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「エッジコンピューティングへの期待」

鶴保征城 (HAL東京・大阪校長)

最近、クラウドのニュースや解説記事を見かけない日はないぐらい、人口に膾炙されてきた。
本コラム17回(2015年2月)で述べたように、従業員30万人、発電所に使われる大型ガスタービンで世界トップ(シェア49%)を誇るGEは、あらゆるモノがインターネットでつながる世界を想定している。製品の稼働の情報を常に集め、膨大なデータを解析することで故障の予測や効率的な運用、さらには革新的なものづくりに生かそうという。GEは「売って終わり」ではなく、いかにサービスを充実させるか。それこそが顧客との長期的な関係を保ち、勝ち残る方策だと考えた。
ドイツは国を挙げて「インダストリー4.0」と呼ぶ製造業の革新を進めようとしているが、中国も3月の全国人民代表大会で「中国製造2025(中国製造業10ヵ年計画)」という製造業の高度化を目指すプランを打ち上げた。GEだけでなく、ドイツ、中国もクラウドを前提にしていることは言うまでもない。
周知のように現在のクラウドは、地球規模で集中配備された大規模なデータセンターを用いている。この方式では、ユーザからデータセンターまでの距離が遠く、光の速度に起因して発生する通信の遅延を避けられない。通信遅延は1㎞の距離で約5μ秒だから、日米往復で約100m秒になる。
もちろん、メール、検索、SNS、Webサービスのように、リアルタイム性が低く、サーバとの通信頻度が少ない用途では大きな問題はないが、リアルタイム性が高い交通制御やオンラインゲーム、ARなどには適応できない。また、今後利用が拡大していくM2Mのようなビッグデータを扱うアプリケーションでは、情報をデータセンターに集約処理するためのネットワーク帯域の増大が課題となる。
そこで、ユーザの近くに複数の小規模データセンターを配置し、アプリケーションを分散処理する技術が必要となる。これがエッジコンピューティングと言われる新しいクラウド技術だが、大規模データセンター上に展開された従来のクラウドコンピューティングと、このエッジコンピューティングを組み合わせることにより、クラウドの適応可能範囲は格段に広がる。
エッジコンピューティングについては、NTTが「エッジコンピューティング構想」「分散型Web実行プラットフォーム」を発表している。従来型のクラウドはサービスも技術も米国勢の先行を許したが、これから訪れる本格的なクラウド時代に向けて、日本勢の追い上げを期待したい。

 

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