政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


あの「上質サービス企業」はいま?

岩佐実次

(株)リソー教育 代表取締役会長
岩佐実次氏
<いわさ みつぐ> 昭和24年滋賀県生まれ、早稲田大学文学部卒、会社員を経て、60年(1985年)日本教育公社(現リソー教育)設立。平成13年(2001年)東証2部上場、翌年(02年)に1部上場へ昇格。平成20年より代表取締役会長。

個別指導学習塾で28期連続増収を続けるリソー教育岩佐会長に聞く

2005年弊紙が経済産業省と共同で取り上げた「上質サービス企業」がいまや、各業界のトップ企業に成長している。景気に左右されない強い企業に見出せるのは、①経営理念の徹底追求、②CS(顧客満足度)を得るための従業員教育、③ITの徹底した活用による効率化などだ。「TOMAS」のブランドで知られるリソー教育にもあてはまる。常識破りの個別指導「塾」を成功に導いた経営術を岩佐実次代表取締役会長に伺った。

株式会社リソー教育
「生徒の個性・個人差は千差万別。その個人差に的確に対応できる教育こそが本物の教育であり、理想の教育である」を理念に、個々の生徒の学習速度に応じて作成したオリジナルカリキュラムに基づく教科別講師一人が生徒一人を教える1対1の個別指導方式のトーマス(=TOMAS)を全国で直営する。小学生、中学生、高校生を対象とした学習・進学指導を行っている。(株)日本エデュネット、(株)名門会、(株)伸芽会、(株)リソー教育企画の4つの子会社を含めたリソー教育グループを構築し、『人間総合生活情報サービス業』の確立を目指している。

――1990年、塾業界の常識だった集合指導を覆し、教科別に講師一人が生徒一人を教える1対1の個別指導方式を始めた。きっかけは何か。

岩佐 いまから30年ほど前、日本における出生率の低下が社会問題として注目され始めた。その頃僕は、当社の前身である株式会社日本教育公社を設立しました。その頃会社では、1クラス6名を限度として100%正社員講師による指導体制を目指していた。しかし、少子化が進むと学生が減り、塾の経営に影響することは明らかだ。5~10年後には潰れるかもしれない。「このままではいけない」という危機感があった。
個別指導方式のヒントになったのが、中国の一人っ子政策だ。一人の子供に親がたくさんのお金を投じる。授業料は高くても授業の質こそが大事なのではないかと思った。教えるのは、時給千円で雇われているいい加減な塾講師ではない。学力的にも人間的にも質の高い教師を選び育成する。
ところが、社内で提案するとみな猛反対。1980年代後半~1990年代前半は団塊ジュニア世代の受験競争真っ盛りで塾が乱立し、業界はそれなりに潤っていたからだ。
少子化が進んで塾業界は共倒れになる、と主張しても聞き入れてもらえない。当時の経営陣は僕を理想主義者だといった。「個別指導なんて儲かるはずがない」「その証拠にどこの塾もやっていない、経営がわかっていない」と。だが僕は何度自問しても、同じ結論に達した。諦めず社内で一人一人を説得した。25人くらいの小さな会社だったがその結果、幹部は5、6人辞めた。社内は分裂し、倒産の危機に瀕した。ただ、踏みとどまってくれた人がいるからいまがある。
個別指導方式には自信があったが、最初はうまくいかなかった。当社独自の「完全個室(全室黒板付)の1:1の個人教授システム」と銘打ってスタートしたのが1990年3月。しかし、マンツーマンを親に理解してもらえない。進学実績にも乏しい。営業部門は大苦戦を強いられ、生徒数は損益分岐点である80名を下回っていた。私が陣頭指揮をとって研修を行い、営業部門を鍛えたが、間に合わず、外部からも人材を募集した。そこでたまたますごく優秀な社員と出会った。求人広告のポスターを見たという。そのポスターには、中野の哲学堂公園で飼い犬を散歩させる僕自身の姿を使った。普段着で撮られるのは最初断ったが、「社長の素の姿を知ってもらう」と発案者である就職情報誌の大手企業の女性社員が強く推した。それが当たったのだろう。広告を見て優秀な営業社員が集まった。彼らの働きで間もなく生徒数が3倍近い250名に増えた。会社の業績が伸び、2000年に株式を店頭登録、3年後には東証第二部上場を果たした。事業はつくづく人と人の関係で成り立っていると思う。自分一人では何もできない。人を大事にしないといけない。

――2004年に社員規模200名程度だった企業が、いまや売上高230億円、グループ合計で従業員500名以上の大企業に急成長した。常に守っている信条は。

個人教授システム

いち早く完全個室のマンツーマン、個人教授システムを確立した。

岩佐 「有言実行」だ。誰もが知っていることをやり抜く。たとえば、企業の社長さんが「会社は人材だ、企業は社員で決まる」と言う。それを裏付ける行動が果たしてあるか。
リソー教育では、社員が会社に貢献してくれたら早く評価する。昇級、昇給は年に一度ではなく、月単位で行う。その分、人事はたいへんだが、頑張った人ほど早い評価を期待している。僕も若い頃そう思っていた。ウチの会社は力がある人が頑張ってくれるような制度にしている。
手当のうちでは家族手当と出産手当を大事にしている。子供を3人、4人と持っているとやりくりがたいへんだ。だが国が掲げる出生率の向上に貢献している。会社として後押しするのは当然だ。ほかにもうちの会社では、たとえば、社員の奥さんの誕生日にはプレゼントとして商品券やお花を贈っている。女房を大事にしてくれる会社を嫌がる社員はいない。
一方で、高齢社員の処遇を若手はひそかに見ている。邪魔者のように切り捨てられる会社でいつまでも頑張る気持ちにはならないだろう。長く会社に尽くしてくれた人には、最後まで会社が面倒をみると僕は言っている。いま最高齢は70歳になる常勤監査人だ。僕より2つ上の66歳の社員も顧問として頑張ってもらっている。会社に貢献してくれたからだ。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">