政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


横塚 裕志氏

横塚 裕志氏

情報サービス産業の今後の見通し

JISA(一般社団法人情報サービス産業協会)
横塚裕志新会長に聞く

情報サービス産業は売上高21兆円、従業員102万人。産業や国民生活の重要なインフラである、情報システム・ソフトウェアを担っている。それらの業界で約600社が集まる最大の団体、JISA8代目の会長に初めて、ユーザー企業(東京海上日動システムズ前社長)の情報システム部門のトップとして、IT化を推進してきた横塚氏が会長に就任した。転換期のJISAをどう引っ張っていくのか、聞いた。

—現在の情報サービス産業の現状とJISA改革にどういう方針で取り組むか?
業界の現状は、マイナンバー制度の導入による制度改定などにより、システム開発に対する需要が戻りつつある。ユーザーの依頼に応じて忙しく働いているのが、利益率はまだ回復していないのが実情だ。
今までは受託型システム開発を中心であったが、これからはユーザー側が大きく変わる時代が来た。デジタルビジネス革命という大きな嵐が吹き始めていて、ビジネスそのものをデジタルテクノロジーで新しくイノベーションしていかないと、ユーザー企業自体の存立が怪しくなってきた。
それを支援していくことが大きな我々の使命であり、我々自身も大きく変わっていく必要がある。1つは、受託型システム開発を変えていく。ユーザーと一緒になって、ビジネスを新しく変えていく、創造していく必要がある。ビジネス領域に踏み込んだ形の企画・提案を考えていくことが求められている。
2つめは、新しいビジネスはスピードが求められてくる。クラウドを使ったり、スピーディにシステムを作る必要がある。大規模でなく、早く、ビジネスを動かすシステムを提供していく考え方などが必要だ。
3つめは、ソフトウェアは大規模でなく、新しい価値を付加したものが求められ、量から質に変えていく必要がある。
東京海上にいたときは、ベンダーにはいろいろな特徴があり、それらを引き出すのが我々の仕事であった。大規模システム開発のため仕事量が多く、大手ベンダーに頼らざる得ない面があった。しかし、デジタル革命の時代には、デジタルマーケティングなどそれに詳しい、小さなベンダーであっても、大きく成長していける可能性が高い。

—ITエンジニアの割合がわが国はベンダー側に75%と偏っている。今後のデジタル革命の場合は内製化が進むのでは?
ユーザー側にはITエンジニアが少ないので、いきなり内製化するのは難しいのではないか?
例えば、デジタルマーケティングに取り組むには、ネットワークやデータベース、クラウドなどの知識が必要で、簡単にエンジニアは育てられない。そのため、ユーザー側が内製化したいと思っても、現実はそういうリソースをユーザー側が確保するのは難しい。
大企業であれば、情報システム部門があるが、中堅・中小企業がITエンジニアを余り抱えていないので、ベンダーのエンジニアに頼るのが自然だと思う。
インドには優れたITエンジニアがたくさんいて、欧米のユーザー企業はインドに研究所をつくり、エンジニアとコラボして新しいビジネスを作ろうとしている。それは日本のモデルとよく似ている。
欧米も7割のユーザー企業にITエンジニアがいるといっても、高度なIT人材ではインドに頼っている。我々もユーザー企業に頼られる存在になることが大切だ。
日本とアメリカの情報サービス産業を比べると、野球のメジャーリーグと日本のプロ野球レベル位の差があり、これからもっと勉強していかないといけない、まず、全ての領域の技術レベルが劣っている。PM(プロジェクトマネジメント)の能力が全く違う。PMのメソッドを勉強していない。エクセルで進捗管理していればPMだと思っている。やはり、きちんと勉強して欲しい。
米国のPMは、プロジェクトのスタート時に、「今回のプロジェクトはこういう性格なので、このPMメソッドの1と2を使って、こういう風に開発を進めていく」とリーダーがはっきり宣言する。
日本はその辺りがあいまいで、思想があまりない。マネジメントとは何か?をしっかり学び、3ヶ月先の見通しを見ながらプロジェクトを進めていって欲しい。PM管理がしっかりしていれば、夜間残業にならないはずだ。「遅れたら人を増やして深夜まで働く」といったやり方はレベルが低い。労働集約型が直らない要因でもある。今後は人材のスキルをもっと向上すべきであり、プロフェッショナルな人材をもっと増やしてくべきだと考えている。

—JISAの5年後どのような産業に変わっているか?
今の受託型システム開発は徐々に減っていくだろう。ユーザー企業が自らのビジネスをデジタル化に変えていくことに取り組んでいく。効率化を目指したIT投資は減っていき、売り上げを伸ばす、攻めのIT投資にITが使われるようになる。ポートフォリオにもマーケティングにITを使うように変わるので、開発量は確実に減る。
ただし、通信料はほとんど無料に近くなり、Web費用もゼロに近くなって、オンラインビジネスがどんどん拡大するだろう。この傾向はまだまだ続く。日本でのBtoCビジネスのオンライン化比率はまだ5-6%程度、残りの95%はまだリアルなビジネスである。これがデジタルに変わっていく。この未開の地に我々がビジネスで突っ込んでいくわけだ。
だから、ビジネスをうまく作れるソフトを提供できる会社と、従来型ビジネスを行う会社の2極化すると思っている。新しいビジネスにいくためには新しいITスキルを身につけなくてはいけなくなる。マーケティングやIoT、ウェアラブルなど学びながら、進出していく会社が現れるであろう。
これは企業の大小は問われない。逆に旧来のしがらみのない中堅・中小の方が有利かもしれない。チャンスを活かせれば、大手からの多重下請け構造から出て行ける可能性が出てくるきっかけになったら良いと思っている。
最近、業界はずっと人手不足が続いている。しかし、2020年の東京オリンピック以降、景気の下降局面が予測できるため、この段階で人手を大量に採用する情報サービス企業はない。また、ユーザー企業側にもどうしてもやらなければならないシステム開発も余りないという状況にある。

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