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里海資本論

里海資本論

第29回
『里海資本論』
~日本社会は「共生の原理」で動く

井上恭介、NHK「里海」取材班 著/KADOKAWA 刊/800円(税別)
人間の営みも自然の一部と考え、
自然と謙虚に対話する文明のあり方とは

「自然」という言葉は「人工」の対義語であり、「人の手が加わっていない」「ありのまま」という意味をもつ。つまり「自然」という言葉そのものに、「人間対自然」という対立概念が含まれているように思われる。
本書のテーマである「里海」の考え方は、こういった多くの現代人がもっているであろう「自然」観とは異なる。人間と自然は対立するものではなく、適切に人の手を加えたり、食料や資源として恵みをいただくことは、自然を破壊することにはならない。人間も自然の一部であり、人間の営みも含めた全体が本来の「自然」であるというのが「里海」の基本的な考え方だ。これは古代から日本人が抱いていたとされる自然観とも一致する。
瀬戸内海発祥の「里海」の概念は、そのまま「SATOUMI」として世界に広がっているという。もとは1970年代に赤潮が大量に発生し「死の海」と化した瀬戸内海を元通りにしようとする地元漁師たちの取り組みから始まった。死滅していたアマモという海草の種子を蒔き、30年かけて自生するようにした。そうして蘇ったアオモが「水中の森」をつくり、光合成をするとともに魚たちのゆりかごになった。
本書に描かれているのは、単なる地域再生や、漁業・水産業再興の物語だけではない。地球環境と人類文明のあり方についても深く考えさせるヒントが、存分に含まれている。
そこまで壮大に考えなくてもいい。里海における、自然と人間が謙虚に対話する姿勢。それは都会に暮らす人々の人間関係にも応用できるものともいえるのだ。(情報工場編集部)

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