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 笹川平和財団がパネル 福島で統合型高速炉の国際実証計画を

 4月1日、笹川平和財団と海洋政策研究財団が合併し、資産額では1400億円の日本最大の財団、公益財団法人笹川平和財団が発足した。それを記念して、5月14日、同財団主催のパネルディスカッション「原子力は持続可能か?」が同財団大会議室で開催された。

澤昭裕研究主幹

澤昭裕研究主幹

田中伸男理事長

田中伸男理事長

泉田新潟県知事

泉田新潟県知事

パネル登壇者は泉田裕彦新潟県知事、澤昭裕21世紀政策研究所研究主幹、モデレータに同財団の田中伸男理事長の3者によるディスカッション。奇しくも3人は経済産業省の元官僚で、経済研究所(RIETI)時代は机を並べて議論した間柄。昨年、東大公共政策大学院で行われたパネルディスカッションの再現となった。
田中氏と澤氏は、「日本は1次エネルギーの自給率が6%と、エネルギーのほとんどを海外に依存している極めて脆弱な構造の上に経済が成り立っており、エネルギー安全保障の面でも自国のエネルギーとなる原子力はベースエネルギー電源、CO2削減対策として20%は確保するべきだ」と述べた。
一方、泉田氏は「その論理は理解できるが、自治体の長としては原子力発電所の安全確保が最優先だ。信頼の確保が必要だが、事業者、行政、制度のいずれも信頼が得られていない。東電は事故発生の翌日にはメルトダウン(炉心溶融)が起きていたのを公表したのが2ヵ月後。これでは住民への適切な避難の仕組みが作れない」と苦言を呈した。
また「原子力規制委員会の規制基準はIAEA(国際原子力機関)が示す多重防護レベルの5層のうち、3層しか対応しておらず、シビルアクシデント(過酷事故)が発生した場合の事故対策、影響緩和対策が不十分だ」。
さらに「原子力発電所の事故対応マネジメントを検証し、組織運営から人的要因を含め原因や責任を明確にし、対策をとる必要がある。しかし、現行の法体系では、複合災害時に対策本部が複数立ち上がり、国からの指揮系統が2重となり十分に機能しない」と断じ、柏崎原発の再稼動は当面無理との見解を示した。
澤氏は「このような過酷事故に対しては、組織、中身、実行ガバナンスなど税金を投入するリソースが必要だが、安全確保に100%は無理である。しかし、安全規制の哲学が必要だし、国の覚悟がいる。原発の運用や廃炉対策は今後、国がやるしかないが、公務員ではオペレーションが難しい」と述べた。
田中氏は「再稼動以外の道も考える必要がある。1つは核燃料デブリや使用済み核燃料を処理し、廃棄物の量や毒性を減らし、管理しやすくする包括的ごみ処理技術の実証をすべきである。米アルゴンヌ国立研究所で開発された統合型高速炉は全電源喪失実験でも安全性が証明されている。核不拡散にも有効で、放射性廃棄物の毒性も10万年ではなく300年で低減するので、貯蔵管理
もし易い。韓国がこの技術に積極的で、福島の地に再処理を含めた統合型高速炉を日米韓共同で研究していくのは、原発事故の教訓を世界に共有し、災いを転じて福に変えるプロジェクトであり、これこそ日本が手掛けるべきだ」と述べた。
また1国のみのエネルギー安全保障論議は無意味であり、隣国ロシアとのパイプライン導入や電力の輸入の検討、国内の電力送電網の周波数変換を進めていく必要がある」と指摘した。そして、次回は田中原子力規制委員会委員長を呼び、議論しよう、ということで一致した。

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