政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


高梨智弘

新潟大学大学院
技術経営研究科特任教授
日本総合研究所
フェロー・公認会計士
髙梨智弘

新連載・ナレッジ講座5

ポイント:
① 新しい時代(ナチュラルタイムズ)の要請に合わせたイノベーションが必要だ。
② 世界を驚かす技術革新だけがイノベーションではない。プロセスイノベーション、ビジネスモデルイノベーション、日本的経営イノベーションが再度見直され、これからは、アテンションイノベーションとイシイノベーションが日本復活の鍵を握る。
③ 大企業や開発型企業だけでなく420万社の日本企業が、イノベーションの対象である。
④ イノベーション能力は、教育によって向上できる。

1.時代が変わった!真実は価値基準の変化!(第1回)
2.狭義のイノベーションと広義のイノベーション!(第2回)
3.日本復活の鍵となるイノベーションとは?(第3回)
4.実践力体系における企業行動基準の本質は?(第4回)

5.日本的経営の見直しがイノベーティブ人財を育てる(第5回)

イノベーティブ人財の定義は難しい。次世代ITコーディネータの養成を始めているITコーディネータ協会IT経営研究所による検討案は、「イノベーション(社会実態や環境の変化を洞察し、多様な分野とITを融合させ、新しい概念や技術・プロセスを生み出し、市場・事業・サービス・組織等を創出することにより、社会や顧客に新しい価値の提供すること)を主体的に担いうる人財である」としている。
イノベーションを起こすには、イノベーションプロセスの本質に迫る必要がある。

1. 本質的考察:
① 失敗の考察 ~イノベーションに失敗はない~
イノベーションプロセスに失敗は無い、なぜならば、「失敗は発明の母!」と言うように、イノベーション実現の成功要因だからである。もしあるとすれば、失敗は、成功のステップアップに資する「積極的失敗」でなければならない。
但し、結果としての特に事業化フェースでの成否は、変化するマーケットでの競争条件により大きく影響される。したがって、従来のようにイノベーションをアイデアの創出等の前段階に限定せず、「イノベーションの姿勢と方向性の確認フェーズー価値発見フェーズー価値設計フェーズー価値実証フェーズー価値実現フェーズ」(「図:イノベーション経営プロセス」参考。特定非営利活動法人ITコーディネータ協会が開発したイノベーション実現プロセス)のように、イノベーションの時間軸を広くとり、顧客価値・社会価値の実現まで、執拗に知を結集することが成功に結びつく。

② 「聞く」から「聴く」へ
イノベーションのためには、多様な知を結集する必要がある。過去の成功体験・失敗体験
が人の意識や行動に少なからず枠をはめている。イノベーションの成功要因である人の暗黙
知を表出化するために、積極的傾聴(Active Listening)が重要である。
多様な相手の知を発信してもらうためには、対話による納得・質問・確認・信頼・誘引・
結合・共感等が成功要因となる。積極的傾聴のベースには、特に自由な発想による個人の意
識向上が前提となっている。

2.日本的経営の見直し:
時代は、日本的経営の進化を要求している。日本的経営の良さは、現場の力である。
それは、従来の終身雇用、年功序列等の日本的制度に支えられた村社会的(内向きの)
チームワークであった。もちろん、今でもその良さは、多かれ少なかれ残っている。
しかし、予想を遙かに超えた社会・経済環境の変化が、新たな価値観を創出した。そ
れらは、日本的経営を否定するのではなく、進化させると考えるべきであろう。
① 同質をベースとした村社会的協力関係を、多様性をベースとしたチームワークに変
容させることで、新たなアイデアを生み出す協働のイノベーション・クラスター(外向きの)とし、イノベーションを惹き起こす。
② 日本の村社会的なチームワークは、力を発揮する。個人を基本に考えればチーム内
でのオープンさが成功要因であった。これを広げて、多様なリソースを組織の内外から集めるオープンさが、イノベーション時代に必要とされる。
③ イノベーションを誘起させる責任者(特に経営者やイノベーティブ人財)は、自ら
の変革を進んでしなければならない。トップのイノベーションへの前向きな態度は、難しいイノベーションに対する従業員の士気の低下を止めやる気に繋がる。
④ 仲間を大事することは助け合いであり責任を取らないことに繋がり、結果として問題の
放置に繋がる。新しい日本的経営(外向きの)によるイノベーションでは、責任を明確化した加点主義が重要であり、また「あきらめない」ことがキーワードになる。

3.イノベーティブ人財:
イノベーションを起こすためには、経営者には、既知の事象をベースに「リーダーシップを発揮しろ!」ではなく、未知の事象に怯まず「皆が進んで知を発揮できるように、コラボレーションの雰囲気を醸成し個の能力を開花させろ!」と言いたい。
イノベーションは、経営者にも管理者にも従業員にもチームにも、それぞれの知を活性化することで起こりうるが、それらをより効果的にするのが、多様な経験を持った個々人のコラボレーションである。自分と相手と共同するコオペレーションでは足りなく、より自由に多様な知を共有し、新たなモノに気づく喜びを協感(共感では基本1対1で感じることなので)し、各人が感動するプロセスである。したがって、決まった手続き・ステップ等を実施する事から生まれるのではなく、目標の有無に拘わらず、多様な一見バラバラに見える知の交流から、星くずが集まって意味をなす(星座)ように、多数の顧客や社会が認める価値を生み出すことこそがイノベーションのプロセスである。

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