政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


経済産業省製造産業局 佐脇紀代志氏

経済産業省製造産業局 佐脇紀代志氏

経済産業省
製造産業局
産業機械課長兼ロボット産業室長
佐脇紀代志氏

 OECD閣僚理事会で安倍首相が「日本をロボット活用のショーケースにする」と宣言し、
昨秋、成長戦略に「ロボット革命実現会議」が盛り込まれた。その事務局を務める経産省の佐脇産業機械課長に、今後の狙いを聞いた。

ロボット産業政策の今後の展望

アベノミクスの第三の矢は、日本の課題を成長のチャンスに変える事が主眼で、その一つがロボットだ。各分野でロボットと協働して成長に繋げるために政府が起ち上げたのが本会議だ。その事務局を内閣官房と経産省が協力する形で務めている。
日本はロボット大国と言うだけあってロボットの保有台数は世界一だが、自動車産業関連などの大企業向けの産業用ロボットが主流で、それ以外の分野におけるロボット活用は未発達だ。もちろん、人型ロボットや器用なことができるロボットは開発されてきており、介護などの新分野におけるロボットも商業ベースの価格で提供されるようになってきた。しかし、「これらのロボットを使いこなして本気でビジネスをしよう。」という段階ではない。
一方で、欧州では介護や医療、米国では軍事に莫大な民間投資が投下されており、また、中国では産業用ロボットの導入が急速に拡大しつつあり、このままでは諸外国にロボット大国の座が奪われかねない。本気でビジネスとしてロボットを活かす担い手を増やす事が急務だ。例えば、今まで安定して経営をしてきた自動車産業の下請け企業などは、売れるかどうかも分からない分野に突如参入していくのは難しい。チャンスと思って飛び込む人や、参入者を支援してサービスにアレンジする人、中小企業が使えるロボットを提供するような人が不足している。
企業が単独で開発していても非効率でペイしにくいため、オープンイノベーションが不可欠だ。様々な技術を組み合わせられるよう、標準モジュール化を進めることが重要だ。そのために、ソフトレベルで技術基盤を皆が共有するような開発が必要である。
同時に、国際的な流れから遅れてはならない。介護福祉の現場でロボットを使うサービス一つ取っても、ヨーロッパは独自のシステム仕様を作り始めている。ヨーロッパはEU単位で同じ基準を設けているため、一国で進める日本よりも広がりが大きい。日本国内だけの単品ビジネスではなく、グローバルでシェアを取る必要があり、そのための環境整備を進めていくことも重要である。
したがって、今までのように『大企業に予算を振り分けて終わり』というわけにはいかない。ある食品製造業者は、かつて、工場内で使えるロボットの開発の検討を大手産業用ロボットメーカーに依頼したがすべて断わられた。『それなりの市場規模を保証してくれないと参入する気はない。』と言うのだ。今は、中小企業のシステムインテグレータと共同で食品製造工程の自動化システムの構築に挑戦している。
一番大事なのは状況を把握する広い視野だ。今の研究現場は目や足など専門特化したロボットの開発に取り組んでいるが、これでは現場で使えるロボットが普及していくという最終目標になかなか到達しない。統合的な課題を設定して各専門家が総合的な解決策を提示する枠組みが必要だ。例えば米国のDARPA(国防高等研究計画局)は、災害現場を念頭に置き、課題をロボットで解決する競争の場を設けている。
目標達成のためには、技術を束ねて儲けたい人が儲けられ、同時にロボットを使っていかにして事業化するかをユーザーに伝える必要がある。市場のニーズに合わせて、技術に少し工夫を加えて「使えるようにする」ことが重要だ。例えば、十個くらいの機能を搭載したロボットが開発されたとしたら、市場ニーズを元に優先順位をつけた三個くらいの機能を持つロボットに作り変える。そのための開発支援も課題だ。
2020年までは、日本でロボットを使いこなす方向に注力しながら、どのような分野にロボット導入が必要であるか幅広く調査する。新しいロボットを作ることと、今あるものを適切に使うことには相乗効果があるからだ。ロボットの使い方を考える時にビックデータやIT、AI(人工知能)などが肝になる。使った結果のデータが明日のロボットを産み出す知恵の源泉になる。
そのようなデータは技術者の頭の中にあるだけでは意味がなく、オープンイノベーションによって使える形にする必要がある。先述した、DARPAが主催する災害対応ロボットの競技会のような、ロボット同士が競い合う場を日本で作れたら理想的だ。
ロボットは融通が利かないため、ロボットが活躍できるように環境を整備することが大事だ。例えば、形状が場所によって異なる水田の畦道の草刈りは、人がやるのは大変な作業だが、ロボットにとっても作業が難しい。しかし、比較的動きやすい広大な水田ならばシンプルなロボットでも対応することができ、低コストで済む。ロボットの東大合格を目指す新井先生が言うように、「ロボットの限界を上手く見極め、人に何ができ、ロボットに何をさせるか」を考える賢い社会作りが不可欠だ。
ロボットを使いこなすには、ロボットバリアフリーの社会を作るしかない。使いこなせば使いこなすほどロボットは「使えるもの」になるのだから、完全に使えるロボットが開発されるのを待っていては遅い。先に述べたように、日本は試しに現場に導入するという企業が少ない。特に大企業は、国から補助金を貰って、まずは実証実験にとりかかるという所が多い。
「ロボット革命」を実現するためには、ここに述べたことだけでなく、あらゆる政策を総動員していく必要があり、政府として全力で取り組んでいく。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">