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技術とアート

木内里美(株式会社オラン代表取締役)

アートに感じる感動
アートの世界は絵画や彫刻などの美術の分野ばかりでなく、音楽や舞踏や映画や詩歌など芸術も含まれる。アートはいろいろな形で人々に感動を与える。それは五感を刺激する何かがあるからだろう。

最近、堀文子という女流日本画家を知った。精細な筆致、色彩の絶妙な彩りに魅了されて10月に浜松市秋野不矩美術館で開催されていた特別展を観に出掛けた。筆者が生まれる前の時代から描き続けられた40点ほどが展示されていた。モチーフや画風の奔放さは古典的な日本画の枠に嵌らない独創的なものであった。生い立ちを知るにつれ、人生の節目節目で変化するバリエーションに驚かされ、その迫力には圧倒されてしまう。
1918年(大正7年)生まれということであるから、今年96歳になられたことになる。今年も作品を作り、新作展が銀座の画廊で開催されている。多くのファンがいて毎年開催される新作展に地方からもたくさんの方が訪れると画廊で聞かされた。
誰の絵でもそのように強い感動を受けるというものではない。堀文子氏の作品に強い感銘を受けるのは彼女の生き様に共鳴するからではないかと思う。作品はその作家の発露ではあるが、その背景にある信念や人生観や哲学が滲んでくるところに凄さがある。

技術はアートに繋がる
このような感動を職人の技にも感じることがある。今年、20年に一度の大祭である伊勢神宮の神宮式年遷宮に一年遅れで外宮、内宮を訪れた。凛とした杜の中に新たに建造された新宮は、用材の伐採に始まり8年余の様々な祭典を経て築造されている。佇まいに身を置くだけで心身が透き通ってくるようだ。建物の中には入れないので、かつて仕事をしていた会社が施工を請け負った「せんぐう館」を見学した。
「せんぐう館」には外宮殿舎や祭儀風景の模型や原寸大の外宮正殿が再現されている。最も興味を惹いたものは宮大工に依る神明造の技、それに使われる大工道具、様々な新宝調製の技などであった。
式年遷宮は建物構築技術の伝承ばかりではなく、工芸の伝承でもあることがわかる。それらの工程をみれば、微妙な曲線を描く丸太にしても象眼や漆で仕上げていく工芸品にしても、繊細で正確で我慢強く精度を突き詰める力とそれを具現出来る技の集積で成り立っていることがわかる。そこに感じるのはまさにアートの感動である。
技術が昇華し高められていくとアートになるとはこのことだ。ICTというテクノロジーも高めればアートになるに違いない。それには匠の技がなければならない。

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