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ブラジルの科学技術と教育

木内里美(株式会社オラン代表取締役)

ブラジルにおける科学技術の特徴
ホンダが創業以来の夢であった小型ジェット機をエンジンも含めて自社開発し、羽田でお披露目したというニュースが届いた。三菱重工業と三菱航空機が開発を進めている中型ジェット機MRJも初飛行を控えている。工業生産国では優れる日本でも、ジェット機の設計生産となるとまだこのような段階なのだ。ジェット機を設計生産できる国は限られている。ジェット機は素材やら航空力学やらコンピュータ制御やら高度な科学技術の塊のような工業製品である。
一方、中小型ジェット機の分野でブラジルの技術には卓抜したものがある。ブラジルの航空機メーカーであるエンブラエルは、フランスのエアバス、アメリカのボーイング、カナダのボンバルディアに続いて世界4位の生産を誇る。乗員60人?120人クラスの中型機の分野では世界シェアNo.1だそうだ。エンブラエルは国営企業として1969年に設立され、民営化されて現在に至っている。
ブラジルは科学技術の進んだ国であることはあまり知られていない。インターネット時代は時空を超えると言いながらも、時差12時間のブラジルの情報はなかなか届かないものである。
生産量世界一のサトウキビから精製されるバイオエタノールの生産量はアメリカに次いで世界2位で、ブラジル国内ではガソリンと混合された燃料で走るフレックスカーと呼ばれる車が行き交い、バイオ燃料の研究も盛んである。
国営石油会社ペトロブラスの石油や天然ガスの探査や掘削の技術は世界有数であり、特に高深度のドリリング技術においてはアメリカのハリバートン、フランスのシュランベルジェと並ぶトップレベルだそうだ。
そしてもう一つの目玉が航空機の生産技術である。その技術の先では宇宙開発の研究も進んでいる。今年の2月5日にブラジル初の超小型衛生(AESP-14)が、国際宇宙ステーションの日本が開発した実験棟「きぼう」から宇宙に投入されたというニュースがあった。

航空機技術を支える航空技術大学(ITA)の人材育成
このような航空機技術や宇宙技術を支える技術者を養成しているのが、エンブラエルに隣接する航空技術大学校(ITA)である。合格率1.5%と言われるブラジル最難関校と言われ、5年間全額奨学金で教育が行われている。高度で厳しい教育が実施され、累積欠席15%や赤点累積5回で即退学処分になるそうだ。航空機メーカーのエンブラエルは毎年そのような教育を受けて卒業する80名の卒業生が800人に達した時に創設されたそうだ。
最近そんな話をブラジル人から聞く機会があった。8年間消息がわからなかった友人が、インターネットから私の事務所を探し当てて連絡をくれ、来日の折に訪ねてくれた。彼はITAで教育を受けブラジルNo.1のIT会社に所属していたが、今はフリーで欧米日10社のアドバイザーや経営参画をしている極めて優秀な男である。恩師はエンブラエル創設に関わり、その恩師は卒業後も教え子の面倒を見て、ビジネスの相談や様々なリコメンデーションを行ってくれるのだという。それがブラジルの師弟関係だと聞かされ、ブラジルの人材育成の奥深さに感嘆したのである。

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