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高梨智弘の新経営教室 イノベーション(4)

新連載・ナレッジ講座4
日本的経営が見直される

高梨智弘

髙梨智弘

新潟大学大学院技術経営研究科特任教授
日本総合研究所フェロー・公認会計士
髙梨智弘

ポイント:
① 新しい時代(ナチュラルタイムズ)の要請に合わせたイノベーションが必要だ。
② 世界を驚かす技術革新だけがイノベーションではない。プロセスイノベーション、ビジネスモデルイノベーション、日本的経営イノベーションが再度見直され、これからは、「アテンションイノベーション」と「イシイノベーション」が日本復活の鍵を握る。
③ 大企業や開発型企業だけでなく420万社の日本企業が、イノベーションの対象である。
④ イノベーション能力は、教育によって向上できる。

1.時代が変わった!(第1回)
2.真実は価値基準の変化!(第1回)
3.狭義のイノベーションと広義のイノベーション!(第2回)
4.日本復活の鍵となるイノベーションとは?(第3回)
5.イノベーションを起こす価値基準の本質は?(第4回)

今、イノベーションには「知の経営」が必要とされている。人が全ての経営システムの対象になっている以上、経営全体を俯瞰できる経営概念であること、また良い経営のナビゲーターであることが重要な成功要因である。
それは、「人にとって良い経営」であるという考え方で統一された新たな経営論理を提案していることが、社会から問われているのである。激しく変化する環境に合わせるためには、必要十分なあらゆる知を結集しなければならない。
したがって、新しい知の経営の企業行動基準は顧客満足(CS)を目標とした知識基準に止まらず、より広く利害関係者満足(SS)、言い換えれば、人ベースであり、究極は生活者満足(LS)を目指した実践力基準になることが必須と言えるだろう。それは、戦後半世紀の「もの作りベースの品質基準」一辺倒からの決別を意味し、新しい世紀の知の社会における「人作りベースの価値基準」への転換を意味する。
「人作りベースの価値基準」は、日本が必要とするイノベーションを顧客の視点から、生活の視点から多様な知を結集することを要求する。

1. 人づくりは、イノベーションを生み出す。

図1にあるように、あらゆるイノベーション・プロセスに、多様な人の知の結集が必要である。

KS12月1日8面2

図1
人づくりは、イノベーションを生み出す

つまり、固定観念の払拭、発想の転換ができる人づくりが基本となる。

特に、経営者は、既知の事象をベースに「リーダーシップを発揮する」のではなく、未知の事象に怯まず「皆が進んで知を発揮できるように、コラボレーションの雰囲気を醸成し個の能力を開花させろ!」と言わなければならない。
イノベーションは、経営者にも管理者にも従業員にもチームにも、それぞれの知を活性化することで起る。
それらをより効果的にするのが、多様な経験を持った個々人のコラボレーションである。したがって、知の活性化は、縦割りから横割りへ、縦割りと横割りが交差する自由で柔軟な知の共有ができる仕組みが保証されていなければならない。それが出来てこそのイノベーションである。

2.イノベーション・クラスター

KS12月1日8面3

図2
人財の集まりが星団クラスターだ

コラボレーション(Collaboration)とは、自分と相手と共同する1対1のコオペレーション
(Cooperation)では足りなく、より自由に多様な知を共有し、新たなモノに気づく喜びを協感(共感では、基本は1対1で感じることであり、より多くの人々を巻き込むことで効果が上がる)し、各人が感動することでイノベーション・プロセスが始まる。
したがって、決まった手続き・ステップ等を正確に実施する事から生まれるのではなく、目標の有無に拘わらず、多様な一見バラバラに見える知の交流から、星くずが集まって星座としての意味をなすよう、知の結集が多数の顧客や社会が認める価値を生み出す。それこそがイノベーションのプロセスである。

イノベーション・クラスターとは、「その組織の中で最適な人財が集まり、イノベーションの種が芽を出し育つように多様な知を結集する個が自由に発想できる意識の融合体である」。つまり、イノベーティブ人財のチームを、星くずの集まり(星団Star Cluster)と考える。
クラスターは、ここでは人の知の集まりを意味する。その星(=人の知)を結びつけることで、星座(=イノベーション)が現れる。つまり、知の結合がイノベーションを起こす。
このイノベーション・クラスターは、「人づくりの価値基準」に基づいた企業文化や経営者の支援、柔軟な経営体質によって飛躍的に効果が上がる。

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