政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


二上貴夫

東陽テクニカ
ソフトウェア研究部技術主幹
二上貴夫

仕事でイリノイからやってきたアメリカ人がラジコン操縦できる飛行体オモチャを持ってきてくれた。筆者が飛ぶモノ大好き人間と知った上でのクリスマスプレゼントであった。
3cmほどのプロペラが付いた小型モータ4つが四隅15cmほどの所にあって、中央には電池とラジコン機能やジャイロセンサが搭載されている。さっそく友人の指導の下に充電して飛ばしてみた。2年前にも類似の手のひらヘリコプターに挑戦したことがあったが、筆者のような鈍感オヤジにはとても安定して飛ばせるような代物ではなかった。飛ばすというより跳ばす感じで、壁にぶつかっては墜落するばかりだった。
ところが、今回の“クアッドコプター”と呼ぶらしいこいつは、スロットルを開いて離陸させたあとも安定上昇した。横に滑って操縦者をあわてさせる気配などまるでない。高度1mでちょっと舵を打つと、その方向にスーッと動く。なんとも驚くべきことに筆者が飛ばせたのである。
もちろん、こちらの操縦技能が進化したわけではなくて、搭載センサ、制御ソフトウェア、推力系のすべてが数年の間に進歩した結果だ。そして、価格は50ドル以下という。オモチャとしては秀逸の出来具合であった。実は、このオモチャには大変なノウハウが詰まっている。ソフトイノベーション
MEMSジャイロと4軸飛行制御モデル、低消費電力プロセッサと電力制御LSI、高性能Li電池と充電アルゴリズム、無線ペアリングとリアルタイム遠隔制御に加えて機能安全性などなど、どれをとっても、それぞれの領域の最近の成果のてんこ盛りだ。
さて、今年の日本は、オリンピック決定を受けて様々なプロジェクトが動き出す年でもあり、昨年の薬事法の改正法が施行される年でもある。この年にクワッドロータのような素晴らしい応用が医療、健康、スポーツといった分野に適用されたら何が起きるのだろうか?
マラソン大会で自分の状態を見ながら走れるのなら、熱中症や脱水状態で無理して倒れる人はいなくなる。健康のための不健康を抑止するシステムの開発は多くの人に受け入れられるだろう。現在のところ、ここまでの診断をリアルタイムで行えるシステムはないようだが、日本の技術と海外の技術の組み合わせがこうした問題への対処を可能にするはずだ。
たとえば、http://panasonic.jp/health/ata/#top などは、その良い例だと思う。実は、娘の勧めで私も家内もすでにアディダス社の専属トレーナの指導をデジタルテレビ経由で受けながら健康維持を図っている。
これからの電子技術応用産業の成功パターンは以下のように要約できるかもしれない。
a)基礎原理がモデル化できるテーマを探す(専門的研究の深さが勝負)
b)テーマを示すモデルのビジネス可能性、拡張性を検討する(先見性が必須)
c)モデルを作る(理工学を越えた能力が必要)
d)モデルが現実に動作する実験を行う(3Dプリンタを始めとした試作技術が必須)
e)ビジネスとして展開するための一般的手順を開始する(いわゆる起業)                                 となる。
e)の起業は資金集めが難しいことから日本は不利なままだが、社内ベンチャーという仕組みのある日本は他国より有利な面もある。しかも基礎原理のモデル化から実用実験にいたるまで大方の領域を実践できる国は、世界中を見回して多くはない。このチャンスをうまく生かせるか否かが業界・実体経済の正否を決めるだろう。
4軸ロータの見事な飛行を見ながら、このプロペラモータ系が電動自動車の4輪モータとタイヤに応用されたら何が起きるだろうかと考えてみた。たぶん、モータとファラデーの法則という原理に立ち返れば、走行中のモータを電子・電気的に制御し、十分に強力な負の加速度を発生できるだろう。いわゆる「摩擦で止めるブレーキ」の置き換えになる。これはa)の夢の一種といえる。今年中に正夢になるとは思えないが、この記事を読まれた方に発案法のヒントになれば幸いです。

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