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伊丹勝氏

伊丹勝氏

大正11年に設立され、115年の歴史がある日本弁理士会。今年4月、新弁理士法が施行され、より産業・経済への発展に寄与する使命条項が付加された。新会長となった伊丹氏に今年の方針を聞いた。

会長就任にあたっての抱負は。
2002年12月に公布された知的財産基本法を皮切りに,わが国は「知的財産立国」を目指してきた。
これまで日本企業は世界有数の特許取得件数を誇り,iPS細胞、青色発光ダイオード、アニメ・ゲームのコンテンツなど、日本の技術・文化は世界をリードしてきた。しかし,日米の大学を比較すると、ロイヤリティー収入で100倍以上、ベンチャー起業件数で20倍以上の差を付けられている。より戦略的な知財の活用を進めるべきである。
この4月からは,弁理士法第1条に「知的財産に関する専門家として、経済及び産業の発展に資する」との使命条項が加わった新弁理士法が施行された。この弁理士にとって歴史的・記念的な年を境に,我々弁理士も、より戦略的な知財の活用のために活躍すべきと考える。弁理士法第1条の社会的使命を全うすべく,その先導役として,世界最高の「知的財産立国」を目指して活動していく。

中小企業支援に関する取り組みは。
政府が『地方創生』を重視しているなかで、弁理士も地域における知財活動の活性化や、中小企業に対する支援に一層力を入れていく必要がある。中小企業の数は国内企業全体の99%以上を占めるが、特許の出願件数では逆に大企業が約90%を占めている。資金力や人材不足といった理由で、経営に知的財産を活用していこうという中小企業はまだ少ない。
こうしたことを踏まえ、日本弁理士会では全国に設置された「知財総合支援窓口」に188人の弁理士を派遣している。また資金力が乏しい中小企業や東日本大震災で被災した中小企業に対する「特許出願等援助制度」や「特許出願等復興支援制度」も行っている。2014は110件の申請があり、43件を採択した。今後は「資力に乏しい」という条件を見直し、有用性があるものに対象を広げることを考えている。
中小企業において、すでに取得している知的財産権に関して、その価値評価を行うことで、評価結果を生かして金融機関からの融資につなげる活動は従来から行っていたが、金融機関からの融資を更に促すため、知財を基礎とする融資に積極的な金融機関を対象とする表彰事業を昨年からスタートさせた。知的財産権の価値評価は附属機関の知的財産価値評価推進センターを通じて行ってきたが、同センターの外部機関化も視野に入れたい。
また本年度は新たな中小企業支援策として、弁理士が全国の中小企業を訪問し、知財の積極的な活用を促す「弁理士知財キャラバン」を全国展開する。待受型の支援ではなく、訪問型の支援で、中小企業の経営者に知財戦略、知財経営の重要性に気付いてもらうことが狙い。併せて「支援員養成研修制度」を創設し、中小企業の知財戦略や知財経営を支援できる知財経営コンサルティングのスキルを持った人材の育成強化を図る。9月には第1陣を派遣する予定。年間150人の養成を目標にしている。この活動を通して、中小企業が抱える問題を解決していきたいと考える。

グローバル化への対応は。
近年のアジア諸国の経済成長を初めとする市場のグローバル化に伴い、今や大企業のみならず、中小企業も世界を相手に厳しいグローバル競争を戦っている。
反面、海外で知財を巡るトラブルに巻き込まれるリスクも発生する。そのため企業活動のグローバル化に対応できる人材の確保・育成が急務。特に発展著しいアジアでの人材育成が急務である。現在、海外の情報を集めるために日本貿易振興機構(JETRO)と連携してタイのバンコク事務所に弁理士を派遣しており、この秋にはインドのニューデリー事務所にも派遣する。さらには海外留学を望む若手弁理士への留学支援に取り組む。将来的にはこれらの弁理士に海外窓口担当者として会員への情報提供などの活動してもらうことを考えている。

これからの知財立国を担っていく、一万人を超える弁理士のトップとして。
日本が世界最高の知財立国を目指してくためには、グローバルな視点に立ったイノベーションの計画と実行、さらには、これに伴う知財による積極的な収益活動の強化が必要である。今後は質の高い明細書の作成能力に加えて、知財経営のアドバイスができる弁理士の活躍が欠かせない。また企業内の弁理士にもイノベーションの担い手としての自社の知財活動をリードすることを期待する。さらには、大学での知財創出人材の育成にも力を入れる必要がある。弁理士の社会的使命を全うすべく,日本弁理士会の総力を挙げて,世界最高の「知的財産立国」を目指して活動していく。

日本弁理士会会長 伊丹 勝(いたみ まさる)
・主な経歴
昭和54年明治大学工学部電気工学科卒業、企業勤務を経たのち、昭和60年弁理士登録。
きさらぎ国際特許業務法人代表社員。平成18年度日本弁理士会副会長。同27年4月

1日から会長に就任。東京都出身、59歳。

日本弁理士会のプロフィール

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