政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


総務省 吉崎正弘総務審議官に聞く

「国際化からインターナショナルへ」

吉崎正弘氏

吉崎正弘氏

――内向きであった、日本のICT産業が外向きに変わりつつあります。現状をどうみていますか?
例えば、テレビ受像機の分野では韓国製が安さを武器に国際市場で普及した。日本製は品質が高いけれども高価なため、国際市場では競争力を失ったといわれる。
これには国内市場規模が関係している。韓国は国内市場が小さいため、海外市場に出ざるを得なかったが、日本にはそこそこの国内市場があり、あえて海外市場に出なくても日本国内で高品質商品を売っていれば良かった。その成功体験が常識化・固定化しまったことが1つの要因としてある。
世界市場の中では、日本市場、日本人の常識はとても変わっている。それがある意味、高度成長した要因でもあったが、今では「ガラパゴス化」といわれ、いまひとつ成長し切れない要因でもある。
ただ、今日本は人口減少社会に突入しつつあり、国内市場が縮小することは間違いない。必然的に海外市場に向かざるを得ないのだが、世界の生産の30%を占める日本車に比べ、ICT産業の動きが遅いことは否めない。
EUにはEUに、アフリカでは中国に、アジアでは韓国勢のICT企業に押されているが、何とかしなければいけないというのが現状だ。

――どうすれば良いのか?
いろいろな課題があるが1つは、マーケティングだ。その現地にあった商品の生産・供給をこれまで以上に市場に合わせ考えていく必要がある。典型的なのがコンテンツ産業だ。機械などのハードは、スピード、故障しない、安さなどの客観的データが決め手だが、コンテンツは日本で売れたとしても、他の地域で同じように売れるとは限らない。国内でも、関西の笑いと関東の笑いでは「違い」があるように、マーケティングを重視して、現地に合わせ広めていくしかない。
ただ、だからといって日本の文化や国民性に卑下することはない。
3・11の東日本大震災の時に暴動が起こらなかったことに、世界中の国々が驚いた。日本人は、周りのことを考えて行動ができる、利他的性格を持っているように思われる。このような国民性は世界でも珍しいものであるが、自信と誇りをもって世界に発信していければ、必ず良い方向に向かうと信じている。
灯台下暗しではないが、国内にいるばかりでは日本の良さも悪さもわからない。一方で、企業活動のグローバル化進む。したがって、優秀な若い人をどんどん海外へ派遣していくことが、どのような組織であれ重要である。「和魂外才」とでも言いましょうか。

――企業文化の違いもありますね
米国では「設立10年未満の新興会社が多い」と自慢するが、日本では長く続いている会社が多いことを自慢する。しかしながら、古い企業はどうしても伝統やこれまでの常識に縛られがちになり、特に技術革新の激しいICT分野はあっという間に陳腐化してしまうので、企業のあり方自体を日々虚心坦懐に見直すことが重要である。
また、日本企業は均質で良質な失点をしない人材を評価してきたが、ICTの時代にはマニュアルを守る能力から、想定外のリスクに迅速に対応し、リスクを最小限に選択して突き進むような人材が求められる。得点主義の人事評価が他分野以上に必要である。お母さんも我が子の就職について大過ない会社を望む風潮があるが、長い目で見るとむしろ危ない会社に就職させているということを自覚してもらいたい。
ごく一部ではあるが、日本の中小企業の中には、世界でニッチ・トップの企業がたくさんある。間口の狭い分野に特化し、決断力と機動力で世界市場のトップに立っている。ネット社会では世界から積極的に仕事を取ってくるような活力ある企業がこれから強く求められる。

――人材の評価は個人のスキルで決めていくべきですね
企業活動のグローバル化が進み、そのスピードとコストがグローバル化してきている時にあっては、労働力の適正な時価評価を行い、流動性を高めていく必要がある。就職したときの時点における過去の簿価評価ではなく、その時点での個人の資質、スキルを重んじる社会にしていく必要がある。人の適正な時価評価であれば、中途採用でもスキルが高ければ、どんどん採用できるようになる。右肩上がりの経済成長を前提とした、年功序列の賃金体系は見直さなければなりません。当然、成果次第で降格もさせることもありでしょう。
また、収益や雇用を多く生み出す経営者は飛びぬけた所得を得てもよいと思う。

――人口減という「曲がり角」をどう乗り切るべきですか?
「このままではどうにもならない」ということを決断すべき時期にある。
日本人は民族や言語の単一性により、外国人受入れに対して積極的でない面があるが、現在、3Kと言われているような職場などに人が集まず、人手不足が深刻化している。外国人に短期ステイを与え、労務を提供してもらうレベルでは間に合わず、外国人に日本人として生活してもらわないと日本社会が動かなくなりつつあると思われる。
英国は同じ島国であり、資源もあまりないが、人口減少の限界から外国人の流入を認め、今でも世界に冠たる主権を有する国である。今こそ日本で言う『国際化』と『インターナショナル』の相違を認識すべきときであろう。
日本の国の将来をどうしていくのか?それらを踏まえ、少子化時代に外国人を受け入れていくかのどうか?『インターナショナル化』を進めるのかを国を挙げて大いに議論するべき時期にある。大相撲でも、今やモンゴル人が3横綱を占める時代だ。外国人に頼らなかったら、大相撲のレベルが下がり、人気は落ち、いずれ日本人からも見捨てられていたことであろう。今後の将来に向けた、しっかりとした議論が必要だ。

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