政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


「必要なのはロボット・バリア・フリー社会」

 ロボット革命実現会議の委員に聞く
国立情報学研究所情報社会相関系教授
(社会共有知研究センター長)
新井 紀子さん

国立情報学研究所 新井紀子さん

国立情報学研究所 新井紀子さん

「今、ロボットとAI(人工知能)の垣根がなくなりつつある、第3の波を迎えています」と語る新井教授は日本でも数が少ないAIの女性研究者であり、ロボット革命実現会議の委員を務めている。
「日本のロボット開発は、人型と産業用にイメージが固定化し過ぎている。それでは第3の波に乗り遅れる可能性があり、イメージを崩す必要がある」と指摘する。アマゾンでは、顧客に合わせた商品をAIが選び出し、AP通信は機械で自動的に配信。iPhone5では喋ると人の声でコンシェルジュしてくれるSriがある。これらは全てロボットであり、自動車もスマートハウスも交通システムもロボットであるというのが第3の波の認識だそうだ。
「今のロボットはKY(空気が読めない)だし、状況判断が出来ない。また過去のデータがなければ動けない。今のAIのレベルでは、人と協力しあって問題解決をするようなアトム型ロボットは無理」。そのようなロボットは数学に革命が起きない限り難しい、と数学者らしく一刀両断している。
欧米の第3の波では、ロボットの各要素技術を組み合わせ、いかに生産性やGDPを上げるかを競っている。社会のニーズにロボット技術を適用させ、生産性や効率をあげようというスタイルだ。
「定形的な分野はロボットが得意だが、非定形の分野の導入はかなり難しい。実際、災害地に人の入れない場所へロボットは行けるかもしれないが、そこでまた状況判断をして作業するなどはとてもできない」。だから、ロボットが動きやすい環境を整えておく『ロボット・バリア・フリー社会』を新井教授は提唱している。
「原発でもトンネルでも橋でも、将来の人手不足やコストから考えて、あらかじめ設計段階からロボットによるメンテナンスを考えて作れば、ロボットの導入がし易くなる。いろいろなパターンに自由に合わせられるロボットは幻想であり、もし作れても限定的で非常にコストがかかり、生産性向上には役立たないでしょう」。 バリアフリーで育ったロボットは新興国のインフラ輸出品として、将来多いに可能性が高い。
教授が取り組んでいる「ロボットは東大に入れるか?」プロジェクトは誤解される面が多いそうだ。「これはAIのレベルがいまどの位の位置にあるかをわかり易くするために行っているのです。まだ東大には入れませんが、文系型7科目では偏差値レベル47、私大8割以上に合格可能性80%以上という判定が出ています」。AIはいまや大半の大学生レベルになってきているのだ。
このことは何を意味するのか?AIが人から仕事を奪い始めるという。そのため、人は、ロボットにはできない、曖昧な判断、新しいものを生み出す創造力など働き方を大きく変化せざる得ない状況に追い込まれてきているのだ。「高い授業料を払ってまで大学で学ぶインセンティブが将来、きっと働かなくなる。ならば、逆にこのAIを使ってホワイトカラーの生産性が上げるように使うべきです。ロボットに無限の可能性や夢を持つのは良いが、まず出来る所から初めて欲しい。センター試験の物理が50点レベルでは、まだ自律判断型のロボットは無理です」と数学者らしく、はっきりしていた。
とにかく、この会議の目標である、労働生産性を2%あげるために、ロボットが活用できる『場』をもっと作ってあげることが大事である、と強調していた。

 <あらい のりこ> 
一橋大学法学部・イリノイ大学大学院数学科修了、博士(理学)。専門は数理論理学。2011年より人工知能分野のグランドチャレンジ「ロボットは東大に入れるか」のプロジェクトディレクターを務める

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