政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


わが国ものづくりの高品質を支えるマザーマシン、工作機械産業の回復が著しい。JIMTOFを迎え、佐脇課長に見通しを聞いた。

 JIMTOF2014

佐脇 紀代志氏

佐脇 紀代志氏

「工作機械産業の現状と展望」
経産省製造産業局産業機械課長
佐脇紀代志氏に聞く

――工作機械の現況は?
マクロ的に見ると、安倍政権のアベノミクス以降、過度の円高の是正、デフレ解消により日本経済に明るい兆しが現れてきた。しばらく我慢していた国内企業の工作機械への更新投資が始まってきた。
経産省も生産性向上のための設備投資減税やものづくり補助金でアシストしたことも功を奏し、受注の伸びが続いている。9月の受注が1355億円、うち内需が550億円、外需が900億円の規模であり、1000億円を超えた規模の受注が続いている。
年初に日本工作機械工業会の花木会長が年間受注目標を1兆3000億円と掲げておられ、目標達成が射程にはいりつつある。新聞でも工作機械の受注増という見出しがよく載るようになってきた。
日本製工作機械は精度が高く、頑丈なので長く使用できるため、本来新型に変えれば生産性は上がるが、長く使い続けてもある程度使える。中小企業は先行きが見えないと投資しないが、ビンテージが長くなった分、在庫一掃的な買い替え需要が起きてきたと見ている。

―-世界的にはどうですか?
中国が伸び悩みと言われているが、直近ではスマホ関連の部品加工用工作機械のスポット需要が伸びている。全体では政権が経済の引き締め策をとっていてそれが効いているようだが、もう少し伸びて欲しいと思っている。ただし、米国市場はIMTS直後もあって堅調に受注が出てきていて、中国市場がもう少し強くなってくると、業界としては安心かなと思っている。

――米国の好調の要因は?
マクロ的には製造業のリショアリングといって、「製造業回帰」の動きがあるのが大きい。航空機やエネルギー関連が好調なのでそれに引きずられている面が強い。米国向けはハイエンドな工作機械が多いが、中国はボリュームゾーンが大きく、ここが回復してくればいろいろな工作機械への波及効果が大きいので期待している。

――このままいくと世界の製造工場の中国市場の工作機械が技術的に日本に追いついてくる。そのときの日本の差別化をどうか考えておられるか?
ここしばらくは、中国の工作機械が安価で大量に出回っているが、その使い心地あるいは耐久性などの情報がこれからマーケットで共有されてくる。真価が問われていくのではないか。
また中国政府もこれからかなりのスピードで高付加価値化を狙っている。それに見合った性能の工作機械が必要になってくる。高性能が求められてくるときに、日本製がこれまで培ってきた高精度・高性能の需要がボリュームゾーンで出てくるので、まだ時間はあると見ている。「高付加価値製品を作るためには、高性能な機械に投資する」というマインドが中国で高まってくることは間違いない。
さらに、自動化・ロボット化の関心が、中国国内で強まっており、地方を中心にそれをリードする政策を打ち出している。そうなると、それに合う機械は中国では少なく、日本勢が得意とする部分であり、リードを保てる。そうした中国市場の変化をうまく取り込めばまだまだ量的、質的にも受注を獲得し続けることは可能とみている。

――日本の工作機械メーカーもこれからは単品の工作機械を売るビジネスからFA全体、工場のソリューション全体を提供していく様な、ビジネスを転換させていくべきでは?
工作機械の技術開発にはまだ余地があり、精度をしっかり出す観点から、機械構成素材の熱への耐久性とか環境によっての微妙な歪みへの対応が残されている。産学官連携によりR&Dを促しているところだ。
日本は高水準の様々な工作機械のラインナップがあり、それらを横につなげソリューションを提供することはできる。その中でも工作機械は中核マシンであり、目指すべき方向ではある。
しかし2つ問題がある。1つは企業横断的に顧客のニーズを聞いてソリューションを設計していくような、SI(システムインテグレータ)の人材が日本は薄い。そこをどう増やすかだ。
ロボットを含めたFA全体についての市場構造が変わっていく可能性があり、そこにうまく対応したラインを組む事業者と連携していく体制が課題だと思う。
もう一つは、日本において培ってきたノウハウそのものを「売り物」にした場合の善し悪しを勘案する必要がある。時にはブラックボックス化し、「それを使えばなぜか生産性が上がる」といったような仕組みが必要だ。その2つを合わせて考える必要があり、ロボットや産業機械全体で考えていくべき大きな政策課題だと考えている。

――今後の見通しは?
少なくともここ1-2年は日本も前向き投資が出てきて、伸びるであろうし、中国も自動化の動きが加速してくるので需要は堅調だと見ている。このような時期にこそ、次の競争に備えた体力作りも含め、頑張って欲しいと思っている。日本にもMRJなど小型航空機市場も開けてきた。ハイエンドの工作機械の市場として大いに期待している。

高水準の受注増が続く工作機械

高水準の受注増が続く工作機械

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