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経営スタイルの転機

鶴保征城 (HAL東京・大阪校長)

 

9月14日に行われた日本女子プロゴルフ選手権で、20歳の鈴木愛選手がツアー初優勝を果たした。実力はあると思うが、20歳・プロ2年目がなかなか勝てるタイトルではない。何をやってもうまくいって気がついたら優勝、というパターンではないだろうか。鈴木選手は4日間、いわゆる「ゾーン」に入っていたのだと思う。
少し前のテニス全米オープン選手権の準々決勝、準決勝の錦織圭選手も、おなじような状態だったのかもしれない。このスポーツ選手のゾーンという状態を経営に応用した「フロー経営」という考え方が提唱されている。
フロー経営の代表的のものとして、井深大氏が創設したソニーがあげられる。設立趣意書には、設立の目的に「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」と書かれている。実際、元ソニーでノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈氏は、「技術者は自由奔放に仕事を進め、混沌とはしていたが、会社全体としては目標が明確で秩序が保たれていた」と述べている。
このような自由闊達なR&Dをベースに、スティーブ・ジョブズをも魅せた斬新な製品を輩出していたソニーが、2003年には「ソニーショック」と言われる業績悪化を引き起こす。
この原因を、元ソニーの天外伺朗氏は、1990年代半ばに導入された成果主義などの合理主義経営にあると指摘する。
フロー経営のもう一つの例は、先日創業者(山田昭男氏)が亡くなった未来工業である。未来工業には、売上目標、利益目標、セールスの個別目標などの数値目標が一切ないという。さらに企業理念といった方向性を示すものもない。上場企業なので四半期ごとの業績予測は公表しているが、それは外向きであって内部では無視しているようだ。
こういう経営が効を奏したのか、未来工業の業績は極めて順調である。(この3期売上は284億円―>314億円->352億円、経常利益は27億円->38億円->51億円と推移)
ある研究によると、多くの従業員は持っている力の30%程度しか発揮していないらしい。従業員が義務感で働くのではなく、「働くこと」「工夫すること」に喜びを見出すフロー経営では、その値が大幅にアップするのだろうか。売上や利益を追う合理主義経営が、ブラック企業といった鬼っこを生むなどの行き詰まりをみせている現在、フロー経営は検討に値すると思う。

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