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スーパー水素

液体に蓄えるので水素が楽に持ち運べる

クリーンな「水素サプライチェーン」始動

燃やしてもCO2を全く出さない、究極のクリーンエネルギー「水素」。それを液体化して500分の1の体積にする、日本発の「水素エネルギー供給チェーン」が京浜工業地帯で動き始めている。そこで、このプロジェクトのリーダーである、千代田化工建設の白崎リーダーを訪ね、実際の横浜市子安にあるデモプラントを見ながら話を聞いた。

聞いた人 千代田化工建設
水素チェーン事業推進ユニット セクションリーダー
白崎 智彦 氏

「水素にトルエンを固定化すると、メチルシクロヘキサン(MCH)という液体になります。そして水素の体積が500分の1に縮減でき、常温常圧で扱いやすく、とても安全な液体となります」。
軽くて輸送貯蔵に難のあった“水素”が長距離輸送や長時間貯蔵も可能となるこの液体を、同社では「SPERA水素」と名付けた。ラテン語で「希望」や「輝き」という、未来に輝くエネルギーという意味が込められている。水素サプライチェーン
500分の1ということは、同じスペースなら500倍の水素を蓄えておくことができる。これはエネルギー・イノベーションだ。液体の状態から水素を取り出すのも、千代田化工が開発し特許を取得した高効率長寿命の触媒と、300-400度の熱があれば、安定して効率よく水素が取り出せる。
従来の極低温や高圧設備が必要なく、蒸発もしないし、液体なので安全だ。マイナス100度から摂氏100度の間は凍らない。これを日本オリジナル世界初の『水素エネルギー供給チェーン』にしようと、今横浜・京浜地区でプロジェクトが動き始めている。
「まず、海外の石油ガス産出国などで大量に生まれる副生水素を、トルエンに化合する水素化プラントを建設する。そこで出来たSPERA水素をタンカーで需要地に運ぶ。そこで脱水素プラントで水素を取り出して、まずは京浜工業地帯に集積する石油精製や石油化学等の既存の水素需要家の方々に供給させて頂きたいと考えています。また、並行して水素混焼発電所の併設についても検討中です。将来は、SPERA水素をそのまま燃料電池車用の水素ステ―ションに運び込み小型の脱水素装置で車に供給したり、同様に分散型の水素コジェネに供給したりする一気通貫の水素サプライチェーンを構築していきます」。
しかもそのトルエンはほぼ100%回収して、まるで容器の様に半永久的に再利用されるので、まさに理想的で無駄のない、低コストのエネルギーチェーンが出来るのだ。
京浜向けの水素供給事業計画は、実現すれば、8万N立方㍍/時、年間量としては6億4千万立方㍍。発電効率50%のガスタービン発電換算にして10万キロワットの発電所に相当するエネルギーが生み出せる、そうだ。
「これからSPERA水素を需要家向けにお引き取り頂く価格体系を構築していく予定です。石油精製の工程では分解や脱硫で水素を大量に使いますが、原料費が振れることによる水素価格の変動には大変敏感です。我々は1N立方㍍当たり30円位を目標にしていて、変動要素の少ない安定した水素源になれるよう努力していきたいと考えています」。
このサプライチェーンでは、常温常圧の液体を扱うので、新型の難しい装置や重厚なインフラは必要なく、既存のインフラシステムをそのまま使えるのが特徴だ。また、今後水素エネルギー市場が成長して水素がLNGや石油並みの大型船で運ばれるようになったり、300℃以上の熱を必要とする脱水素に発電で出た排熱が使える熱電水素併給型のコジェネ装置の開発が進んでくれば、将来はもっと効率が良く生活の末端まで行き届いた水素サプライチェーンの構築が可能になる。
「このチェーンの投資額は数百億円程度と見込まれます。脱水素触媒は、多孔質の担体に白金をナノレベルでまぶしてあるのが特長で、当面は技術優位性を保つことが出来ると考えるので、このリードタイムを利用して水素供給事業や水素発電事業を先行して進め、水素利用分野の開発を精力的に進めていきたいと考えています。」わが国はエネルギー源の『多様化』を図り、コストを下げることが大命題だ。水素を2次エネルギーとして大量に保存しておけるこの「SPERA水素」が必ず切り札になってくれると期待したい。
この水素エネルギー供給チェーンは2015年度中には稼働する予定で、議員連盟による研究会も動き始めている。水素の産出国は近ければ近いほど、コストが低く抑えられ、かつ将来はあらゆるエネルギーを水素に転換できることから、エネルギー安全保障上は供給源の多様化にもおおいに役立つ。CO2削減の切り札になり得ることも忘れてはならない。
2014年のエネルギーの新しいキーワードにこの大量保存できる「SPERA水素」が浮上してきそうだ。

貯蔵タンク

貯蔵タンク

脱水素触媒

脱水素触媒

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