③ 「産業の新しい組織の創出」
 ・・・本質:イノベーション経営活動を拡大する新しい組織(シュンペーターは、独占
       的地位(たとえばトラスト化による)の形成あるいは独占の打破
       と述べている)・仕組みを構築すること。
④ 「新しい販売市場の開拓」
   ・・・本質:価値創造の対象である従来に対象とは別な新しい顧客(シュンペーターは、 
       当該産業部門が従来参加していなかった市場と述べている)を作り
        出すこと。
⑤ 「新しい買い付け先の開拓」
   ・・・本質:新しい製商品・サービスの元になる要素としての新しい資源(シュンペータ   
        ーは、原料あるいは半製品の新しい供給源と述べている)を獲得す
        る。        
 ここでの考察は、
(1) 上記①~⑤の全てに「新しい」とあるように、新たな価値を生み出すことが想定されていること。
(2) 上記①③に「創出」とあるように、目的を達成するのに「創造的活動による結果」が重視されているのは、従来よりも抜本的な価値を上げることが想定されているので、②④にも当てはまること。
(3) 目的に顧客価値創造だけではなく「社会価値創造」という地球温暖化等の対策や地球資源の保護などが加わり、価値達成手段の範囲が①よりも拡大していること。
(4) 従来の社会に比べて、現在の複雑系社会においては、①~⑤に加えて、多様性をベースとした考え方のイノベーションとして、「アテンションイノベーション」や「イシイノベーション」などが日本復活の鍵を握ること。


イノベーションの定義と言えば、文部科学省の第3期科学技術基本計画においては、潜在的な科学技術力を、経済・社会の広範な分野での我が国発のイノベーションの実現を通じて、本格的な産業競争力の優位性や、安全、健康等広範な社会的な課題解決などへの貢献に結び付け、日本経済と国民生活の持続的な繁栄を確実なものにしていくことの重要性が示されており、その中で、「科学的発見や技術的発明を洞察力と融合し発展させ、新たな社会的価値や経済的価値を生み出す革新」とイノベーションを定義付けている。
 著者が参画するITコーディネータ協会の、次世代ITコーディネータ向け「イノベーション・プロセス・ガイドライン(IPGL)」における定義は、「イノベーションとは、社会実態や環境の変化を洞察し、多様な分野とITを融合させ、新しい概念や技術・プロセスを生み出し、市場・事業・サービス・組織等を創出することにより、社会や顧客に新しい価値を提供すること
 」である。
 このような定義からすれば、方法はどうであれ、あらゆる分野の新しい価値を生み出すことや活動は、全てイノベーションに含めて良いのではないだろうか。イノベーションの類型をまとめれば図のようになる。
図の下部は、既存市場の変革をどうするかを示しており、既存顧客の価値を既存製品・サービスの性能を向上させることで達成すること(新カスタマーバリュー)と、新たな製品・サービスの開発(狭義のイノベーション)を行うことで達成される。
 図の上部は、新たな市場をどう作り出すかを示しており、新市場開発(ニューライフバリュー)と、技術革新・新顧客開発(クリエーション)で達成される。・・・>申し訳ありませんが、この続きは本誌でご覧ください。

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