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なぜ科学が豊かさにつながらないのか?

なぜ科学が豊かさにつながらないのか?

第25回
『なぜ科学が豊かさにつながらないのか?』
矢野 誠、中澤正彦 編著/慶應義塾大学出版会 刊/1,800円(税別)

求められるのは「市場の高質化」と
「文理連携」による“多様化”への対応

やや回復の兆しが見られるものの、バブル崩壊以降日本経済が長期にわたり停滞を続けているのは、否定できない事実だろう。一方科学分野では、iPS細胞、スーパーコンピュータなど、日本人によるめざましい研究開発実績がある。明らかに後れをとっているIT分野にしても、1977年のアップルによるパソコン発売の翌年に日立、翌々年にはNECがPCを発表するなど、日本企業は高水準の技術力を持っていた。
本書では、京都大学経済研究所が2014年に開催した連続シンポジウムをもとに、同研究所の矢野誠教授を中心とした14人の研究者や官僚が、書名に掲げられた疑問に挑んでいる。彼らは、今日の日本経済の停滞を、80年代から20年の間に起きたIT革命に日本が乗り遅れた結果とみる。
本書を読み、結局のところ日本は「多様化への対応」に失敗したのではないかと思い至った。IT革命は、ほとんどの消費者が同じモノを欲しがっていた時代を大きく転換させた。ITが国境を越えたコミュニケーションを可能にすることで多様な価値観が共有されるようになった。
矢野教授らは、停滞の打開策の一つに「市場の高質化」を挙げる。売り手と買い手をつなぐパイプの質を上げ、多様なニーズをシーズとして捉え直すことで技術革新が起こりやすくなる、というものだ。また、そのための「大学の文理連携」の促進も提言。いずれも「多様化への対応」策といえよう。
おそらく日本人は歴史上初めて経験する「多様化」に戸惑っているのではないか。少しでも早く意識転換のスイッチを入れなくてはならないだろう。
(情報工場編集部)

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