政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


経産省商務情報政策局情報処理振興課長
野口 聡氏に聞く

クラウドとデバイスがつながるIoT(インターネット・オブ・シングス)が注目を集めている。来年度から組込みソフトウェアを含めた次世代ベンチャー企業を支援しようと考えている野口課長に現状を聞いた。

まさに、今世の中がIoTの時代に入りつつあり、ネットワークとキーデバイスをつないでいる組込みソフトウェアの重要性が再認識されつつある。ものづくり産業では、従来の機械制御から、センサ、CPU、モータなどを多用したソフトウェア制御が主流になっている。
また、自動車もいまやソフトウェアで動いていると言って過言でない、高級車ではプログラムのソースコードが100M行を超え、さらなる高機能化が求められている。建設機械では、GPSや通信システムが装備され、位置情報や稼働状況をインターネットで見られるシステムが標準に装備されつつある。
また、ロボットでも要素技術の高度化に組込みソフトウェアが重要な役割を担っている。しかし、現在のロボット市場では、モータや油圧駆動システム、センサなどの制御方法が標準化されておらず、デバイスごとにソフトウェアを設計・実装する必要があったため、ソフトウェアの生産性や保守性に難があった。
このほど日本が提唱した「オープンEL(オープン・エンベデッド・ライブラリ)」と呼ぶアプリケーションプログラミングインターフェースの仕様が国際標準化の一歩手前まで来ており、ロボットにおける組込みソフトウェアのプラットフォーム化が動きはじめた。
今後は他の分野でもこのようなプラットフォーム化の動きが重要になってくる。自動車業界でもAUTOSARというプラットフォーム化の動きがドイツを中心に進められている。そして、今後はサーバーやスマホに組込み機能が分散し、高性能なクラウドネット化により、設計思想が大きく変化する可能性がある。
その背景がIoT(インターネット・オブ・シングス)である。これまでは場所と場所を結ぶ通信、人と人を結ぶコミュニケーションから、ネットワーク化が進み、モノとモノ(マシン・ツー・マシン)、さらにはモノと人を含むあらゆる存在(シングス)が相互に接続されるIoT時代への移行が予見されている。
IoTの市場を見てみると、現在、100億個以上にのぼるインターネット接続されているデバイスの数は、2020年頃に300億個以上に膨れ上がり、同時にモノが生成するトラフィック量の方が情報や人が生成する情報量よりはるかに多くなる。2020年のIoTは200兆円規模の経済価値を創出すると予測されている。
そして、2000年のインターネット、2010年のモバイル、2020年には500億のモノとモノ(マシン・ツー・マシン)がネットにつながる時代が訪れ、社会に第3のインパクトをもたらすと言われている。
さらに、米GEのイメルト会長がインダストリアル・インターネット戦略を打ち出している。GEの製造するジェットエンジンや発電所のタービン、医療用の画像診断機器などに付けられている燃料や温度、振動を計測するセンサから集まる膨大なビッグデータを分析処理し、機械の生産性や効率性、耐久性などを向上させようというものだ。
その中心人物がシスコシステムズからスカウトされたビル・ルーソフトウェア担当副社長だ。今シリコンバレーにGEの優秀なソフトウェア技術者をシリコンバレーに1000人規模で集め、ビッグデータを収集分析する共通のプラットフォームを構築中だ。そして、GEを中心とした産業分野のM2M/IoTビジネスを加速するためのオープン・共通アーキテクチャ―を推進するIIC(インダストリアル・インターネット・コンソーシアム)を2014年3月に発足させている。
急速に拡大するIoTは、セキュリティの観点から見ると、多くの課題もある。すでに車載組込みOSがハッキングされたり、カメラ機能が乗っ取られ画像が盗まれている例が報告されているが、企業がこうした脅威の及ぶ範囲を把握していない。一番の課題は攻撃に対する防御手段が確立されていないことである。
以上をまとめると、今後の組込みソフトウェア産業の方向性は、3つ考えられる。1つ目は技術である。これまでと違う次世代産業へ向けたプラットフォーム化の流れを見極めて、標準化等に取り組む。2つ目は人材。IoT時代における新たなビジネスに対応できる人材の育成が重要と思われる。3つ目はセキュリティ。組込みシステムにおけるサイバーセキュリティ対策の強化は検討が必要である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">