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食育を考える

木内里美(株式会社オラン代表取締役)

軽視されがちな食育
普段耳にすることが少ない食育という言葉や概念は、どれほど浸透しているのだろうか? 平成17年7月に施行された「食育基本法」の前文には基本理念がこう書かれている。「・・豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が重要である。今、改めて、食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進する・・」。とても大切な教育概念だ。
法制化がされてまだ10年ほどであるから、人の生活の中心にありながら食の大切さに目が向けられたのは最近のことだということになる。遅ればせの法制化には当然その背景がある。それは目に余る食の乱れと、それが起因となる健康問題が懸念されるようになってきたからである。
平成バブル景気が始まった1986年末くらいから、いわゆるファストフードやジャンクフードが大いに消費されるようになった。この時期は男女雇用機会均等法が施行された時期とも重なり、働く女性が増えてスーパーやコンビニで調理された惣菜や弁当で食事を済ませる「中食」という食形態が増えていった。ファストフードも中食も調味料を多めに使うらしく、一般に味が濃い。ジャンクフードは高カロリー、高塩分、高糖分傾向にあり、栄養バランスは良くない。こういった食事を続けていれば、味覚異常や健康障害を起こしても不思議ではない。美味しいものは脂肪と糖で出来ている、と開き直っているわけにはいかない。
医療費削減を目指すなら食育の徹底がいい
高カロリー摂取は肥満を招き、糖尿病罹患リスクを高める。食の海外依存が高まり安全性が問われる事案も増えている。国産といえども日本の耕作面積あたりの農薬使用量は他国に比べても多く、肥料はほとんど化学肥料である。このような食環境が、がんや生活習慣病の増加と相関性があることは否めない。近年のがんや糖尿病の罹患率の高さは尋常ではない。食品アレルギーや花粉アレルギーの増え方も質素な食事をしていた時代に比べて異常だ。
WHO(世界保健機関)はファストフードが肥満と相関が高いことを報告(2003年)しているし、WCRF(世界がん研究基金)とAICR(アメリカがん研究協会)はがん予防のためにファストフードの摂取は制限すべきことを報告(2007年)している。
食育を浸透させて日本の伝統ある食文化と繊細な味覚を取り戻し、有機栽培による地産地消と栄養バランスを考えた喫食を心がければ、未病や治療を要する状態には至らない「予防」ができ、高齢化社会でも医療費の削減は間違いない。

 

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