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まず、福島原発の徹底検証を

住民の命、健康、安全を守るのが知事の役割強調メルトダウンした場合の災害対策が不十分であり、今、再稼働はありえない

10日、東京大学公共政策大学院の主催による、公共政策セミナー「原子力を考える-グローバルな視点と地域の視点」が開かれ、泉田裕彦新潟県知事と田中伸男同大教授(前IEA事務局長)のパネル討論が行われた。コメンテータとして、澤昭裕21世紀政策研究所研究主幹も加わった。

原子力をめぐる議論は、ともすれば感情に流れた議論になりやすい。短期的には原発再稼働問題、中長期的には核燃料サイクルを含む日本のエネルギー政策の根幹にからみ、答えは簡単には出ない。今回のセミナーでは、様々な視点からタブーを排したオープンな議論が展開された。
まず、冒頭は田中教授より、エネルギー安全保障の観点から、現在のエネルギー政策の進め方に疑問が提起され、「エネルギー政策は、海外の資源エネルギーの実情を見て考えるべきが、国内事情だけでエネルギー・ベストミックスを考えているのはナンセンス」と批判、米国のシェールガス革命により、1BTU当たり2-3㌦の安価なガスによる製造業復活をもくろむ米国に対抗するには、同18㌦のLNG輸入・中東依存を改め、「ロシアからのパイプラインによる天然ガス導入によるコスト削減を図るべきだ」という意見に、3者とも同意した。
次に、原発の再稼働について、泉田知事は「まず、福島第1原発事故の徹底的な検証が必要だ。巨大な組織、先端プロジェクトであればあるほど必要不可欠だ。米国のチャレンジャー号の爆発事故の検証のような、ハード、組織、意思決定、人材、ガバナンスなど含めた検証をするのが文明国の責任である。
自治体のトップは住民の命と安全と健康を守るのが使命だ。原子力規制委員会の田中委員長に『住民を守る安全基準』について、新潟から質問状を送っているがいまだに返事がない。責任を回避されている。それなのに、東電は世界最高の安全基準を作ったから安全なので、再稼働して欲しいと言ってくる。あり得ない」と断言した。
さらに同氏は「中国やフランスの原発は、メルトダウンしても燃料が冷やせ、大事故にならないように原子炉の下に水を蓄えたコア・キャッチャーを備えている。日本の原発にはそれはついていない。言うなれば、線香花火を素足の上で行っているようなものだ」と断罪した。
「福島原発は『冷却材喪失事故』であり、同じようなことが起きれば原発は20時間以内にメルトダウンが起きる。その時の高濃度放射能事故に対応する特殊部隊や消防体制を持たずに、再稼働するというのは疑問だ」。
田中教授も「テロによる原発事故を規制当局が想定していなかったというのは大きなミスである」と指摘していた。
さらに、泉田知事は「中越地震の時、トップとして柏崎刈羽原発の状況をホットラインでつかもうとしたら、その部屋が地震で壊れ、結局、東京の東電経由で原発の状況をつかむしかなかった。そこで、免震重要棟を東電に督促し、その後しぶしぶ作って頂けた」。
福島原発にも必要と訴えたが、中々作られず、完成したのは3月11日の8カ月前であったと明かした。また現在の原災法と防災対策基本法が2重になっており、いざいという時に機能しなくなる恐れを指摘、運用の一元化を求めていた。
田中教授は「周辺の中国、韓国、東欧、アラブ諸国など、皆、原発をこれから導入しようとするとき、日本が脱原発となるのはエネルギー・セキュリティ上、危険である。高速増殖炉では、IFRという、パッシブセーフティーな炉が検証されつつあり、使用済み核燃料も燃やせるし、放射性廃棄物も300年のスケールで考えられる。よりエネルギーの選択肢を増やしておくべきだ」と述べた。
澤氏は「エネルギーはポートフォリオとコストのバランスで決まる。私は原発推進ではないが、このまま原発が動かなくなると、メンテナンスや廃炉にしても人材が集まらなくなり、自然に消滅してしまう。それでも良いのか?」と述べた。
奇しくも3人元経産官僚によるパネルとなったが、原子力におけるオープンな議論がわかり易く、エネルギー政策がまとまるタイミングでもあり、国民とともにより冷静に議論をして行く必要性を感じた。

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