政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


エネルギー自給率6.0%に下落
非常に脆弱なエネルギー供給構造

第1節 我が国が抱える構造的課題

1.海外の資源に大きく依存することによるエネルギー供給体制の根本的な脆弱

我が国は、国民生活や産業活動の高度化、産業構造のサービス化を進めていく中で、1973年の第一次石油ショック後も様々な省エネルギーの努力などを通じてエネルギー消費の抑制を図り、2012年の最終エネルギー消費は1973年の1.3倍の増加に留めた。
わが国では現状、ほとんどのエネルギー源を海外からの輸入に頼っているため、海外においてエネルギー供給上の何らかの問題が発生した場合、わが国が自律的に資源を確保することが難しいという根本的な脆弱性を有している。
こうした脆弱性は、エネルギー消費の抑制のみで解決されるものではないことから、わが国は中核的エネルギー源である石油の代替を進め、リスクを分散するとともに、国産エネルギー源を確保すべく努力を重ねてきた。
その結果、2010年の原子力を含むエネルギー自給率は19.9%にまで改善されたが、なお、根本的な脆弱性を抱えた構造は解消されていない。

2.人口減少、技術革新等による中長期的なエネルギー需要構造の変化

わが国の人口は減少に向っており、2050年には9707万人になると予想されている(社会保障・人口問題研究所)。こうした人口要因は、エネルギー需要を低減させる方向に働くことになる。
また、自動車の燃費や、家電の省エネルギー水準が向上しているほか、製造業のエネルギー原単位も減少傾向にあるなど、我が国の産業界の努力により、着実に省エネルギー化が進んでいる。
さらに、電気や水素などを動力源とする次世代自動車や、ガス等を効率的に利用するコージェネレーションの導入などによるエネルギー源の利用用途の拡大なども需要構造に大きな変化をもたらすようになっている。急速に進行する高齢化も、これまでのエネルギーに対する需要の在り方を変えていくこととなる。
こうした人口減少や技術革新等を背景とした我が国のエネルギー需要構造の変化は、今後とも続くものと見込まれ、このような変化にいかに対応していくかが課題となっている。

3.新興国のエネルギー需要拡大等による資源価格の不安定化

世界に目を転じると、エネルギーの需要の中心は、先進国から新興国に移動している。世界のエネルギー需要は、2030年には2010年の1.3倍に増加すると見込まれているが、需要増加の9割は非OECD諸国のエネルギー需要の増加によるものである。
エネルギー需要を拡大する中国やインドといった新興国は、国営企業による資源開発・調達を積極化させており、新興国の企業群も交えて激しい資源の争奪戦が世界各地で繰り広げられるようになっている。
こうした資源獲得競争の激化や地域における紛争、さらには経済状況の変化による需要動向の変動が、長期的な資源価格の上昇傾向と、これまで以上に資源価格の乱高下を発生させやすい状況を生み出している。中国の海外からの原油調達が急増し始める2004年以降、30ドル/バレル前後であった原油価格(日経ドバイ)は2008年夏には瞬間的に140ドル/バレルを超えるまでに急騰した。
その直後に発生したリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに深刻化した金融危機により、欧米を中心に需要見通しが大きく落ち込んだ結果、原油価格は40ドル/バレルを割り込むまでに落ち込んだが、現在は再び上昇し、100ドル/バレルを超える水準となっている(2014年2月21日現在 日経ドバイ106.80ドル/バレル)。
今後も、中東地域における政治・社会情勢や欧米、中国等の経済状況によって、原油価格に大きな変動が生じる状況が続いていくものと考えられる。

4.世界の温室効果ガス排出量の増大

新興国の旺盛なエネルギー需要は、温室効果ガスの排出状況の様相も一変させるに至っている。世界の二酸化炭素排出量は、約210億トン(1990年)から約305億トン(2010年)に増加した。特に新興国における増加が顕著であり、今では、世界全体の排出量全体に占める先進国の排出量の割合は、1990年には約7割であったものが、2010年には約4割に低下し、先進国と途上国の排出量の割合が逆転した。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界全体のエネルギー起源二酸化炭素の排出量は、2035年までに、さらに20%増加すると予測されている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書では、気候システムの温暖化について疑う余地がないこと、また、気候変動を抑えるためには温室効果ガスの抜本的かつ継続的な削減が必要であることが示されている。
地球温暖化問題の本質的な解決のためには、国内の排出削減はもとより、世界全体の温室効果ガス排出量の大幅削減を行うことが急務である。

