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農業改革はA、労働改革はD
新3本の矢は「期待はずれ」

日本を見る世界の眼 -9月-

この時期の海外論調においては、安倍首相が安全保障法制の成立が視野に入ったことで最優先の政治課題に区切りをつけ、次に強い経済づくりに意欲を示したことを捉え、アベノミクスの評価を含めこれまでの安倍政権の経済政策をレビューしようとする試みが目立つ結果となった。

9月10日付フィナンシャルタイムズは、安倍氏が主導する構造改革について分野別にAからDまでの4段階評価を試みている。
中でも農業については、農協という既得権益を切り崩したことで「画期的な政治的意思」と最大級であるA評価を下しており、今後の焦点は改革を農業生産性につなげること及び環太平洋経済連携協定(TPP)を成立させることと期待を示している。
一方で、移民政策については、外国人熟練労働者の受け入れ数は少ないままで、IT労働者やスキー指導者などの隙間部分で増えているにすぎないとしてC評価を下している。また、労働改革については、安倍氏がほとんど野心を示していない分野であり、IMFはこれを生産性向上に決定的な重要性をもつと論じているにもかかわらず、安倍氏はもともと数少なかった改革計画である「ホワイトカラー・エグゼンプション(脱時間給制度)」を撤回したことを理由に最も厳しいD評価を下している。

続く9月28日付の同紙は、日本の債務を持続させるためにGDPを何年もの間高い水準で維持しなければならず、金融緩和、財政政策、持続的な構造改革という「3本の矢」は死活的に重要であり、アベノミクスが目指す方向に間違いはないとしながらも、「ここ数カ月間、その勢いは失われている」と評価している。その上で、日本銀行はインフレ率2%の達成を目指して数兆円の金融資産を買い入れたにもかかわらず、黒田総裁は2013年以来はじめてコア消費者物価指数がマイナスに転じた理由を説明する必要が求められるとした。また、昨年の消費増税は景気回復に水を差しており、日本の消費者は「今もなお動揺している」との見方を示している。
ここで問題になるのは、安倍氏がこのようなつまずきを「意に介していない」どころか、名目GDPを現在の491兆円から2020年に600兆円まで拡大するという大きな賭けに出ていることに驚きを示している。安倍政権が掲げる構造改革の中でも最も進んでいない分野である労働市場改革に触れずには「強い経済」、「子育て支援」、「社会保障」という新たな3本の矢を発表したのは「期待外れ」であり、元来のメッセージを分かりづらくするだけで否定的な見方を示し、安倍氏は首相就任当時に掲げた構造改革路線は今もなお日本に適しており、安倍氏はそれを実現することに集中すべきと主張している。

 

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