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食品フレーバーのレベルは世界一

近藤隆彦 会長

近藤隆彦 会長

日本香料工業会 近藤隆彦会長に聞く

昨年の香料統計の販売額が2000億円を切りました。世界では2兆円、うち10%シェアが日本でしたがそれを割り込みました。うち食品香料の約60%を占めていた飲料の落ち込みが大きかったのです。
原因の1つは咋年5月の連休の天候不順と夏の猛暑の消費の落ち込みでした。2つめは消費税の値上げです。駆け込み需要が旺盛でしたので、大丈夫かなと思ってましたが、ボディーブローのように今年の3月まで影響があり、ようやく4-5月から需要が戻りつつある状況です。
飲料も値上げがあり、ようやく定着してきたので、ここで天候が悪くなると売れ行きが左右されてしまうため、今夏の「天気」が一番気になるところです。
たしかにコンビニのコーヒーにより影響を受けているのは缶コーヒーメーカーです。他社との差別化からコーヒーフレーバーが使われ、1つの香料ジャンルとして育ってきました。
今のコンビニコーヒーは100円で見事と言えるくらい美味しいです。缶コーヒーは殺菌をするため、どうしても香りが若干、落ちてしまう面がありました。しかし、メーカーは再び、見直しを始めています。商品価値を高めるため、我々香料業界との話し合いを増やしています。
そのため、今後、コンビニコーヒーを凌駕するものが出てくると思います。「大変だけど、次のステップのための良い刺激」と受け取る方もおられました。我々も提案の仕方など更に工夫を重ねています。今の状況は、レベルアップのための試練と受けとめています。
――少子高齢化で国内市場の伸びがあまり見込めません。その分の海外展開への取り組みは?
香料に関しては日本と欧米でもそれぞれ法規制があります。食品は文化の違いもあり、それぞれ規制があるのは仕方がないです。しかし、海外でも共通して使われる汎用の香料が日本製は少なくて、弱いと思います。
従って、メーカーが海外に進出する際、香料メーカーへの問い合わせが多くなってきています。一日も早く、各国共通に使える、国際整合性のある香料を増やしてくことは最優先の課題であり、役所も理解してくれています。
もう1つは国内市場が減少していくなら世界市場で戦うという発想があります。その時のベースは、食品フレーバーです。私はこの分野は世界ナンバーワンと自負しています。
香粧品は欧米にはかないませんが、食品フレーバーのレベルは世界一とみています。飲料分野の香料開発だけでも年間約1000品目が生まれ、3品目程度しかご採用いただけないのですが、997品目の開発は無駄にはなっていません。その開発で培った技術力は、世界の嗜好やニーズに対応する源になっているのです。また、介護食に関しても、欧米のメーカーは日本ほど繊細な味が出せないそうで、先方から「開発を待っている」と言う声も聞こえてきます。それだけ日本の香料産業に期待しているのです。
ですから食品フレーバーに関しては、国際競争力は強く、これからますます伸びていくと確信しています。
結局、香料は商品の差別化と付加価値をつけるために必須のもので、安心・安全をベースに行っていけば今後も道は開けていると思います。
日本には100年以上続いている企業が2万社あるそうです。香料産業にも100年近く続いている企業がたくさんあります。共通しているのは中小で、身の丈にあった経営を行い、人と技術を大事にしている点です。
香粧品は確かに伸びてきていますが、欧米とは違うジャンルを作りつつあります。例えば、日用品の一つ、食器洗い洗剤や入浴剤にオレンジやレモンなど食品フレーバーの香りを採り入れた商品が日本の消費者に好評です。これも次の海外への展開が期待できます。
ですから日本の香料産業は世界に向けて安心・安全をベースに企画開発、技術力を広げていけば、ますます信頼され成長していくと考えています。(談)
香料産業の特徴
香料産業は、商品の香りを整えるために、1000分の1位の添加量で勝負する商品に必須の香料を扱っている。天然と合成をあわせて3000―5000種類の香料の原料素材があり、50║200程の組合せによって香粧品香料や食品香料を製造している。それぞれに食品衛生法や薬事法、消防法、労働安全衛生法、化学、環境、知財関係などの規制がある。
欧米はフレグランス(香粧品香料)とフレーバー(食品香料)の比率が50対50くらいだが、日本は1対5くらいフレーバーが多い。欧米はもともと香水文化が基本にあり、日本はフレーバーに強い特徴がある。
香粧品の香料を調合する人をパヒューマー、食品に添加する香料を調合する人をフレーバリストというが、一人前に育てるには5❘10年かかる。加えて、法律の知識や経験が必要であるため、この産業への新規参入は難しいといえる。化学産業としても、扱う量は極めて少ないが、利用得意先が多く、ニッチな分野を担っている。香粧品や食品業界にはなくてはならない産業であり、付加価値も高い。
今後の課題は、日本の市場が少子・高齢化で成熟化してきており、食品や香粧品産業の海外展開に伴う海外市場開拓が大きなテーマとなってきている。

 

 

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