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先頃の会社法の改正により、わが国も日本版コーポレートガバンナンス・コードが導入され、来年6月から社外取締役が義務付けとなる。この課題の先駆者である、田村氏に聞いた。

田村達也氏

田村達也氏

社外取締役ネットワークは12年前に、私が仲間を募り提唱してスタートした。そもそも、コーポレート・ガバナンス(企業統治)という言葉は当時、学者や専門家しか知らない概念であったが、いまや社外取締役が会社の中に義務付けとなるようになって、日本も資本主義経済の国に1歩近づいたようだ。

しかし、内容をどう捉えているか大きな課題である。私が理解する「会社」とは、経営者と従業員は実際の仕事をし、株主は会社の資本を仕切る。株主の資金によって会社が成立し、経営者と従業員はその資金をうまく使い、その要請に従って会社を運営していくことにある。
その第1は法令を遵守していくこと。第2は会社が利益を上げ、出資者の利益に応えていくことだ。
資本主義社会の経営者は、株主利益のために経営を任されて、会社を支配し、動かし、報酬を得ている。従って、経営者のための会社経営、本社社員のための会社経営になってはいけないのである。出資者の資本を無駄使いしたり、出資者に利益が還元されないようでは会社ではないのである。日本の場合、戦後、株主がはっきりしないままに、財閥解体で会社が出来、公営企業が民間に売却され、株主がはっきりしないままに経済が高度成長してしまった。
終戦直後は、鉄鋼会社などは非常に経営が厳しく、ある意味、創業企業のように難局を乗り越えていった。それから会社が安定してくると、サラリーマンが社長になり、経営の目的が仲間の経営陣を守ること、本社社員を守ることに血道を上げるようなってきた。
それは従業員のための会社であって、失敗した時の整理がきかない、あるいは、株主の要請によるリストラもできない、幹部従業員のための会社になってしまっている例が多い。
資本主義社会における会社からは、離脱しており、官僚主義に陥ってしまっている。これが日本の産業構造の変化を難しくさせており、新しい時代のための規模の拡大とか買収とかを起こりにくくしている。
経営者同士の仲良しクラブが経団連なり経済同友会を組織し、政治に献金をし要望を出し、政治に影響力を行使しようとしている、経営者社会主義のような様相を呈している。
経営者は、本来政治活動にお金を使う際は、株主の了解が必要だが、日本は政治献金を経費として認めている。会社が仕事で事業以外に使ったお金は利益として株主に還元しなくてはいけないのに、政治献金を経営者が使うのは本来おかしいし、配当はしなくないのに政治献金は行うなど米国では絶対にありえない。
これでは企業の競争力が弱くなる、日本の経済社会のダイナミズムが失われる。ダイナミズムとは、資本の赤裸々な競争、買収や乗っ取りなどで、強い企業はさらに強くなり、弱い企業は淘汰されていく仕組みが働かない。本来の企業とは、お互いが激しく競争し、競争力向上や新しいチャレンジに取り組む。政治とはもっと距離をとらなければいけない。
会社が不祥事を起こさないとか、経営に対する規律、コンプライアンスの問題が日本の社外取締役の役割と言われるが、監査役とそう違わないような感じだ。会社の本来の目的である、収益を上げるための経営のダイナミズムを常に求めていくのが「社外取締役」
であり、日本はやや後ろ向きな取り組みを中心としている。
――トヨタもキヤノンもやっと社外取締役を入れました
社外の目で見る意味は、会社は本当に儲けているか、無駄使いしていないか?
社内だけだと、自分たちの利益だけのために会社を経営してしまう恐れがある。
社外の目の大事さはそこにある。日本の社外取締役は、社内にない国際的感覚をもっと議論して欲しい、社内では育たない国際感覚に人が欲しい、役所関係に強いとか、社長を助けるためにかなり顔の広い人、経験分野の違う人を求める。
しかし、そういう人材はコンサルタントを雇えばよいのである。社長は社内だけにとらわれて判断していないか?株主の存在を忘れていないか?社会のことを考えるために取締役会に参加して発言するのだ。立場の違い、役割の違いを考えずに、形ばかり整える社長が多すぎる。
経団連も同友会も政治献金を経費として認めている。会社の事業以外のお金は利益であり、税金を払った後は株主に回すのが本来だが、政治に使ってしまうのだ。その当たりが議論されずに、今度の社外取締役制度になってきている。
日本の経済が安倍政権で盛り上がってきているが、会社のお金を政治に使うといったある意味、社会主義的な手法で盛り上がっているようにみえる。本来は、国民一人の判断で政治に影響を与えていく必要がある。時には「社長にだめです」と進言するような侍のような、社外取締役を作っていくべきある。制度は出来たが、まだ道半ばといった状況だ。(文責編集部)

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