第2節 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題

1.東京電力福島第一原子力発電所事故による深刻な被害と原子力発電の安全性に対する懸念

東日本大震災とそれによる巨大津波は、被災地域に甚大な損害をもたらすとと もに、電源喪失などにより原子炉を冷却できず東京電力福島第一原子力発電所の深刻な事故を引き起こし、周辺地域の住民が避難生活を余儀なくされる事態となり、未だに約14万人の避難住民が帰還できない状況が続いている。
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は、長い時間を要し、腰を据えた取組が必要となる。汚染水処理対策、使用済燃料プールからの燃料の取り出し、燃料デブリの取り出し、貯蔵施設の確保と厳格な保管など、技術的に多くの困難が伴う取組であるが、官民を挙げて、かつ、世界の叡智を集め、一歩一歩着実に進めていかなければならない。
東京電力福島第一原子力発電所の事故は、過酷事故への対応策が欠如していたことを露呈した。いわゆる「安全神話」に陥ってしまったことや、被災者の皆様を始めとする国民の皆様に多大な困難を強いる事態を招いてしまったことへの深い反省を、政府及び事業者は一時たりとも放念してはならない。
事故の反省と教訓を踏まえ、原子力規制委員会が設立され、世界で最も厳しい水準の規制基準が施行された。現在、原子力規制委員会により、事業者の申請に基づき、既存の原子力発電所に関する技術的、科学的な審査が厳格に行われている。

2.化石燃料への依存の増大とそれによる国富流出、供給不安の拡大

原子力発電所が停止した結果、2012年時点におけるエネルギー自給率は6.0%まで落ち込み、国際的に見ても自給率の非常に低い脆弱なエネルギー供給構造となっている。原子力を代替するために石油、天然ガスの海外からの輸入が拡大することとなり、電源として化石燃料に依存する割合が震災前の6割から9割に急増した。
日本の貿易収支は、化石燃料の輸入増加の影響等から、2011年に31年ぶりに赤字に転落した後、2012年は赤字幅を拡大し、さらに2013年には過去最大となる約11.5兆円の貿易赤字を記録した。
貿易収支の悪化によって、経常収支も大きな影響を受けており、化石燃料の輸入額の増大は、エネルギー分野に留まらず、マクロ経済上の問題となっている。
現在、原子力発電の停止分の発電電力量を火力発電の焚き増しにより代替していると推計すると、2013年度に海外に流出する輸入燃料費は、東日本大震災前並(2008年度~2010年度の平均)にベースロード電源1として原子力 を利用した場合と比べ、約3.6兆円増加すると試算される。
海外からの化石燃料への依存の増大は、資源供給国の偏りというもう一つの問題も深刻化させている。現在、原油の83%、LNGの29%を中東地域に依存しており(2012年)、中東地域が不安定化すると、日本のエネルギー供給構造は直接かつ甚大な影響を受ける可能性がある。
石油の場合、第一次石油ショック後から整備してきた備蓄制度によって、需要の190日分(2013年12月末時点)の備蓄が確保されており、供給途絶に至る事態が発生した場合でも、輸入が再開されるまでの国内供給を支えることが一定程度可能である。
他方、天然ガスについては、供給源が多角化しているものの、発電用燃料として急速に利用が拡大しているため、主要な供給地において供給途絶に至るような事態が発生した場合には、電力供給体制に深刻な影響を及ぼす可能性があり、そうした事態に陥らないよう、北米からのLNG供給を含む供給源の更なる多角化を迅速に進める必要に迫られている。

3.電源構成の変化による電気料金上昇とエネルギーコストの国際的地域間格差によるマクロ経済・産業への影響

(1)電気料金の上昇とその影響
6電力会社が既に規制部門の電気料金について6.2~9.8%の値上げなどの改定を行っているが、実際には、高騰する燃料価格等により、全国で標準世帯のモデル料金が2割程度上昇している。
さらに、2012年7月から始まった固定価格買取制度により、再生可能エネルギー供給のための設備投資が加速し始め、非住宅向け太陽光発電を中心とした導入が急増している。
同制度開始以降2013年11月末までに、再生可能エネルギーの設備導入量は制度開始前と比較して3割以上増加したが、電気利用者への負担は、太陽光発電の余剰電力買取制度によるものも含めると、現在、賦課金が kWh 当たり0.40円であり(国全体で3,500億円)、標準家庭モデルで月に120円ほどとなっている。
固定価格買取制度に基づいて導入される再生可能エネルギーは、今後増加していくと考えられ、電気利用者の負担の上昇要因となっていくと考えられる。
様々な要因による電気料金の上昇は、電力を大量に消費する産業や中小企業の企業収益を圧迫し、人員削減、国内事業の採算性悪化による海外への生産移転等の悪影響が生じ始めている。
マクロ経済に対する影響について、2011年12月に内閣府が「日本経済2011-2012」の中で、原子力発電を火力発電ですべて置き換えた場合、電力業の生産性が10%程度低下すると見込まれる(すなわち発電コストが上昇する)ことから、実質GDPは0.39~0.60%程度減少するという試算を示しており、エネルギー構造の変化が経済成長にも悪影響を及ぼすことが懸念されている。

○ベースロード電源:発電(運転)コストが低廉で、昼夜を問わず安定的に稼働できる電源
○ミドル電源:発電(運転)コストがベースロード電源に次いで安価で、電力需要の動向に応じて、出力を機動的に調整できる電源
○ピーク電源:発電(運転)コストは高いが、電力需要の動向に応じて、出力を機動的に調整できる電源

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