政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


覆面座談会「日本のものづくりと組込みソフトウェアの将来は?」

――組込みソフト業界も結局、人の派遣業が主流です。そこには、いくら開発してもソフトウェアのノウハウが溜まらず、産業の強さになっていかない構造がある。
A それはボッシュとインド企業との関係と同じだ。誰が著作権を持つのかと言うと、発注元です。全体の構造を作る1%の人と、プログラムを作る人との違うのです。ハードがおまけの時代にソフトウェアを外注していたら大変なことになる。
B 派遣は基本的に時間を売っている、ボディショップだから契約上、権利行使ができない。
C 日本の人材派遣ビジネスは、その派遣社員が何をやっているかは問題ではない。大過なく時間を過してくれればお金が落ちるビジネスモデルだから、おおよそソフトウェアを財産とする感覚は今後も全く育たないでしょう。
A 例えば、私がソフトウェアを作るために毎年派遣会社に1億円払ったとして、10年経ったら10億円使っても、私には製品しか残らず、ノウハウが全く残らない。やはり内製化しないと人は育たないでしょう。
―大企業には発注する側だから、制御設計できる人材はいるのでは?
B それがいやらしい形になっているのだ。確かに研究所には、ソフトウェアを自分で実装するところまで一括でやれる人はいる。しかし事業部はいかに生産性上げてコストを下げるかだけしか考えていない。
大会社ほど設備を持っていて、それのコストが上積みされるので、社内人件費を使うと相当高いものになってしまう。大手ほど社外の人を使いたがる。
社内の内製化でソフトウェアを作るのは日本では無理です。だから外注となるのです。
大手製造業はエンジニアリング子会社をもっている。そこには、設備がないから人件費コストが安く、給与体系も変えて一旦、そこへ頼む。
そこも子会社だから人数を増やせないため、また外へ外注する。そうしていくうちにエンジニアリング子会社はソフトを作る会社から、ソフトウェアの外注を発注する会社に変わってしまうのだ。
A 電気大手のT社はうまくやっていた96-7年頃のCD-ROMやDVD、テレビのチップセットをLSI化して相当儲かったと思います。しかし、技術が伝搬して行ってLSIも特許をとらなかったため、数年後には台湾勢に負けてしまったのです。
台湾のビデオテックなどはCD-ROMのプリント板の数字まで同じコピーをしていたのに、それをT社は訴えなかった。いまや訴えられたら台湾政府が困るような大手企業に育ってしまいました。
B T社はすべてがお客さんのような状態で、訴えにくかった面もあります。
最近は、韓国のS社のスマートフォンの技術力が高くなってきて日本メーカー
では追いつけないレベルになってきている。あそこまで投資を集中していろいろなことをやられると追いつけない。
A 彼らはグーグルのファーストTerになってやっている。アンドロイド開発者が200名だとすると、S社は300名送り込んで最先端開発に取り組む。
例えば、日本のP社の携帯部門ではそれほどの取り組みはできない。S社はトップダウンでテレビや携帯は共通で使われる製品だから本社マターで取り組んでいる。それは全てソフトウェアのためなのだ。
B 昔、CDMA1を作ったときのチップセットを作ったが、その時のテスターはT社がやっていて、新製品が出ると、まずT社に持ち込まれ、無料でテストされ、テストレポートが残される。
それをベースに先にチップを作り、輸出製品用として中国の工場で作らせ、儲けていた時期もあった。10数年前の話です。
そのあと、いま、ネットのG社のアンドロイドが進歩すると、韓国のS社に持ち込まれ、テストされバグを直してリリースされていく状況だ。もう勝てませんね。
ですから携帯はハードウェアに関しては繊維産業と思うしかない。あとは、そのプラットフォームを使って、どういうビジネスモデルが組めるかを考えるしかない。
これから変わっていく可能性があるのは、電気用品安全法の中に「IECとの国際標準との整合性をとっていく」とある。その中には必ず、ソフトウェアに関する記述が載ってくる。ソフトウェア制御に関しては、JIS分析をして安全な設計であることが、一般要求事項に入ってくるとだいぶ違ってくるかなと思う。でも時間はかかる。
A ソフトウェアは仕組みづくりが極めてやり易い。自然法則と違う視点が重要だ。
B ビジネスモデルを作るということは「ルールを設計出来る能力」が最も重要なのです。メカは自然法則の呪縛からは絶対に抜けられない。ソフトウェアは唯一、自分でルールを決めて、勝負が出来る、製造業の中にいてそれを担っているはずなのだ。ビジネスのことを考えていければ、新しいビジネスモデル、世の中の仕組みを考えられるはずだ。
逆に企業人が産業構造を変えられるチャンスなのです。しかし、産業構造を変えるというのを国がやるのが一番早い。海外の先進国は、ソフトウェアに関連する領域が構造改革やイノベーションのために重要だという認識を持っている。日本はそこの認識が甘い。役所にも大学にも本当に組込みソフトウェアを知っている人はせいぜい20名くらいしかいない。
C そのため、私は2000年あたりから「教育」のために外部に出始めました。10年経ち、一番熱心に勉強していたのは中国、韓国、タイなど人たちでした。

