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テーマは「新陳代謝」

菅原郁郎 氏

経済産業省経済産業政策局長
菅原郁郎 氏

<すがわら いくろう>
宮城県出身、東大経卒、昭和56年通産省入省。平成19年官房総務課長から総理秘書官)。
22年産業技術環境局長、24年製造産業局長。25年7月より現職。

成長戦略の第2弾のキーワードは「新陳代謝」。とにかく、企業にはベンチャ―精神を呼び覚まし、「稼ぐ力」を発揮して欲しいという、菅原局長に聞いた。

日本再生本部の事務局長代理でもあり、内閣官房で成長戦略を作る責任者として、2回目の「日本再興戦略」を作らせてもらった。昨秋には第一弾の産業競争力強化法を作り、ベンチャーキャピタル税制も前倒しで作り上げた。
今回の第2弾のテーマは「新陳代謝」である。デフレ化での正しい行動は何もしないことだ。なぜなら、物価は下がるため、リスクある案件に投資する必要はなく、現金を持っていて、待てば待つほど安く買えるとなると、何もしない方が得をする。これがデフレマインド。全員がこれにかかると発展する世界から取り残される。
安倍総理以下、甘利大臣、茂木大臣含めて、一貫して、この成長戦略では「ベンチャー」がキーワードであるという共通認識だ。何がそこまで、ベンチャーなのかといえば、やはり安倍政権、集団的自衛権が新聞等では騒がれているが、根っこは「今の日本経済は20年間の低迷。デフレだけでも15年間名目GDPが減り続けている国は近年ない」という認識を持っている。
20年間の経済の低迷から初めて水面下に顔をだした状況だが、これで成長軌道に乗ったかというとまだそうではなく、たまたま景気の循環に乗った程度で足どりはまだおぼつかない。これをしっかりとした足どりに成長軌道に載せるには、最低でも3サイクル(3年間)は必要だ。
このデフレマインドは、日本経済にこびり付いた「宿痾(しゅくあ)」であり、マイナス思考にとらわれている。個人、企業、政府含め、そこからどう脱却するかを考えると、おそらくこの2-3年が、日本経済がプラス思考に変われるかどうかの絶好のチャンスでもあり、またラストチャンスであると思っている。
なぜか?このままの状態では企業人にとって「日本に足場を置く」理由がなくなってくる。市場は少子化で縮小する一方で、また先行きが暗い国に、グローバルで展開する企業がつきあう理由がない。実質的に、企業の拠点が海外に移っていくと、ますます日本経済が立ち直れなくなっていくと見ている。
ではどうするのか?日本の伝統ある企業、大企業が経済・雇用を引っ張ってきたが、これまでの延長線上では大企業の将来は見込めない。もう一度、大企業も含め、ベンチャーに立ち戻ってもらう。ベンチャー精神を取り戻してもらう以外、このラストチャンスを生かす方法はないのではないか?
日本ではベンチャー企業というと、アメリカ型のベンチャー企業を想定してしまい、大企業の幹部を話しても、自らがベンチャー精神を発揮するまでに追い込まれていると中々、理解していないようだ。我々としては揺さぶるしかない。
今の世界経済のトップ企業2000社に米国は466社入っていて、日本も181社入っている。うち米国は3分の1、154社が1980年以降に生まれた企業がトップに入ってきていいる。日本は80年代以降では、24社しかいない。本当の新規は、ソフトバンク、楽天、ヤマダ電機、JCOM、ルネサス5社しかいない。
言いたいことは、新陳代謝といっても米国は起業30年で一気に世界のトップ企業になるようなダイナミズムを持っている。日本も決して不可能ではない。
今のトヨタ、ホンダ、ソニーも戦後30年で世界的企業になったわけで、あらゆる分野で可能性はある。ベンチャーこそがしがらみなく発展できる。
日本人は進取の気質に富んでいるし、いろいろなアイデアを持っているので、ベンチャーも伸ばせるし、大企業もベンチャー化しうるとして、今旗を振っている。
ベンチャーという言葉ではわからないから「新陳代謝」という言葉で表した。産業競争力強化法の法律の柱は、新陳代謝、規制改革、受けとしてのベンチャーで出来ている。大企業にもう一度、新陳代謝という言葉で「ベンチャー精神」を呼び戻してもらうことが大きなメッセージであった。
今年の成長戦略の第2弾、キーワードは「稼ぐ力」。本当の儲かっている分野に資源、人を移すだけでなく、本当に稼ぐ力を再発見してもらうには、新しい分野、グローバル競争の中でどう生き残るかを真剣に考えて欲しいと思っている。
法律、税制だけでは企業人は動かないので、隠れたキーワードとして、コーポレートガバナンスだ。まさにベンチャーキャピタルや機関投資家など、日本経済全体での「企業の稼ぐ力」を全員で見なおしてもらう。投資をしないデフレ型経営者には早く、退場してもらうことも必要だ。
いろいろな施策を間断なく盛り込む予定だ。昨年は法律、税制だったが、今年はやはり、マインドを変えてもらう。法律・税制は時間がかかるので、例えばベンチャー創造協議会(仮称)を作り、そこに大企業とベンチャーの出会いの場を本格的、大規模に作りたいと思っている。
また、ベンチャーの位置づけに対し、産業界も国民的にもなかったが、閣議決定の成長戦略の文書に、「ベンチャーでしっかりとした社会にインパクトを与えた企業」に対し、内閣総理大臣賞を設けるといった文言が加えられた。
どうしても日本のベンチャーはアプリケーション系とか、ビジネスモデル系が多くなっている。国としては、TEC系にもNEDO等を通じて、ベンチャー枠を大幅に拡充している。
秋の臨時国会では、良いものを作っても売れなくては困る、良いものをお客様に認識してもらうため、政府調達にあたってはベンチャー企業を優先するという法改正を行う予定だ。地方自治体も含め、まず、ベンチャーで作ったものをまず、国が使ってみるという試みができる法案を出したいと思っている。
とにかく、間断なくまさにベンチャー精神を発揮する環境作りを精一杯やっていく所存だ。
ここ1-2年がラストチャンスだと思っている。民間が本気で動かないとまた元に戻る可能性がある。

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