政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


イノベーションのマネジメント

鶴保征城 (HAL東京・大阪校長)

今、いろんな分野で最もよく聞かれるキーワードの一つが「イノベーション」だ。企業においても盛んに議論が行われているが、なかなか幹部が期待する成果が出てこない。
友人のソフト業の社長は、
・技術主導のアイデアが多く、顧客にアピールする価値がみえない
・既存事業の枠を越えられない
・過去のイノベーションがトップに依存しており、今や中堅・若手からのアイデアが枯渇している
・アイデアからイノベーションを創造する方法論が確立していない
などを指摘している。
戦後の日本は技術革新をベースに世界をリードする製品を輩出し、さらに現場活動を中心に品質や効率を改善して製品をブラッシュアップしてきた。
改善はデータを積み上げ、トヨタの5-whyのように対策を論理的に突き詰める行為である。一方で、優れたアイデアを出すには、ひらめきや発想の転換などの直観的で非論理的な考え方を必要とする。
日本人はカイゼンのような論理的思考を得意とするが、そうかといってクリエイティブで直観的な思考が不得意なわけではない。アニメやキャラクターは言うに及ばず、工業製品でも日本人の豊かな発想が随所に発揮されている。
ではなぜ冒頭のような問題になるのか。
どこの国でもマネジメント層は数字や理屈を得意とする連中が中心となる。一方、クリエイティブな連中は、「これって面白いじゃん」的な発想だ。
イノベーションには後者が必須であるが、後者だけではイノベーションにつながらない。肝心なのは、この両者のコミュニケーションが円滑に行われることだが、多くの企業でうまくいってない。
筆者も長年、研究マネジメントに携わってきたからよくわかるが、研究者から新しいアイデアを提案されるとマネジメントは、「それって、儲かるの」「君の言ってることはわからない」「事業部門との調整は」などとつい言ってしまう。
これを、「できたらすごいね」「他社がやってないことをやろう」「過去の成功は捨てよう」「ホンモノだったら利益はついてくる」に変えなければならない。これらの言葉が、組織を変えイノベーションを生み出すもとになる。
「どうしたらそういう組織に変えられるのか?」という相談もよく受けるが、「人事を変えればいいのです」と答えることにしている。
紙数がないが、要は、「「それって、儲かるの」的人材は事業部長止まりにして、「できたらすごいね」的人材を幹部に登用することだ。

 (前独立行政法人情報処理推進機構=IPA・SEC所長、一般社団法人組込みイノベーション協議会理事長)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">