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今年4月、3省連携による独法
日本医療研究開発機構が設立
医療機器にRTが上手く活用され始めてきている

 

経産省商務情報政策局 土屋博史氏

経産省商務情報政策局 土屋博史氏

経産省商務情報政策局ヘルスケア産業課
医療・福祉機器産業室(国際展開推進室長) 土屋博史室長

現在、医療機器は約30万種。多品種少量の産業特性がある。我が国の医療機器産業は現在、2.7兆円規模、うち55%がカテーテルやペースメーカ―などの治療機器、26%が内視鏡やCT・MRIなどの診断機器が占める。今後も医療費の増加とともに年率3-4%の成長が見込まれる。
世界市場は30兆円規模で、毎年8%ほどの成長を続けている。このうち約4割が米国。世界の主要な医療機器メーカーでは、ジョンソン&ジョンソン、シーメンス、GEなど海外資本の企業が多数存在し、わが国の医療機器産業は約7,000億円の輸入超過とも言われてきた。他方、最近、日本企業も海外における現地生産が活発になりつつあるとともに、外資系メーカーと共同開発やOEM生産、部材供給等を通じてオープン・イノベーションを進めるなど、輸出入の統計上では表れにくい国際競争力があると考えている。

こうした中、政府の成長戦略において「ロボット革命の実現」が謳われたように、医療用ロボットに対する期待は高まっている。その際、ロボットの概念について、例えば、ビルの空調や飛行機の水平飛行でロボット技術(RT)・自動化技術が活用されているように、医療機器においても、自らセンシングして作業工程を自動化すること等によって、ロボット技術が積極的に活用されつつある。
象徴的なトピックとしては、昨年のロボット大賞において、医療用ロボットが2つ選ばれた。1つ目は、デンソーの手術支援ロボット「iArmS(アイ・アームス)」で、長時間にわたる手術の際に医師の腕を支え、手の震えや疲労を軽減するロボット。2つ目は、サクラファインテックの「スマートセクション(全自動連続薄切装置ティシュ―・テック)」で、がんの疑いがある患者から採取した検体を数ミクロンの厚さで薄切し、スライドガラスに全自動で取り違えなく貼付する機器で、ロボット技術を医療用に上手く活用した成功例といえる。

医療分野に司令塔ができる

また、今年4月には医療分野の司令塔機能となる独立行政法人「日本医療研究開発機構」が設立され、健康・医療戦略室を中心に文科省、厚労省、経産省の3省連携により、医療分野の研究開発に取り組んでいく。このうち、経産省では、①世界最先端の医療機器開発(未来医療技術開発)、②医工連携による「医療機器開発支援ネットワーク」の本格展開、③ロボット介護機器の開発・導入などに取り組んでいく予定だ。

現在、医療用ロボットに関連して主に2つの取り組みが進められている。
1つ目は、「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業」において、世界最先端の医療機器開発を目指す。今年度まではNEDO(新エネルギー・産業技術開発機構)において実施していたが、平成27年度からは「日本医療研究開発機構」へ移管予定。開発の軸は3つの観点から選定しており、1つ目は医療ロボット・ICT(情報通信技術)の活用、2つ目が医療機器の高度化、3つ目は身体組織・機能の回復を想定している。
この中で、ロボット技術活用事例として、今年度からスタートした新規プロジェクトの1つに、東京女子医大を中心とした「スマート治療室」の開発がある。このプロジェクトでは、MRIなど複数の医療機器同士で情報共有・伝達するネットワークにおいて、産業用ロボット向けのミドルウェアであるOLiN(オライン)を採用している。

医療機開発支援ネットワーク
さらに、「医療機器開発支援ネットワーク」の構築により、開発の初期段階から事業化に至るまで、伴走コンサルを通じて切れ目なく支援し、機器開発・事業化を加速していく。昨年10月から関係省庁やPMDA(医薬品医療機器総合機構)等の関係機関が連携し、医療機器の開発・事業化におけるプロセスの改善・円滑化等に取り組んでいる。
中小企業・ベンチャー・大学などの開発・事業化では、医療現場のニーズ把握、薬事手続きへの対応、販路開拓などハードルの高い課題が数多く存在する。例えば、医療現場におけるニーズ把握が容易ではない中で、ある特定の医療現場だけの意見をもとに、自社単独で医療機器を開発・事業化したものの、その後の市場性が十分でなく、全く売れないというケースが散見され、危機感を持っている。こうした課題に対応すべく、開発段階から多様なニーズ・ウォンツを汲み取り、仮説と検証により製品コンセプト・市場性を見極め、事業化していく過程を支援(薬事、知財、海外展開、ファイナンスなど)するために伴走コンサルを配置、切れ目のない支援や情報提供を行う。そして、各地で行われているこうした動きを、このネットワークを通じて、しっかりと支えていく。この中で、開発に新規参入のベンチャーや異業種企業等の参画が促され、事業化の段階では既存メーカー・ディーラーと連携する体制も生まれやすくなるのではと期待する。

さらに医療機器の開発に機器メーカーのほかに製薬、素材、自動車・半導体部品などの関連分野から多様なメンバーが加わることによって、より広い視野からの開発が可能となる。こうした取組などを通じて、引き続き、医療機器開発・事業化の促進にしっかりと取り組んでいきたい。

平成27年度 概算要求のポイント

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開発機器の傾向

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医療用ロボットは今? (1月1日号)」 に1件のコメント

  1. mats_i より:

    「昨年のロボット大賞において、医療用ロボットが2つ選ばれた。1つ目は、デンソーの手術支援ロボット『iArmS(アイ・アームス)』。2つ目は、サクラファインテックの『スマートセクション(全自動連続薄切装置ティシ

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