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「IOT時代のグローバル競争」

鶴保征城 (HAL東京・大阪校長)

家電業界で世界最大の見本市は、毎年米国ラスベガスで開催されるCESだ。この数年はサムスン電子などのアジア勢の躍進が目立っていたが、今年は「IoT(Internet of Things)」と呼ばれるネット技術が注目され、欧米の自動車メーカー、半導体メーカー、ベンチャー企業が展示の主流になっていたようだ。
CESで注目される基調講演でも、独ダイムラーのディーター・ツェッチェ社長、米フォード・モーターのマーク・フィールズCEO、米インテルのブライアン・クルザニッチCEOが登壇している。
これはまさに、家電の潮流が従来型の家電製品からIoTにシフトしていることを示している。IoTは、かつてドコモが提唱していたM2M(マシンツーマシン)とほぼ同義語で、様々なモノや装置がインターネットにつながり、新しいネット端末になっていくということだ。自動車も例外ではない。
さらに重要なことは、米国政府がIoTの流れを加速するために、2012年、「Big Data R&D Initiative」を発表し、総額2億ドル以上の拠出を決めたことだ。これに呼応し、民間では2014年、GE、IBM、シスコ、インテル等が「Industrial Internet Initiative」を設立し、すでに70社近くの企業が参加している。Industrial InternetはIoTと同義語だが、産業界の工場や現場の意識が強い。
特に、GEはこれに社運をかけていると言っても過言ではないほどの力の入れ方だ。同社の主力製品である発電機、ジェットエンジン、掘削機械、機関車等をインターネット接続し、機械が生み出す厖大なデータを取得・分析することによって、発電所、航空、鉄道等の効率と信頼性を向上させている。
恩恵を受ける業界は、石油・ガス、電力、鉄道、ヘルスケア、航空など多岐にわたるが、石油・ガス業界は燃料効率などが1%向上しただけで、数百億米ドルの効果がもたらされると言われている。
一方、欧州に目を転じると、ドイツが2011年に、開発・製造・流通プロセスをIoTにより全体最適化する「Industrie 4.0」を開始している。こちらはより明確に、第4次産業革命を意図している。Industrie 4.0の狙いは、デジタル化とネットワーク化を駆使して工場間や企業間に横串を通すことで、スマート工場を実現することである。
米国、ドイツともに国運を賭けて、インターネットとITを融合させた新しい産業の創出に全力を挙げているが、日本も当然遅れてはならない。2014年、国会議員有志によって組込み・IOTイノベーション議員連盟(会長 河村建夫衆議院議員)が、また民間では一般社団法人組込みイノベーション協議会(理事長 筆者)が設立された。
プラットフォーム競争やモバイル機器での敗退、変革に対応できない組織、イノベーション創出の貧困さ、専門人材不足等々の諸問題はあるが、これまでのモノ作り大国の蓄積を生かして、グローバル競争に打ち勝たなければならない。

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