国家プロジェクトとソフトウェア

A いつも私はソフトウェアの国家プロジェクトを作るべきとNEDOに言いましたが、「ソフトウェアではなかなか予算がつかない」と言われました。
EUは今、フレームワークというソフトウェアプロジェクトに3000億円つけています。米国も中国も似たようなプロジェクトに多額の予算を投入しているのに日本はゼロです。
産業構造がいまソフトウェア・リッチに変わってきている。これは100年に一度のチャンスだ。1回目は1780年イギリスの産業革命、第2回目は1880年頃のドイツの重化学工業では、競争力が全く変わってしまった。それ以来の競争力の変化の時期だ。
組込みソフトウェアがなかったらアジアの経済成長はなかっただろう。産業革命は馬が蒸気機関に代わった。第2次革命では、基礎科学の成果を使い、新しい化学物質や薬品を作った。物理体系の中であった。
今回のソフトウェアの革命は人間が勝手に作った論理体系が基本にある。人類史上、画期的である。人が産業構造を変えられることが可能になった。アップルやグーグルがいまそれをやっている。
特定の個人やグループの意志が産業構造を徹底的に変える仕組みを作った。その意味で強烈だ。競争力が変わったのを知らないとすぐに負けてしまう、インパクトがある。
欧米やらが組込みソフトウェアに膨大なお金を投入する意味は、国際的分業構造のため、つまり組込みのためです。自分たちで全てやるのではなく、アジアにハードを任せ、自分たちはあるメカニズムでハードをコントロールする仕組みを作る、簡単にいうとそういう話だ。
いまITの世界は、上位のレイヤーの新しいアイデアの組み合わせ、知恵の組み合わせでいろいろなビジネスができる世界となっている。つまり、人間が考えることで、仕組みが生まれる状況にある。ものづくりとは全く関係がない。
ものづくりは古くなっていて、ITの知恵の組み合わせの方向にものすごい勢いで変わってきている。
B 昔、新しいアイデアを思いついて、それを実現しようとすると工場を建てて生産まで.数年もかかり、売り出すといった時代があった。いまやアイデアがあるとITを使い、1週間後にはインプリメントしてビジネスができてしまう時代なのだ。
A ですから投資に対する需要、生産が変わる。経済モデル、法則、理論が全く変わるわけで、既存の知識体系では通用しない。ソフトウェアのインパクトは強烈だ。それにしても数千億円を使えるようなプロジェクトや組織が日本にも必要だ。
     完
(これまでご愛読有難うございます。この覆面座談会1-5の議論の全てを読みたい方は弊紙までFAX03-3341-1379までお申し込み下さい。第1回目から5回までをPDFで提供します)

 

 

 

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