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新連載・ナレッジ講座6

新潟大学大学院技術経営研究科特任教授日本総合研究所フェロー・公認会計士髙梨智弘

新潟大学大学院
技術経営研究科特任教授
日本総合研究所
フェロー・公認会計士
髙梨智弘

ポイント:
① 新しい時代(ナチュラルタイムズ)の要請に合わせたイノベーションが必要だ。
② 世界を驚かす技術革新だけがイノベーションではない。プロセスイノベーション、ビジネスモデルイノベーション、日本的経営イノベーションが再度見直され、これからは、アテンションイノベーションとイシイノベーションが日本復活の鍵を握る。
③ 大企業や開発型企業だけでなく420万社の日本企業が、イノベーションの対象である。
④ イノベーション能力は、教育によって向上できる。

1.時代が変わった!真実は価値基準の変化!(第1回)
2.狭義のイノベーションと広義のイノベーション!(第2回)
3.日本復活の鍵となるイノベーションとは?(第3回)
4.実践力体系における企業行動基準の本質は?(第4回)
5.日本的経営の見直しがイノベーティブ人財を育てる(第5回)

6.イノベーションの人的ハードル(第6回)

第5回でイノベーティブ人財を育てることの重要性を述べた。しかし、ほとんどの企業では、なぜイノベーションが思ったように起きないのか? たとえば、何もアイデアが浮かばない、人財がいない、また、こんなに難しいと思わなかった、資金が掛かりすぎる等々課題は絶えない。
当然ながら物事を成し遂げるためには、越えなければならないハードルが存在する。特にイノベーションとなると、企業経営上のエキスパートや経験を積んだ管理者にとっては、そのハードルが高いことがある。彼らは、人的ハードルと組織的ハードルの境に位置するいわゆる組織人間(日々の経営を管理しなければならない)である事が多く、経営者であれ、管理者であれ、従業員であれ、個人人格と組織人格の狭間で葛藤するからである。
複雑な個人と組織と社会の関係については別な機会に解説することとし、本稿では、個人の資質について考察する。

知のピラミッドと知のギャップ

知のピラミッドと知のギャップ

人的ハードル例:
1, 適性に関するハードル
先天的適性及び後天的適性の個人的差が、イノベーションを起こすような状況では大きく影響する。
特に、後天的適性は、①社会、②組織、③個人の関係から多様な影響を受
けて形作られるため、それぞれの場での人財マネジメントが重要となる。
知のピラミッドの図に示したように、個人の知の能力には、「属人性」
があり、各人の知の質量の差、つまり「知のギャップ」が存在するため、
三層の知(知識・知恵・知心)のハードルを理解する必要がある。

2, 知識に関するハードル
記憶量の差を意味する。特に、通常の経営ではなく、イノベーション経
営を実施する場合に、慣れ親しんだ考え方や手法とは遠く離れた知識であ
ることが多い。まったく新しいアイデアや概念等が必要であり、人によっ
て大きな差があることを理解しなければならない。

3, 知恵に関するハードル
人の経験知の差は大きい。MITのピーターセンゲが主張する「学習する組
織」の5つのDisciplinesの一つが「チーム学習」であるが、著者はこの本質
は、自分では経験しなかったことを、即座に経験できる、つまり他者の経
験(時空を)を買うことであると思っている。どんなに高価でも手に入れ
たいモノ(=チーム学習に参加すること)である。
知恵もまた、他者が所有する経験知であり、引き出すことは難しい。

4, 知心に関するハードル
意識の差を意味する。人の意識や心は、適性を基礎として環境や教育、
また人間関係によって形作られるので、知心は、人の生き様、家庭環境等、
① 会、②組織、③個人の多様性に大きく影響される。
人の心を読み、共感することが必要であるが、暗黙知であるため、相手
を理解することは簡単ではない。議論ではなく、対話が重視される所以でもある。
イノベーション知の結集の場
人的ハードルをクリアーしてこそ、イノベーションを起こせることになるが、個々人がバラバラでは知の結集ができないことになる。そこで、イノベーションを起こすイノベーティブ人財の集合する場が必要となる。図では「知の場」と示しているモノで、実際は会議室(人が集まる場)、プロジェクト(専門家の集合体)、SNS(ネットでの知の交換)、グループ、諸団体等を意味する。

次回、第7回は、「イノベーション人財の適性とハーマンモデル」について考察する。(了)

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