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「CPS/IoTと進み始めた製造業の変革」  

鶴保征城 (HAL東京・大阪校長)

IoT(Internet of Things)とCPS(Cyber-Physical Systems)は同じではないかという意見もあるが、筆者は相当の差があると感じている。
IoTもCPSも簡単にいうと、これまでのITシステムが実 (フィジカル) 世界とコンピューティングパワー(サイバー)世界が、変換された情報によるやり取りであったのに対して、センサーやデバイス等による直接情報のやり取りを想定している。
CPSは2005年頃から米国NSF周辺で議論され始め、2008年頃には対象技術領域が概ね明らかになり、国際会議での議論が始まっている。
CPSはサイバーフィジカルの世界を、(1)大容量・不確実な入力データ、(2)離散と連続、(3)大規模・複雑化した制御システム の問題として解明しようとしている。これはCPSがサイバネティックスからヒントを得た造語であることに起因していると思う。
これに対してIoTについては、コンセプトやアプリケーションが多く語られている一方で、現時点では技術的にはセンサーネットワークの領域以外はあまり明確とは言えない。これが今後どのような広がりを見せるのか、注目していきたい。
CPSについては、日本語の簡潔な説明があるので参考にしていただきたい。
http://research.nii.ac.jp/~nkjm/ssr2010/aboutCPS.html
いずれにしてもこのような考え方が急浮上してきた背景の一つに、先進国の製造業が直面している大きな課題がある。
製造業の付加価値は1991年で、全世界で4800兆円、そのうち日米欧で78%を占めていた。ところが2011年時点では、トータルは9100兆円と増加しているが、日米欧のシェアは58%に低下している。なかでも、日本は-40%(シェア18%から11%へ)、欧州は-30%(シェア36%から25%へ)と急落している。ちなみに米国はシェア24%から22%とほぼその地位を保持している一方、アジアは8%から31%に急伸している。
先進国では、製造業のGDPに占める比率は年々低下しているが、それでも製造業の低迷が雇用減少、地方疲弊の一因となっていることは間違いない。
このような背景から、ドイツはCPS/IoTを活用したイノベーションが必要となり、Industrie4.0という製造大国ドイツの起死回生策を打ち出した。
一方、米国はアマゾンやグーグルでリードしているIT分野の延長線上で、クラウドやAI技術をテコに、さらに製造分野に進出しようとしている。
日本においても、コマツ等の先進企業が着々と生産改革を進めるとともに、経産省、総務省、内閣府(総合科学技術会議)などの施策も出そろってきた。
政策、事業戦略、生産、研究開発、投資、いずれの視点においても、モノづくり・製造業が激変期を迎えたことは間違いない。

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