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日本人に求められる批判的思考

木内里美(株式会社オラン代表取締役)

批判的思考とは何か
批判的思考は、相手を非難する考え方というような間違った受け止め方をされることがある。それは「批判」という言葉が持つ意味合いにあるようだ。「批判」というと他の事象や発言や行動に対して、誤りや問題点や欠点を指摘したり非難したりする否定的な行動と受け止めることが多い。その解釈も間違いではない。
しかし「批判」は「物事に検討を加えて、判定・評価すること」(デジタル大辞泉より)という意味も持っている。つまりよく吟味し、深く思考し、評価して判断するという物事の理解の姿を示しているのである。批判的思考で言う所の「批判」はこちらの意味である。英語ではCritical Thinking(クリティカル・シンキング)と言われ、Critical(重要な)Thinking(思考法)であることを示している。
批判的思考はエビデンス(evidence:証拠とか証言とか根拠)を求め、論理的な思考、熟慮に熟慮を重ねる思考を求める。そのためには偏りを排除するために多くの情報を集めることが必要である。また自己の思考回路から先入観などを排除したフラットな状態にしなければならない。
実は日本人の多くにとって、この批判的思考は苦手なのである。それは思考スキルとしての教育を受けていないからではないかと思う。こういう基本的な教育がなされていないのは、リベラル・アーツをきちんと教えていないのとよく似ている。
批判的思考が必要な時代背景
日本でも少しずつ批判的思考を教育していこうという動きがでている。それは時代が要求するようになったからではないかと思う。筆者が思うには、一つはマスメディアやインターネットの普及と相まって、情報爆発と表現されるほどに情報が溢れかえり、しかも即座に伝わるようになってきたこと。
二つには1月1日のコラム「VUCAの時代を乗り切れ!」で書いたVUCA(Volatility[変動性]、Uncertainty[不確実性]、Complexity[複雑性]、Ambiguity[曖昧性])という先の予測も立たない混沌とした時代に入っていることである。
情報には恣意的なもの、バイアスが掛かったもの、詭弁、流言飛語、誤謬などが入り混じって伝わる。調査データやアンケートの多くはある意図のために誘導的であったりする。原発事故に伴う放射線の影響についても情報が乱れとび、風説も真実も識別が困難である。
こういう時代だからこそ批判的思考ができないと真実を見誤ってしまい、考える力を失い流言を信じ込んだり、オレオレ詐欺に騙されたり、偏見や差別を無意識に行ってしまったりということが起こる。
批判的思考は社会生活における自己確立や自律に大きな影響を与える。批判的思考は常に自分を冷静に見つめ、倫理感や道徳観を持ちつつ健全に生きるためのスキルとも言えるのではないだろうか。
情流潮流

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